見出し画像

私の英語学習50年(75)英語ビジネスを通じての様々な出会い(2)コンピューターと翻訳

(↑のつづきです)

面白かったのは、ある米国生まれの翻訳ソフトウェアの会社からの翻訳依頼だった。知り合いから私のことを聞いたのだという。

「で、なんのご依頼でしょうか」

「じつは弊社の米国本社の社長メッセージを日本語に翻訳してほしいのです。」

「えっ? でも、それならば御社の翻訳ソフトウェアで翻訳をなさればよろしいのでは。」

「そんなことをすると、まともな日本語にはなりませんから。」

「?!」

☆☆☆

当時はまだビッグデータもAIもディープラーニングも何もない時代である。

したがって翻訳ソフトウェアといってもその精度は非常に低く、人間翻訳者の代わりを務めるというよりはマニュアル翻訳などの支援のために使うものだった。

当時に比べると現在の翻訳ソフトウェアは飛躍的な進歩を遂げた。AI翻訳が人間翻訳者に完全に取って代わると考えるのが「常識」となってきた。

☆☆☆

ここで翻訳論に深く踏み込むつもりはないが、私の立場については明確にしておこう。

ビッグデータ処理とディープラーニングをベースとする人工知能の発展は、まさに革命である。

ゆえに、これまでの常識は通じないと考える。

だが人工知能とは、究極まで突き詰めれば、たんなる計算機である。

そして計算機は「人間の心」を持つことができない。

したがって、情報の伝達手段である言葉をつなぐことはできても、人間の心と心をつなげることは原理的にできない。

人間の心と心をつなげることができるのは人間だけである。

言葉と言葉をつなぐ翻訳ではなく、人間の心と心をつなぐ翻訳は、人間にしかできないというのが、私の翻訳論のベースである。

☆☆☆

ただ世間一般では実務翻訳では情報がつながればそれで十分であり、人間の心までつなぐ必要はないと考えられている。本当はそうではないのだが。

したがって実際の翻訳実務では今後はAI翻訳がその大半を担うことになるだろう。

だが、それは私が考える本当の意味の「翻訳」ではないことを、ここで再度強調しておきたい。

(つづきは↓)

☆☆☆

☆☆☆

「ことさきく|成瀬由紀雄の日英文章・翻訳教室」では、このほかにも日本と日本人、英語・日本語・翻訳その他に関するコンテンツを数多くアップしてあります。総数は1000本を超えています。

いくつものマガジンを設定していますのでぜひチェックしてみてください。

いいなと思ったら応援しよう!