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EU『ネイチャーへのビジネスモデルと投資』第2版を読み解く

 ネイチャーポジティブで、お金は動くのか?生物多様性が経済の土台であることは理解できる、自然の損失がビジネスのリスクであることも分かる。けれども、いざ資金を動かそうとすると、「自然はそもそも投資の対象になるのか」「どの金融商品を使えばよいのか」「誰が、どんなリターンを得るのか」といった、最初のところで立ち止まりがちです。今回ご紹介するのは、この壁に正面から向き合った報告書、欧州委員会のEU Business and Biodiversity Platform(EUビジネス・生物多様性プラットフォーム)の金融ワークストリームが2026年4月にまとめた『Business Models and Investments for Nature(ネイチャーへのビジネスモデルと投資)』の第2版です。著者は欧州のネイチャーファイナンスを実際に動かしている当事者たちです。金融機関がどのようにして長期的な価値を生み出しながら、同時にリスクとコストを下げているのか。資産クラスを横断する実際の運用事例を提示することで、自然への投資がどのように組成され、規模を拡大し、複製されうるのかを描き出しています。抽象的な理念ではなく、欧州で現に動いている資金の流れを通じて、「自然に投資する」とは何を意味するのかを、具体的に共有できればと思います。日本においても今後重要になる先行事例なので、いつもよりも文字数多めで記載します。
 今日も楽しんでいってくださいね!

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ネイチャーファイナンスが動き出す

 報告書はまず、ネイチャーポジティブへの移行を資金面から支えることが、なぜ決定的に重要なのかを説明します。近年、自然への投資、とりわけ自然を活用した解決策(Nature-based Solutions、NbS)への投資が、環境課題に対処すると同時に、複数の社会経済的な便益をもたらしうるものとして、認識が高まってきました。

 自然を活用した解決策に必要な資金は、2030年までに年間で約5,710億米ドル不足すると見積もられています(『State of Finance for Nature』2026年版)。このうち欧州だけで約1,110億米ドルが不足するとされます(同2023年版)。資金の流れをネイチャーポジティブな経済へと方向づける資源動員戦略を支えるうえでも、このギャップをどう埋めるかが問われているのです。つまり、ネイチャーファイナンスは「理念として望ましいから」推進されているのではありません。埋めなければならない具体的で巨大な資金ギャップが存在し、それを民間資本も含めて埋めていくための実践知が、今まさに求められているということです。
 自然資本は、ビジネスリスクやコストを低減するグリーンインフラ機能と、価値創造の2つのリターン創出エンジンを持っています。ただ、人工物と違って、これがふわっとしており、なかなか従来は分かりづらいものでした。

 報告書は、バンカビリティ(投融資のしやすさ)への障壁を乗り越える戦略を示すこと。ここには、忍耐強い資本(ペイシェント・キャピタル)、リスク低減のメカニズム、ブレンデッドファイナンスの構造、顧客が金融的な報酬を積み重ねられるようにする資金フローの整合(スタッキング)、そしてインパクト投資が含まれます。さらに、断片化を減らしてネイチャーポジティブ投資の拡大に対する自信を築くために、機関同士の協調を強化すること。政府と金融機関のあいだに、明確に定義された補完的な役割を据え、自然を回復するための協調行動を後押しすること。これらが報告書の狙いとして掲げられています。


ネイチャーファイナンスの欧州における10の先駆的事例

 報告書では、ネイチャーポジティブな成果に貢献することを目指す10の既存実践が紹介されています。

 これらは「高い機会のあるセクター」から選ばれており、選定の基準となったのは、マテリアリティ(重要性)、インパクト、そしてシグニフィカンス(意義)の3つです。取り上げられたセクターは、次の6つです。すなわち、建築環境・都市生態系、(グリーン)インフラ、水道事業、(再生型)農業・食料、林業、そして自然保全です。10の実践事例は、これらのセクターのいずれか、あるいは複数にまたがって位置づけられています。たとえば、ASR Dutch Farmland Fundは再生型農業・食料に、SLM Silva Fundは林業に、Triodos BankのWyre川自然洪水リスク管理プロジェクトは(グリーン)インフラ・水道事業・自然保全の3つにまたがるかたちで分類されています。なかでもBNP Paribas Asset ManagementのEnvironmental Solutions Fundは、6つのセクターすべてをカバーするという点で際立っています。これは、上場株式という資産クラスが、特定のプロジェクトに縛られず、複数の産業や地域を横断して資本を投じられる性質を持つことの表れでもあります。

 ファイナンスとしては、目的とリスク許容度に応じたアセットクラスを選択することになります。

 ここからは、この10の実践を一つずつ見ていきます。それぞれについて、対象セクターと地域、ビジネスモデルの駆動要因とタイプ、用いられている金融商品、そして財務リターンの構造を中心に、報告書が記述する内容を解説していきます。

