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『オンラインの絆』第7章・第8章 6/9 小説 

最初からはこちらです。

第7章 
 
 先生は、9月から、別の名前でイージートークでの講師を再開した。それで、zoomでのレッスンは終わって、元のやり方に戻った。10月9日に英検一次試験が迫っていたため、終始英検対策になった。戦略として、ライティングの点数を上げることに重きを置いた。リスニングが一番不安ではあったが、それを伸ばすより、ライティングの点数を上げる方が短時間で可能だと踏んだ。それで、多い時には4記事英作文をして、添削してもらった。9月はトータルで35回。10月は54回レッスンを受けた。一次試験まではほぼライティング添削で、一次試験以降は面接対策だった。空き時間はほぼ英語の勉強をしていた。遊びにも行かず、家事も最低限にして英検のための勉強をした。
 10月9日当日、長文読解問題が不思議なくらい理解できた。4択問題でも迷わず答えはこれだと確信が持てた。神が下りてくるとはこういう事なんだろうかと思った。長文問題は1問しか間違わず、予想以上の出来だった。ただし、リスニングは半分しか正解できなかった。その半分も自信を持って答えた訳ではなかった。あとは、ライティングの点数にかかっていたが、希望を捨てきれず、面接対策を始めた。
 一次試験の2週間後、結果は不合格だった。
 その後、2023年1月22日も受けたが、それも同じくらいの点数しか取れず、再び不合格だった。
 先生とLINEでやり取りするようになってから、以前より多くのメッセージを交換した。私からもメッセージが送ることができるようになったのは便利だが、少し寂しい気もしていた。時々しか来ないメッセージに心を踊る事がなくなったからだ。先生は、2年間のアメリカでの大学の過程を終えて、2023年1月に帰国した。
 
第8章
 
 尚子にとって、2回も、英検準1級に落ちた事は、ショックだった。1度目は仕方ないと思っていた。しかし、2回目は、合格すると思っていた。しないといけないと思っていた。結果は、1回目より、点数が取れず、リスニングも同じく半分しか正解しなかった。勉強方法を見直す必要があると思い、次の英検の受験を見送る事にした。文法書を購入、さらに、単語を英語で説明している「英英単語帳」を購入し、それを使って覚える事にした。
 先生とのレッスンは、次回10月の英検を見据えて基礎を固めながらやっていくことにした。
 今まで、先生のおすすめしたYouTube、映画はすべて観た。「ストレンジャーシングス」はリスニングの教材としても何度も観た。それ以外にも、先生は日本の映画も薦めてきた。「万引き家族」「子宮に沈める」は、あまり好きだと思えなかった。宮崎駿の「君たちはどう生きるか」を観た。先生が尚子さんの感想が聞きたいというので、映画館に行った。尚子は、宮崎駿作品の映画をほぼ観たことがなかった。「となりのトトロ」「風の谷のナウシカ」「魔女の宅急便」でさえ観たことがなかった。「崖の上のポニョ」は当時とても流行っていたので、上映から半年後子供と映画館へ行ったが、なぜこの物語がもてはやされているのか謎だった。幼児に将来の約束をさせる大人はよくないと思ったし、子供をあんな危険なドライブをさせるのも反対だ。ただ、知りたいとは思った。世界中が絶賛する独特の世界を。そしてそれが好きな先生についても何を考え、どこを見ているのか知りたい。性格・住む場所・学んできた場所・興味のあるもの、それらが、全く違う人と、冷静に話せる機会は少ない。人は似たもの同士が集まるし、波動が違う人とは自然と疎遠になる。先生と尚子は、年は親子ほど違うし、住んでいる場所も違う。だからこそ、新しい発見がある。気のあう人と愚痴ってばかりいては成長はないことを尚子はこの年になって、さらに感じていた。
 イージートークでは、2022年11月からレッスンを自動で録音できる機能が出来た。レッスン後音声を聞いて復習する事ができるので、尚子は重宝していた。ある日先生からその録音記録が削除できるか調べてほしいと頼まれた。尚子が調べた限りでは出来ないと答え、なぜ、削除が必要か訊いた。削除する必要があるとは思えない。「生徒さんに変な事言っているんですか?ナンパとか」という尚子の冗談めいた問いに、「ナンパしすぎて焦ってます、、、」と返事が来た。尚子は「先生はそういうの向いてないから止めた方がいい」と返すと、「実は最近上手くいってます」とLINE通知が来た。当然、これは冗談だろうと思ったが、なんかもやもやした。他の生徒と、特に若い女の子とレッスン楽しんでいるんだったら、もうレッスン取らない!尚子は、子供っぽくそう思った。その決意は翌日には崩れた。
 先生は全く尚子のもやもやに気づいていなかった。尚子がレッスンの冒頭で「ちょっと怒っているんです。」と言うと、最初の挨拶がいつもより元気がないと思ったらしい。それが、自分に原因があると思わないのが先生の常である。もちろん、ナンパは冗談だった。尚子は、からかわれたのが悲しかった。
 翌日、先生からメッセージが来た。
「おはようございます。昨日は尚子さんのかわいい一面を見ることができて嬉しかったです:) あなたは私の一番好きな生徒です。だから、他の生徒に嫉妬する必要はないです。See you soon!」
 尚子は照れた。確かに私が一番レッスンを取っている生徒だと思いなおした。
 その数日後、落ちた英検の結果が郵送で届いた。先生に結果を写メして送った。次の英検の作戦を練った。
 尚子は鍼灸の事をツイッターを英語でポストしていて、英語のツイートを添削してもらった。その英語の数々のツイートのおかげで、カナダの鍼灸師とツイッターのスペースで話すことができた。たった10分ほどの会話だったが、英語を勉強していてよかったと心から思えた。
 先生は、時々忘れた頃にメッセージをくれた。絶妙なタイミングなのだ。
「今日のライティング本当に良かったです!尚子さんが成長すると僕も嬉しい気持ちになります。褒めるのは今日までにしておきますね。この感じで、リスニング、リーディングも成長させていきましょうね。よい夜を!」
 先生は、よく、よい夜を!よい午後を!というフレーズを使う。気遣いを感じる言葉だ。とてもいい締め方だなと思い、尚子も時々自分のブログの記事で使うようになった。


 #創作大賞

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