【成瀬 日本語・英語・翻訳講座】言語・日本語編(10)言語とは(1)モノとコト
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(↑のつづき)
言語とは
言語には、さまざまな本質的な性質がある。
そうした特質を理解することで、言語使用の精度が高まり、今までにはみえなかった新しい言語の姿がみえてくる。
ここから、そうした言語の本質的な性質をひとつずつ見ていく。
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モノとコト
人間は、この世界をモノとコトとに分けて認識している。
ただし、この世界が最初からモノとコトに厳然と分かれているわけではない。
人間がそれぞれの言語を通じて世界をモノとコトに切り分けているのである。
文法では、モノを「名詞」、コトを「動詞」と名付けている。
言語学者の研究によると、世界の言語には形容詞や副詞にあたる語彙区分を持たないものはあるが、名詞と動詞にあたる語彙区分を持たないものはひとつもない。
モノとコトとの区別は、人間としての(あるいは生き物全般としての)世界認識の原点だといってよい。
モノとコトとの区別=人間としての(生き物としての)世界認識の原点
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コトからモノへ
人間には、コトをモノ化することで、世界認識の幅を広げようとする傾向がある。
たとえば「悲しい」というコトは「悲しみ」というモノに転化される。
モノとなった「悲しみ」は大きかったり小さかったりする。やってきたり去っていったりもする。
さらには自分の頭のなかにだけ存在することであってもモノ化される。
「考える」は「考え」「思考」、「正しい」は「正義」、「うつくしいと感じる/感じさせる」は「美」になる。
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日本語はコト中心、英語はモノ中心
「コトのモノ化」はどの言語でも行われるが、日本語と英語ではその度合いが大きく異なっている。
日本語は、コトのモノ化をあまり用いない「コト中心」の言語である。
英語はコトのモノ化を過剰なほどに用いる「モノ中心」の言語である。
具体例でみてみよう。
たとえば、「頭が痛い」という日本語にあたる英語は、
✖ My head is painful.
ではない。
〇 I have a headache.
である。
「頭が痛い」というコトが「頭痛」というモノに転換され、「モノ化」されたheadacheを私が持つのである。
I have a headache.の直訳は
「私はひとつの頭の痛さを持っている」
であるが、これは不自然な日本語といえる。
日本語でも「痛い」というコトを「痛さ」とモノ化ができ、さらに痛さが「あった」り、痛さを「感じる」ことはできるのだが、しかしそれを「持つ」というコトはできないのである。
✖ 私はひとつの頭の痛さを持っている
〇 I have a headache.
〇 私は頭が痛い。
✖ My head is painful.
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「5分歩けば駅に着く」
という日本語は、
英語では
If you walk five minutes, you will arrive at the station.
と訳せると同時に、
A five-minute walk will take you to the station.
とも訳すことができる。
前者は「歩く」というコトをコトとして表現しており、後者はそれを「ひとつの5分の歩行」というモノに転換して表現したものである。
後者を日本語に反訳すると、
「5分の歩行があなたを駅につれていく」
となる。
〇 5分歩けば駅に着く
〇 If you walk some minutes, you will arrive at the station.
✖ 5分の歩行があなたを駅につれていく
〇 A five-minute walk will take you to the station.
この場合、英語ではコト中心の表現(前者)もモノ中心の表現(後者)も自然な表現といえる。
ただし、コト中心の表現よりもモノ中心の表現のほうが思考表現として高度とみなされることが多い。
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