1. ASR Dutch Farmland Fund——農地という資産クラスで「永続的な価値」をつくる

 最初の事例は、オランダのASR Dutch Farmland Fundです。これは、2025年12月31日時点で24億ユーロの価値を持つ、分散され成熟した農地ポートフォリオを提供するファンドです。このファンドは、農地を社会・地球・投資家にとっての長期的な価値創造へと向けて運用することで、レジリエントで革新的かつ持続可能なオランダの農業セクターに貢献しています。

 ファンドの投資目標は二つあります。一つは、共通の資産クラスや他の実物資産との相関が低い、比較的低リスクなプロファイルと組み合わさった、魅力的な長期リターンを提供すること。もう一つは、農家が農地をより良い状態で次世代へ引き継ぐよう働きかける責任あるスチュワードシップを通じて、「永続的な価値(perpetual value)」を生み出すことです。この後者の目標は、ファンドの気候スマート農業戦略によって支えられています。これは、持続可能なパフォーマンスに対してリース価格を引き下げて提供することで、良い農業実践を促すものです。持続可能なパフォーマンスの水準を評価するために、ファンドは農家に対し、オランダ政府の自然・景観管理フレームワークに沿った生物多様性対策の実施と、土壌の健全性を評価するためのOpen Bodemindex(OBI、「オープン土壌指数」)の導入を求めています。こうしたかたちで、持続可能で環境的に責任ある農業実践の推進を確実にしているのです。

 ビジネスモデルの駆動要因は、土壌肥沃度の維持と改善です。ビジネスモデルのタイプは「より多くの価値や収益を生み出す」に分類されます。土壌の品質を維持・改善し、持続可能な農業実践を適用することが、農家と投資家の双方にとっての長期的な価値と収益を生み出す鍵だという考え方です。副次的便益としては、水管理、炭素隔離、作物生産が挙げられています。

 金融商品はファンドです。最低投資額は投資家1人あたり5,000万ユーロで、運用期間は無期限です。ファンドはオランダ法のもとで「共同勘定のためのファンド」(fonds voor gemene rekening、FGR)として組成されており、主にユーザー契約のある農地に投資します。提供される契約タイプは、農家の状況や事業に合わせて多様で、超長期リースで消費者物価指数に連動するキャッシュフローを持つ「グラウンドリース」、無期限のリース期間で規制されたリース価格改定を持つ「長期リース」、最長6年でフリープライシングの「短期リース」などがあります。ファンドの年間分配可能リターンの目標は、純資産価値の少なくとも2%です。詳細な目標としては、手数料・経費控除後で投資家レベルでの税引前のネットIRRが少なくとも4.0%とされています。このIRRは、ポートフォリオの分配可能リターンと、資産の取得・処分および価値成長の積み重ねによって生み出されます。

 注目すべきは、若い農家への配慮です。若手農家からの高まる需要に応えるため、「Young Farmers Ground Lease(若手農家グラウンドリース)」という商品が立ち上げられました。これは、農家が責任ある方法で投資能力を確保できるようにするオーダーメイドの解決策で、購入価格を裸所有権価値の最大90%まで引き上げることができます。これにより、若い農家は独立した農業経営者としてのキャリアの初期に、より少ない資本で済むようになります。農家の年齢に応じて、最長40年の契約期間を設けることも可能です。

 ファンドは、年金基金や保険会社を含む民間機関投資家による株式投資で完全に資金が賄われており、投資家は100%民間です。複製可能性については、ファンドは成熟に達しており、オランダ国内でも十分な成長ポテンシャルがあるとされます。そのビジネスモデルは欧州全域でも複製可能で、特にグラウンドリースやハイブリッド・グラウンドリースのアプローチを導入できる、農業上重要な国々で有効です。ただし、ASR Dutch Farmland Fundが130年という長い期間をかけて築かれてきたこと、そして国内で専門性に定評のある経験豊かな社内チームを擁していることは、見落とせない強みです。2,700件を超える契約、指数連動のキャッシュフロー、そして20年を超える加重平均リース期間によって、安定的で確実な収入を実現している点も特徴です。

2. BNP Paribas Asset Management Environmental Solutions Fund——上場株式で「解決策を提供する企業」に投じる

 二つ目は、BNP Paribas Asset ManagementのEnvironmental Solutions Fundです。このファンドは、製品やサービスを通じて、生態系の回復、世界的な脱炭素化、環境インフラの構築への解決策を提供する企業を選別することで、最良の投資機会を狙います。投資対象となるユニバースは、海洋の健全性とクリーンな水、スマート農業と食料イノベーション、サーキュラーエコノミーとエコデザイン、再生可能エネルギーの生産、エネルギー技術と素材、エネルギーインフラとモビリティという6つのテーマのいずれかに該当する、グローバルな企業群で構成されています。

