見出し画像

成瀬由紀雄の「参考図書あれこれ」:『日本語はいかにつくられたか?』『日本語は進化する』(9)

(↑のつづきです)

最後に、翻訳の現状をみてみましょう。

現在では珍妙な翻訳文はさすがに姿を消しました(と、信じます)。

しかし千数百年にわたって培ってきた
「漢文訓読つまり“外国の香りのする日本語”こそが正統である」
という“舶来崇拝”感覚は、いまもなお日本人の心の奥底にしっかりと住み着いているのではないでしょうか。

また、江戸期における漢文訓読の堕落にも似た翻訳(欧文訓読)の堕落の状況も現在においてなお連綿として続いていると思います。

さらに最近では、AI翻訳の急速な普及によって、人間による翻訳行為が絶滅の危機に瀕しています。

そして生成AI翻訳とは、究極をいえば、オンライン上に蓄積された膨大なデータをベースにこれまでの翻訳を使いまわすだけですから、そこから創造的価値を持つ何かが創造されることはありません。

☆☆☆

『日本語は進化する』のなかで加賀野井氏は「翻訳とは、元来、ある言語が他の言語を通じ、かつて一度も語ったことのない事物に直面することによって、それを語るために、みずからを拡張していく創造行為である」と述べています。

翻訳が新たな自分自身をつくるための「創造行為」であるというこのきわめて当たり前の認識が、(生成AI翻訳はもちろんのこと)いまの翻訳者のなかから消えてしまっているのではないでしょうか。

「創造」とは、同時に「破壊」でもありますが、現在の翻訳が日本語に与える影響は、創造よりも破壊の側面が目立ってなりません。

このベクトルを反対の方向に向けなおす努力が、私たちにいま強く求められているのだと思います。

☆☆☆

☆☆☆

「ことさきく|成瀬由紀雄の日英文章・翻訳教室」では、このほかにも日本と日本人、英語・日本語・翻訳その他に関するコンテンツを数多くアップしてあります。総数は1000本を超えています。

いくつものマガジンを設定していますのでぜひチェックしてみてください。

いいなと思ったら応援しよう!