バイリンガル病
(成瀬注:この原稿は、2009年に執筆した)
どうやら小学校で英語の授業がはじまるらしい。
ばかなことをするものだ。
英語教育についての私の考えは『新しい英語の学び方』に書いておいたし、多くの専門家も同様のことを述べているので、ここでは繰り返さない[1]、
それにしても文部科学省という役所はじつに愚かだ。
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「バイリンガル」という言葉が日本語に定着したのはいつからだろう。
私の子供のころにはなかったようにも思う。
ところがいまや多くの日本人がバイリンガルに強くあこがれているようにもみえる。

私からみればこれは一種の病気である。
「バイリンガル病」だ。
この病気の症状のひとつが昨今の異常なほどの英会話ブームであり、その延長線上に今回の小学校英語があるものと推量する。
今回の小学校英語という天下の愚策にも救いはある。
たとえ小学校で英語授業をしても教育的効果はゼロである。
しかし同時に深刻な副作用が生じる危険もゼロに近い。
なにしろ週にたった1時間だけのことだ。
このぐらいなら子供たちの人格にそれほど悪影響を与えずにすむだろう。
毒にも薬にもならないとすれば、お役所仕事としてはそれでよしとするべきかもしれない。
もちろん、これはせめてもの皮肉である。
(成瀬注:と思っていたら、実際には大きな悪影響が出た。中学で英語学力が急低下しているのだ。詳しくは↓など。)
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こわいのは、今回の小学校英語がさらにエスカレートして、教育全体を英語でしようなどと主張する輩が出てくることだ。
すでに、英語を幼児のころから教えようという動きが出てきているという。

さらには教育特区制度をつかって小中高12年間の教育をすべて英語でおこなう学校が実際にできているのだという。
日本で生まれた日本人を日本のなかで日本語でなく英語で教育しようというのだから、まさに正気の沙汰ではない。
さらにはそれを文部科学省が正式認可しているというのだから事態はもはや末期的である。
いずれにしても日本の未来のためにはこのバイリンガル病を一刻も早く撲滅することが重要であるが、これがじつに難しい。
たとえ理を尽くして説明したとしても、この病気にかかってしまった人たちの心には届かない。
バイリンガル病の人は、モノリンガルよりもバイリンガルのほうが生きていくうえで絶対的に有利だと心の底から思い込んでいる。
そのマインドコントロールはきわめて強固で、良識ある議論ぐらいではとても立ち打ちできない。
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ではどうすればよいのか。
結局のところ論より証拠しかないのだろう。
すなわち小学生から英語を勉強などしなくとも英語はしっかりとマスターできることを具体的に示すのである。
そうした実例がまわりに数多くいるようになれば、この日本に蔓延するバイリンガル病も次第に収まっていくのではないだろうか。
気の長い話だが、これしか方法がないのであれば、それを地道におこなっていくしかあるまい。
とすれば、先ず隗より始めよ、である。
つまり私たち大人たちが、英語を十分に使いこなして人生にうまく役立てるようになることが、バイリンガル病の撲滅への第一歩だということである。
そしてそれは一般に考えられているほど難しいことではない。
(2009.5.21)
[1] ご興味のある方は『小学校での英語教育は必要ない!』(大津由紀雄)、
『日本語力と英語力』(齋藤孝)、『危うし! 小学校英語』(鳥飼 玖美子)
などをお読みいただきたい。
(つづきは↓)
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