 投資家が環境ソリューションへの関心を強めているのは、それらがエネルギー、水、食料の安全保障を強化するからです。これらは、世界的な需要の高まりと、気候・自然関連の不確実性の増大のなかで、きわめて重要な領域です。投資家はまた、再生可能エネルギーの発電、グリーンインフラ、食料供給、資源管理、そして人工知能の役割の拡大に、強い長期的な機会を見出しています。この戦略の特徴は、純粋にテーマ重視のアプローチを取っている点にあります。企業が「どのように」事業を営むかではなく、「何を」しているかを評価することで、解決策の提供者だけに焦点を絞るのです。この評価は主に売上高と設備投資を通じて測られます。その結果、ファンドはMSCIオールカントリーワールドインデックス(MSCI ACWI)に対して85%を超える高いアクティブシェアを持っています。ファンドはグローバルで、Sカーブの各段階とさまざまな環境テーマにまたがって投資し、環境課題に包括的に対処します。加えて、独自のクオンタメンタル手法を用いることで、投資家はテーマに沿った企業へのエクスポージャーを得ながら、MSCI ACWIに対するトラッキングエラーを6〜8%に維持できます。

ビジネスモデルの駆動要因は、調整機能と供給機能です。ビジネスモデルのタイプは複数にわたります。一つは「リスク低減」で、生物圏への経済的な圧力を減らしてレジリエンスを再構築するものです。もう一つは「コスト低減」で、生態系サービスを評価・管理することによって、生態系への依存を減らし、より抽出的でない実践と低いコストへとつなげるものです。さらに「より多くの価値や収益を生み出す」もあり、リスク・リターン・投資規模に基づいて金融商品を検討し、レジリエントな生態系の価値を認識して、生物多様性クレジットを通じてプロジェクトに資金を供給するものです。副次的便益は、作物生産、水、大気質の調整、炭素隔離、水流の調整、廃棄物処理、浸食防止、土壌肥沃度の維持、生物学的制御、花粉媒介、遺伝的多様性の維持と、非常に幅広く挙げられています。

 金融商品は上場株式です。BNP Paribas Asset Managementが運用するこのファンドは、2026年3月末時点で約8,500万ユーロの上場株式を保有し、60〜80社に投資しています。推奨保有期間は5年です。投資家は、エグジット時に実現する資本増価を通じて利益を得ます。配当については、ファンド内で生み出された配当を再投資する「キャピタライゼーション」シェアクラスと、あらかじめ設定された頻度で投資家に配当を支払う「ディストリビューション」シェアクラスのいずれかを選べます。これはUCITSファンドであり、投資家に日次の流動性を提供します。2026年3月までの年初来で、ファンドは約5.93%上昇し(ユーロ建て、手数料控除前)、MSCI ACWI(ユーロ建て)を8.57%アウトパフォームしました。ファンドの投資家は100%民間です。販売ネットワーク経由のリテール・シェアクラスには最低額がなく、機関投資家向けシェアクラスでは最低300万ユーロとなっています。複製可能性については、保有企業のビジネスモデルは様々で、複製しやすいものもあればそうでないものもありますが、ファンド自体は幅広い上場企業に投資プロセスを複製することで効果的に規模を拡大できます。実際、一連の産業や国に目を向ける公開ファンドの利点は、プロジェクト型の取り組みとは異なり、より分散された商品へと一度に大きな資本プールを振り向けられる点にあります。

3. SLM Silva Fund——「自然に近い林業」で機関投資家を呼び込む

 三つ目は、SLM Silva Fundです。これは、「自然に近い(close to nature)」林業、別名「継続被覆林業(Continuous Cover Forestry、CCF)」を拡大する、機関投資家向けの欧州林業ポートフォリオです。このアプローチは、欧州の林業資産にわたって、より多くの機関投資家による所有と、より高い環境基準への道を切り開いています。2018年に欧州投資銀行(EIB)、大手機関投資家、ファミリーオフィスの支援を受けて立ち上げられたこのファンドは、アイルランドの小規模で管理が行き届いていない森林を大きな機関投資家向けポートフォリオへと集約し、従来の皆伐・再植林からCCFへと移行することを目指しています。CCFは、選択的な間伐と恒久的な森林被覆の維持に焦点を当てた手法です。

