『オンラインの絆』第2章 3/9
最初から読みたい方はこちらから。
https://note.com/namisasan/n/n26ca73b3a2c9?sub_rt=share_pw
第2章
先生の誕生日は10月28日だ。尚子は、10月の中旬に「誕生日をお祝いしてもいいですか」と恐る恐る聞いてみた。断られるかもしれない。先生に了解をもらい、舞い上がった。どんな風にお祝いしよう? 悩んだ末、手紙を英語で書くことにした。そして、ケーキにろうそくを立て、ハッピーバースデーを歌おう。先生の性格だとローソクの火を消さない可能性もある。その時は最初からそうでしたというふりをして、自分で吹き消そう。当日のレッスンの始まりほどドキドキしたことはない。歌い終わると先生は、「ふぅー」とローソクの火を消した。尚子は自分でローソクを吹き消す必要がなくなって安堵した。尚子は手紙を読んだ。
20歳の誕生日おめでとうございます。誕生日を祝えてうれしいです!
私は英検が終わるまで、あなたを頼りにしていました。英検が終わったので、先生のレッスンを卒業したいと思っています。
一緒に勉強したあの時間は、私の大切な懐かしい宝物です。3月に私はたまたま先生の授業を受けました。私が英検を受けると言ったとき、先生は1日にどれくらい英語の勉強に時間を使えるか尋ねてきました。そして、「大丈夫かもしれない 」と言ってくれましたね。その時初めて、自分にとって英検はとても難しい試験なのだと気づきました。その質問をされなければ、あんなに真剣に取り組んではいなかったでしょう。英検に合格できなかったでしょうし、新しいことを学ぶことの楽しさを知ることもできなかったでしょう。
最初に卒業したいと言いましたが、本当は、卒業なんてしたくないんです。予約してでも受講しているのは、モチベーションを保つためです。ただ、先生と話しているのが楽しいだけなんです!先生の英語が完璧に理解できるわけではありません。せめてそれが理解できるまで、教えてもらえませんか?一生懸命勉強することを約束します。もうしばらくあなたの生徒でいさせてください。
翌日、先生からメッセージが届いた。
昨日は本当に本当にありがとうございました!ケーキはおいしかったでしょうか?僕のために考えていた文章もとても嬉しかったです。本当に尚子さんの頑張りには、いつもびっくりしています。負けていられないなっていつも思います。おそらく、1週間後には、お話しした文章が完成するので、またレッスンでお会いできたら嬉しいです。
僕のレッスンを卒業したいという前向きな言葉も嬉しかったです。もちろん、Suddenレッスンでタイミングがあったら来てくださいね。より流ちょうになった尚子さんとお話するのを楽しみにしています!本当にありがとうございました!それではよい午後を!
尚子は首を傾げた。「先生は本当に私が卒業すると思っている?」 後半、本当は、以下ちゃんと理解していないのか?自立したいといいながら、本音はずっと出来たら毎日話したいんだよと言いたかったけど、伝わってなかったみたいだ。
誕生日以降も、今まで通りレッスンを取った。誕生日以降4回目のレッスン、11月23日のことだった。出来るだけ英語でのフリートークをした。今日もたくさん英語で話せた、楽しかった、と思ったら、10分も立たずに先生からメッセージが来た。いつも先生は次の日にメッセージを送ることが多く、メッセージがない事も多かった。だから、気になってすぐに開けた。メッセージは英語で書かれていた。
「僕のクラスに来てくれてありがとうございました。お気づきかもしれませんが 私は英語がほとんど話せませんでした。せっかく予約してくださったのに、申し訳ありませんでした。僕はもっと英語力を上げる必要があります。いつも話してくれてありがとう。あなたが思っている以上に感謝しています。良い午後を。」
これは一体どういうことかと尚子は混乱した。この文章の真意はなんなのか。イージートークでは、生徒から先生にメッセージを送る事は出来ない。もやもやは、次のレッスンで直接聞かないと解消できない。尚子は、先生がもう私とのレッスンをしたくないという意味なのかもと悲しく思った。以前から先生は、私が予約にお金を使わせることを申し訳ないと言っていた。誕生日の手紙で卒業したいと言ったのが悪かったのか。ずっと頭から離れなかった。尚子にとって価値のあるレッスンだから、予約のお金は惜しくないし、先生がいつレッスンを開けるのかを待つ時間、別の生徒とレッスンが終わるのを待って、先生のレッスンを狙う時間を考えたら、予約した方が時間を無駄にしなくて済むので、待ち時間を考慮すると予約の料金は妥当だった。
英語ができる友人にこのメッセージを読んでもらった。彼女も意味が分からないと言った。はっきり聞くべきだと彼女は言った。それで、英語でメッセージを書くことにした。先生は、その日から3日間全くレッスンをしなかった。予約枠さえ空けなかった。それもとても珍しいことでさらにもやもやが増した。
4日後の11月27日、やっと予約が取れた。英語で書いたメッセージを読み上げた。メッセージを受け取って悲しかったこと、なぜ謝るのかその真意を知りたい事。もしお金の心配をしてくれているのなら、心配無用だという事。
先生はきょとんとしていた。本当に自分の英語がひどいと思っただけらしい。だとしても生徒に謝るのはどうかと思う。尚子は、先生という人間がとても理解しがたいものに思えた。
その後先生は自分の個人的なエッセイを私に送ってくれた。内容は難しすぎて、理解不可能だった。10回以上読んだが、これ以上は無理だった。時間をおいて読んだら、また気づきはあるかもしれない。高校でバスケットボール部が県大会に出た事や、5歳の怖いもの知らずの少年が描かれていた。
レッスンで先生は、時々尚子にメッセージを送った。尚子は、そのたわいもないメッセージを覚えるほど読んで大切にした。
ある日のメッセージはこうだ。
「こんにちは。期末テストが近いのと、日本に帰る準備をしなければならないので、これから1週間は以前のように多くのレッスンの予約枠を開けられないかもしれないことをお知らせしておきます。
でも、もちろん、日本に帰ってからも話すことはできます。だから、泣かないでください(笑)。
長い間会えないかもしれないけれど、息子さんのサッカーの試合の日曜日、楽しい時間を過ごせるといいね。」
これを読んで、尚子は先生が徐々に心を開いてくれていると満足した。でも調子には乗るまい。先生は、12月の半ばに一時帰国をした。
https://note.com/namisasan/n/n06b244c43ed0?sub_rt=share_pw
