#1|三日後、母はその電話を覚えていなかった
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フランスからの遠距離介護
ある日、久しぶりに両親に電話をした。
もう二年半、
入国制限で日本に帰れずにいた。
四月に帰れるかもしれないと、
母に伝えた。
また、一緒に山を歩きに行けるといいね。
腰が痛いなら、一緒にヨガでもやる?
そんな話をした。
三日後、
もう一度電話をした。
まだ入国制限が終わらないみたい。
四月は帰れないと思う。
そう言うと、
母は言った。
四月に帰ってくるつもりだったの?
知らなかった。
三日前に、話したよね。
母は黙った。
お父さん、覚えてる?
ちょっと電話かわって。
父が出た。
そんな話したか?
まあ、歳だからな。忘れることもある。
そう言った。
それでも、気にになった。
私はフランスに住んでいる。
日本に帰るのは、年に一度あるかないかだった。
親とは、あまり話すことがなかった。
兄とは、もう関わっていない。
日本からも、家族からも、
距離を取った。
それでも、つながりは消えなかった。
遠くにいるまま、現実だけが近づいてきた。
電話を切ったあと、
ひとつの言葉が浮かんだ。
介護。
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