 対象セクターは林業、地域は欧州・アイルランドです。ビジネスモデルの駆動要因は作物生産(木材)です。ビジネスモデルのタイプは「リスク低減/より多くの価値や収益を生み出す」です。ファンドは継続被覆林業(CCF)を実施しており、これはレジリエンスを高めるための重要な森林管理実践です。この手法は木材市場のボラティリティへのエクスポージャーを減らし、より多様でレジリエントな森林を支えることで、病害虫や気候イベントによる価値破壊のリスクを低減します。副次的便益としては、炭素隔離、ライフサイクルの維持、審美的な情報、レクリエーションや観光の機会が挙げられています。金融商品は実物資産(林地の取得)です。3,000万ユーロのSLM Silva Fundは、EIB、機関投資家、ファミリーオフィスの支援を受けて、アイルランドの小規模で未管理の森林を機関投資家規模のポートフォリオへと集約し、皆伐・再植林からCCFへと移行します。CCFは、定期的な間伐や選択的な伐採、そして恒久的な森林被覆の保持に基づいています。CCFは、従来の林業に匹敵する、あるいは潜在的にはより良いリターンを、より強く安定したキャッシュ利回りと、より安定した資本価値とともに生み出すことができます。この戦略は現在、7〜8%というリターン目標を上回っており、2025年12月時点で10.29%のIRR(未実現)を達成しています。リターンは集約と木材の販売を通じて生み出されます。ファンドの構造はクローズドエンド型(LP/GP構造)で、チケットサイズは100万〜1,000万ユーロ、運用期間は10年です。クローズドエンド型のため、投資期間中の流動性はありません。投資家は100%民間で、機関投資家と個人投資家にまたがっています。

 複製可能性について、報告書は具体的な展開を示しています。SLM Silva Fund IIという、1億5,000万ユーロの新たなインパクトファンドの立ち上げが、その証拠です。この新ファンドは、複数の欧州諸国(アイルランド、英国、スペイン、ポルトガル、バルト諸国)で持続可能な林業に投資します。SLM Silva Fund Iの成功を土台に、同じ投資戦略——既存の林業と植林への投資、資産の機関投資家向けポートフォリオへの集約、継続被覆林業管理の実施、そして炭素と生物多様性に関連する環境インパクトの収益化——を複製していくのです。

 第三者への依存という観点も重要です。EUの自然資本ファイナンス・ファシリティを通じて、ファンドは74万ユーロの技術支援ファシリティ助成金の支援を受けており、これは英国とアイルランドにおけるCCFの普及を支えるためのものです。このプロジェクトは、英国とアイルランドの約80人の森林管理者、所有者、伐採請負業者の訓練に資金を提供してきました。また、複数の間伐サイクルを経てCCF管理下にある森林からのインベントリーデータの収集にも資金を提供しており、これは新しいCCFの成長・収量モデルを検証するために使われます。CCFの炭素会計手法や森林生物多様性指標も開発中です。このプロジェクトは、欧州初のCCF森林認証グループスキームの確立を後押しするもので、CCFを採用することを選んだアイルランドのすべての森林所有者に開かれることになります。

4. Tornator Forestry Green Bond——債券市場で生物多様性プログラムを支える

 四つ目は、投資家としてMirovaが参加するTornatorの林業グリーンボンドです。欧州における持続可能な森林管理を専門とする大手企業Tornatorは、自社の生物多様性プログラムを支えるために債券市場を活用しています。その使途は二つに大別されます。一つは持続可能な林業への投資の資金供給で、FSCやPEFCの認証、持続可能な造林に必要なインフラ、そして環境にポジティブな影響を持つ研究開発プロジェクトが含まれます。もう一つは自然保全の資金供給で、生物多様性(たとえば排水された湿原を炭素貯蔵へと戻す復元)、資源効率を改善するプロセスへの投資、そして再植林(たとえば使われなくなった泥炭生産地、農地、送電線敷地での再植林)が含まれます。

 Tornatorの生物多様性プログラムの目的は、新たな対策、能動的な自然管理の強化、ステークホルダーとの協力を通じて、森林の生物多様性を保護し向上させると同時に、その効果をモニタリングすることです。このプログラムは、生態系サービス、水の保護、狩猟管理、気候変動の緩和も支え、絶滅危惧種や生息地に便益をもたらします。生物多様性のモニタリングには、合計で12の業績指標が用いられています。

 対象セクターは林業で、地域はフィンランド(89%)、エストニア(8%)、ルーマニア(3%)です。ビジネスモデルの駆動要因は炭素隔離です。ビジネスモデルのタイプは「価値創造」で、認証された森林への新たな投資を通じて、より多くの炭素を捕捉し、自然(生物多様性など)の環境的な保全を改善できるかたちで、より多くの価値や収益を生み出すものです。副次的便益は生物多様性の維持または改善です。

 金融商品はグリーンボンドです。このプロジェクトは、6年にわたって1.25%のクーポンレートを持つ3億5,000万ユーロのグリーンボンドを伴います。原資となるプロジェクトからの利益は、一部が配当として所有者に分配されます。Tornatorの一般的な方針は営業純利益の70%を配当として支払うことであり、残りは成長と持続可能性を支えるために留保されます。20年以上にわたって実証されてきたTornatorの成熟したビジネスモデルは、規模の経済から便益を得ており、複製可能なフレームワークを持っています。ただし、大規模な森林資産の取得にはかなりの資本を要します。グリーンボンドは、環境的な便益が長期にわたる場合(木材収量の向上や気候変動リスクの低減など)に、民間の投資コストを平準化する助けとなります。一次市場でのグリーンボンドのプレミアムは、これらの債券を通じて融資を受ける企業の負債コストを下げます。従来型の債券に対するグリーンボンドのプレミアムの存在と大きさは、市場の状況や個別の債券発行、市場基準への準拠などによって変動しうるものの、一次市場でも二次市場でも観察されてきました。ICMAグリーンボンド原則のような現行の市場基準を満たすグリーンボンドには、より大きな投資家層が存在するという明確な証拠があります。リスク低減の構造も具体的です。担保はTornatorのフィンランドの森林資産であり、フィンランドの森林資産には森林保険がかけられています。

