【風まかせ文芸部】陽だまり【600字小説】
『陽だまりってどんなもの?』
という言葉がきっかけだったような気がする。
何のって、彼に惹かれた? ほだされた? きっかけだ。
相棒の故郷は辺境の星だ。
かつてその地表にあったという文明は壊滅し、残された人たちの手で、地下に都市が築き上げられていた。国交のほとんど無い、閉鎖的な土地柄。
その上、複雑な民族の事情もあって、彼は地下しか知らずに生きていた。
そんな、近い将来相棒となる男と、ひょんな形で出会ったとき、彼は数少ない紙の本を唯一の娯楽としていた。
わずかな本を読みながら、ほとんど初対面の俺に言ったのだ。
『ねえ、この本に書いてある“陽だまり”ってどんなもの?』
件の相棒は今、うたたねをしている。
大きな窓の下、古い毛布にくるまって。
読んでいたのだろう、数冊の本が、彼の周りに放り出されている。
「やけに静かだと思った」
俺のひとりごとが、薄暗い室内に響く。
窓から差し込む光は、相棒の周囲だけを照らしている。
陽だまり。まさしく。
しんと静かな部屋には、くうくうというかすかな寝息が響いている。
相棒はもう、陽だまりってどんなもの?とは聞かないだろう。
聞くまでもない。今彼がいるその場所こそが。
この場所に、彼を連れ出せたことは、自分の人生の中で意味があることだと、思ってもいいだろうか。
そんなことを言ったら、恩着せがましいと文句を言われそうだから、絶対に口には出せないけれど。
俺は、音を立てないようにそっと扉を閉じた。
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参加させていただくのは、四回目、でしょうか。
(わーい四四田の四だー)
今回のお題は「陽だまり」でした。
今回も楽しく書かせていただきました。有難うございます。
なお、この二人は、下記のSF短編の人らと同一人物です。
(いい加減名前を出せ)
※見出し画像はみんなのフォトギャラリーからお借りしました。