 インパクト評価の鍵となる指標としては、Tornatorの2021年から2030年の生物多様性プログラムの主要目標が示されています。すなわち、5,000ヘクタールの新たな自然保全地域の設立、3,000ヘクタールの湿地復元、そして少なくとも200の能動的な森林・水域環境改善プロジェクトの実施です。

 複製可能性について、報告書は最新の発行事例を挙げています。2024年10月、Tornatorは2031年に満期を迎える3億ユーロの7年物グリーンボンドを、3.750%のクーポンで発行しました。この取引は、取引に先立つ包括的なマーケティング段階から便益を得ており、それがTornatorにとっての魅力的なプライシングへとつながりました。オーダーブックには100社を超える投資家が並び、需要は10億ユーロを超えました。Tornatorのビジネスへの資金供給は、自然、生物多様性、気候に対する多くのポジティブな影響を持つ、きわめて持続可能な林業への投資であり、ESGのSとGに当たる他のサステナビリティの論点も忘れてはならない、と報告書は位置づけています。

5. Triodos Bank Wyre川自然洪水管理プロジェクト——受益者が支払うブレンデッドファイナンス

 五つ目は、Triodos BankのWyre川自然洪水リスク管理プロジェクトです。Wyre流域自然洪水管理プロジェクトは、イングランドの流域で、洪水の水を貯め、遅らせ、遮り、ピーク流量を防ぐための1,000を超える対策を実施します。洪水リスクの低減から便益を受ける者が、その介入の費用を支払う仕組みであり、プロジェクトのコミュニティ・インタレスト・カンパニー(CIC)は、介入の資金を賄うために、9年・85万ポンドの民間ローンファシリティの調達に成功しました。

 対象セクターは(グリーン)インフラ、水道事業、自然保全で、地域は英国です。ビジネスモデルの駆動要因は水流の調整と極端現象の緩和です。ビジネスモデルのタイプは「リスク低減」で、洪水リスクを減らすものです。副次的便益は水管理、炭素隔離、ライフサイクルの維持です。金融商品は、サステナビリティ・リンク・ローンを伴うブレンデッドファイナンスです。

 資金構造は精緻です。助成金とは別に、プロジェクトは9年・85万ポンドの商業ローン(金利6%)によって資金が賄われ、資金は3年にわたって引き出され、返済は4年目から9年目に行われます。特定の生物多様性目標が達成されれば、金利は1%引き下げられます。このローンは二つのファシリティに分かれています。一つは「機関投資家ローンファシリティ」の65万ポンドで、5つのインパクト投資ファンドから拠出され、最大の貢献はパイロット段階からプロジェクトを支援したEsmée Fairbairn Social Investment Fundによるものです。もう一つは「社会的投資税制優遇(SITR)ローンファシリティ」の20万ポンドで、4人の富裕層個人から拠出され、Triodos Bank UKによって導入されました。このファシリティは前者に劣後し、6%のリターンを持つエクイティとして機能し、SITRを通じた30%の税還付から便益を得ます。上流の資金構成は、45%が公的、55%が民間です。植林や生垣の創出のために、Defra(英国環境・食料・農村地域省)の気候のための自然基金の一環である北部森林グロー・バック・グリーナー・プログラムを通じて、Woodland Trustから62万7,500ポンドの助成金が交付されました。これらの助成金は、プロジェクトの最初の3年間にわたって交付されます。残りの85万ポンドの民間投資はTriodos Bank UKによって9年ローンのかたちで合意され、二つの補完的なファシリティが9人の投資家を結びつけています。リスク分担の設計も特徴的です。この外部投資は、プロジェクトの4つのステークホルダーグループ——買い手、土地所有者、投資家、そして慈善団体(Rivers TrustとWyre Rivers Trust)——に対して、重要なリスク分担の機能を提供します。財務リスクは主に投資家にあります。介入の約80%は3年目の終わりまでに実施されなければならず、もし実施されなければ、買い手は4年目に契約を見直す選択肢を持ち、投資家には元本も金利の返済も残らないことになります。買い手は年間のプロジェクト料金を支払うため、財務リスクはより小さくなります。一方、土地所有者は財務的・評判上・パフォーマンス上のいずれのリスクも負わず、これがプロジェクトチームによれば、彼らの合意にとって重要だったとされます。

 インパクトの面では、具体的な自然対策が並びます。60ヘクタールの湿地貯留(1,500を超えるリーキーダム、氾濫原の再接続、池の創出、10キロメートルの土塁状生垣、泥炭の再湿地化を含む)、起伏と生物多様性のための10ヘクタールの草地創出、そして約6万4,000本の在来樹を伴う約40ヘクタールの森林創出です。プロジェクトで主に対象とされている生態系サービスは洪水リスクの低減で、50年に一度の洪水イベントの際のピーク流量を減らす介入の有効性が、年次・プロジェクトの報告で評価されます。生物多様性については、英国政府のDefraと共同開発したカスタムメイドの生物多様性測定フレームワークが用いられ、これは生物多様性の指標が達成されれば投資家が金利の引き下げを受ける「インパクト調整型」の金融メカニズムと結びついています。

 キャッシュフローの面では、9年間にわたって合計200万ポンドの生態系サービス支払いが予定されています。これは買い手(Flood Re、United Utilities、Environment Agency、Wyre Council、北西地域洪水・沿岸委員会)から、主に農家である土地所有者へと流れます。事業体は、保証によって責任が限定されたCICであり、留保された利益はWyre流域の地域社会のために充てられることを確認するアセットロックが設けられています。

 複製可能性については、各河川流域はそれぞれユニークであるものの、モデルは複製されつつあります。一例がRibble Rivers Trustで、自然環境投資レディネス基金から10万ポンドの技術支援助成金を受け取りました。Ribble Rivers Trustは、River Ribble流域における生態系サービスの投資計画を策定しており、土壌栄養管理、リーキーダムの構築、森林創出、生垣の復元といった行動が費用化され、自然洪水管理や水質改善といった便益も定量化される予定です。なお、SITR制度は社会的インパクトセクターのために2014年に立ち上げられ、Wyre NFMプロジェクトはSITRの対象となった初の自然ベース投資プロジェクトでしたが、2023年4月をもって新規投資への適用は終了しています。

6. Biodiversity Monitor——「資金フローの積み重ね」で農家に報いる

 六つ目は、Rabobankのインパクトローンを含む資金フローのスタッキング、Biodiversity Monitorです。オランダで、Rabobankはステークホルダーとともに、酪農用と耕種農業用の二つのBiodiversity Monitor(生物多様性モニター)を開発しました。それぞれのBiodiversity Monitorはパフォーマンスベースであり、複数のアクターが農家に対して、自らの農場とその周辺で生物多様性を改善するインセンティブを与えるための基礎として用いられます。

 この「資金フローのスタッキング」の一環として、Rabobankは高いサステナビリティパフォーマンスを示せる事業者に対して、引き下げられた金利でインパクトローンを提供し、欧州投資銀行(EIB)がより低い金利を支えるための追加資本をRabobankに提供します。その他のインセンティブを与えるアクターとして、より高い乳価を支払う酪農生産企業と、補助金を出す州があります。つまり、銀行、州、乳業会社という複数の便益を与えるステークホルダーが、サステナビリティパフォーマンスを理解するための統一されたシステムに基づいて、農家に報酬を重ねていく構造です。

 対象セクターは(再生型)農業・食料で、地域はオランダです。ビジネスモデルの駆動要因は、大気質の調整、炭素隔離、浸食防止、土壌肥沃度の維持、生物学的制御、花粉媒介です。ビジネスモデルのタイプは「価値創造」で、サステナビリティパフォーマンスに基づいて便益を受けるステークホルダー(銀行、州、乳業会社)から複数の報酬が得られることによる付加価値です。

 金融商品は、農家による資金フローのスタッキングと、そのフローの一部としてのサステナビリティ・リンク・ローンです。財務リターンの仕組みは具体的です。Rabobankの顧客が内部のサステナビリティ・マトリクス(Biodiversity Monitorと整合)でカテゴリーAになると、未返済のすべてのローンについて20ベーシスポイント(bp)の割引を得られます。たとえば、農家が200万ユーロのローン(土地、畜舎、設備、リン酸権の資金調達)を抱えている場合、これは年間4,000ユーロの便益になります。さらにRabobankは、追加投資を必要とする(そしてその資金調達のためにローンを必要とする)酪農家向けに、30億ユーロの移行ローン予算を割り当てています。その魅力的な条件には、必要投資額の100%の融資(100%ローン・トゥ・バリュー)、前払い手数料なし、資金調達コストに対して40%・残り60%をマイナス70bpで割り引く金利、最低投資5,000ユーロ、最長10年のテナーが含まれます。加えて、顧客はEIBの資金によるサステナブル・インパクト・ローンを利用できます。農地については返済期間が20〜25年、移行ローンには3年の据置期間が適用されます。

 インパクト評価の指標は、農業の種類ごとに整理されています。酪農については、温室効果ガス排出量、恒久草地の割合、自家農場で生産されるタンパク質の割合、アンモニア排出量、土壌の窒素余剰、自然・景観要素、ハーブの豊かな草地の割合という7つです。耕種農業については、土壌保全作物の割合、土壌有機物バランス、農場レベルの窒素余剰、作物保護の環境影響、被覆作物の割合、カーボンフットプリント、自然・景観管理、作物の多様性です。

 複製可能性について、報告書は、このフレームワークが他の地域やセクターの同様のプロジェクトに適応できると述べています。標準化された指標とデータ収集の手法が確立されれば、組織は同様のモニタリングのアプローチを導入できます。より多くのステークホルダーを巻き込んで資金供給されるプロジェクトの範囲を広げ、インパクトローンへの追加投資を引き込むことで、規模を拡大できるとされます。Biodiversity Monitorはアウトカムベースであるため、この手段は生物多様性にポジティブな効果を持つKPIのパフォーマンスを示し、農家に金銭的に報いる容易な機会も与えるのです。

7. Astanor——アグリフードのイノベーションにエクイティで賭ける

 七つ目は、Astanorです。Astanorは8億ユーロを超える資産を運用し、人と地球の健康を強化するために、アグリフードセクターを活用してアーリーステージからレイトステージの企業に投資します。Astanorのポートフォリオ企業は、アグリフードシステムを、生物多様性損失の主要因の一つから、再生型の解決策へと転換することを目指しています。とりわけ、農家が再生型の実践へ移行するのを支える製品やサービスを提供する企業に資金を供給することがその柱です。そうした解決策には、化学投入物の必要性を減らすバイオスティミュラントやバイオコントロール、そして資源利用を減らしながらより高い収量を達成する方法に関するデータを農家に提供する技術が含まれます。

 対象セクターは(再生型)農業で、地域は欧州と米国です。ビジネスモデルの駆動要因は、作物生産、水、土壌肥沃度の維持、生物学的制御、花粉媒介、ライフサイクルの維持、教育・科学です。ビジネスモデルのタイプは「リスク低減」で、バイオスティミュラントやバイオコントロールによる土壌の健全性の改善と化学投入物への依存の低減、精密農業やロボティクスによる資源利用の最適化と作物損失の低減、そして代替タンパク質による土地と水への圧力の低減を通じて、これらの解決策はバリューチェーン全体で生物多様性の保護に貢献しながら、農家により多くの収益と価値を生み出します。副次的便益は浸食防止と遺伝資源です。

 金融商品はエクイティです。Astanorは解決策を専らエクイティで資金供給します。AstanorはゼネラルパートナーG(GP)として、3つの異なるタイプのリミテッドパートナー(LP)から資金を受け取ります。すなわち、ベルギー、オランダ、フランス、ドイツ、デンマークなど異なる欧州諸国の政府系ファンドおよび欧州投資基金(EIF)、機関投資家、そしてファミリーオフィスなどの個人投資家です。投資はシードからシリーズBまでのアーリーステージからレイトステージの企業に対して行われるため、エクイティは企業のライフの最初の数年間、製品やサービスの開発を支えるうえで不可欠です。チケットサイズは1,000万〜5,000万ユーロで、最初の資金調達クローズから10年プラス2年が運用期間です。流動性はありません。投資家はファンドのライフタイムの終わりに、自らの投資から利益を受け取ります。財務リスクについて、Astanorはプライベート市場(ベンチャー・グロースキャピタルファンド)の投資家であるため、投資家にとっての主な財務リスクは3つあります。市場リスク(製品やサービスへの市場の需要が期待通りに生まれず、ポートフォリオ企業が収益性を達成しにくくなるリスク)、流動性リスク(ファンドへのコミットメントが数年間ロックされ、投資の売却や現金化が難しくなるリスク)、そして評価・エグジットリスク(投資時にスタートアップが過大評価され、収益性の高いエグジットの達成が困難になるリスク)です。インパクト評価について、Astanorは、企業が市場で置き換えるものと比較した環境パフォーマンスを比べることで、ポートフォリオ企業の生物多様性へのポジティブな影響を測定します。この測定はライフサイクルアセスメントまたは現地調査を通じて行われ、典型的には、回避された土地利用の面積、保護された野生魚の重量、回避されたプラスチックの重量などを測ります。利益の分配については、投資期間中、企業が生み出すすべての利益はその成長とスケーリングを支えるために事業へ再投入されます。エクイティ投資であるため、投資家に返済するために利益が使われることはありません。投資家は、自らの投資分が売却される企業のエグジット時に利益を受け取ります。

 イネーブリング環境について、投資はEUタクソノミーのような持続可能な投資を奨励する規制によってポジティブな影響を受けています。EUタクソノミーは資本を持続可能な投資ビークルへと振り向けます。AstanorはSFDRのもとでArticle 9ファンドであり、政府系ファンドからの資金の100%がこの規制によって可能になったと見積もっています。SFDR規制は現在見直し中ですが、Astanorの投資アプローチは規制要件だけによってではなく、人と地球の健康を強化するというミッションによって駆動されており、政治的・規制的な状況の変化は報告のフレームワークに影響を与えうるものの、ポートフォリオ全体にわたるインパクト創出へのAstanorのコミットメントを変えることはないとされます。インパクト投資は、研究に資金を供給し、セクターを拡大・破壊する製品やサービスを開発するための現金を必要とする、革新的な若いスタートアップに適しているのです。

8. La Société Forestière——森林の「自然資本」を多様な収益源に変える

 八つ目は、La Société Forestièreの自然資本管理です。Groupe Caisse des Dépôtsの子会社であるLa Société Forestièreは、継続的な改善プロセスの一環として、生態系にやさしい林業を実施しています。その森林自然資本管理は、森林の多機能性(木材生産と生態系サービスの保全のバランス)に適応しています。その運営はISO 9001認証の持続可能な管理マニュアルに導かれ、管理する森林にはFSCのエコ認証が付されています。La Société Forestièreは、森林由来の商品(木材および非木材)、炭素クレジット、ネイチャークレジット(パイロット)、そして生態系サービスへの支払い(PES、パイロット)の販売を通じて収益を生み出します。

 対象セクターは林業で、地域はフランスです。ビジネスモデルの駆動要因は、森林由来の商品(木材および非木材製品)、炭素クレジット、ネイチャークレジット(パイロット)、そして生態系サービスへの支払い(PES、パイロット)の販売です。ビジネスモデルのタイプは「価値創造」で、長期的な受託者責任を統合し、レジリエントな生態系の価値を認識するものです。副次的便益は炭素貯蔵と保全(動物相)です。金融商品は自然資産で、炭素クレジット、ネイチャークレジット、森林由来の商品、そして生態系サービスへの支払い(PES)です。La Société Forestièreは、その活動を二つの事業体に整理しています。林業のプランテーションを管理するLa Forestièreと、林業資産を管理するSeeds Investです。Seeds Investは、森林由来の商品(木材および非木材)の販売による長期的な資本増価と定期的な収入を、高い完全性を持つ炭素クレジット、(今後予定される)ネイチャークレジット、そして生態系サービスへの支払い(PES)とともに、民間・公的の投資家に提供します。リターンは森林資産の価値と市場価格に結びついています。チケットサイズは森林の規模に応じて変動し、金利や収益率の割合は所有者のタイプによって異なります。自主的な炭素クレジットの販売については、再植林が監査によって確認された時点で投資家への利益分配が行われ、その時点でSeeds Investは所有者への自主的な炭素クレジットの販売を確定します。

 CDCグループの資産所有者は、その子会社であるLa Société Forestièreに森林資産を委ね、サステナビリティに関するきわめて強い仕様のもとで管理させています。こうした要件は広がり、La Société Forestièreは現在、自らの森林資産の一部(個人投資家に属するものや、他の資産所有者に属するもの)をFSCのもとに置いています。La Société Forestièreは長期の管理者であり、SYMBIOSEによって管理される資産であれば最長99年に及ぶ期間にわたって森林の持続可能な管理を担います。

 利益の分配についても具体的です。この森林資産管理が利益を生んできたため、La Société Forestièreは都市林プロジェクトのような新たな事業を展開してきました。これは地方自治体に向けた提案で、フランスの公的開発銀行であるLa Banque des Territoiresによって資金供給されることもあります。La Société Forestièreは、都市部の林業プロジェクトを認証し、市場で堅牢な自主的炭素クレジットを発行するために、「label Bas-Carbone」(炭素オフセットのためのフランスの標準)という手法を開発しました。この「label Bas-Carbone」はフランス生態省が所有しています。Caisse des Dépôtsのような資産所有者にとっては、植えられた樹木の品種に応じて、木材の販売後20年または50年で利益が得られ、自主的炭素クレジット市場での炭素クレジットの販売からも一部利益が生まれます。さらに、Caisse des Dépôtsの資産所有者は、自らの森林資産からのネイチャークレジットの経験にも関心を持ちうるとされます。成熟までの期間は樹木のタイプによりますが、20年から50年、あるいはそれ以上に及びます。

 複製可能性については、森林資産管理者が持続可能に活動する限り複製可能であり、あらゆる森林資産の持続可能な管理者によって複製できます。持続可能な森林管理は、土壌、生物多様性、水、そして森林が提供するすべての不可欠な生態系サービスの維持を助けます。気候変動との闘いにおいて重要な役割を果たし、バイオマスがグリーントランジションを駆動するうえで決定的であることを踏まえれば、賢明な投資でもあるのです。

9. EBRD Chisinau川Bicリハビリテーションローン——開発銀行が踏み出した「自然ベース」への一歩

 九つ目は、欧州復興開発銀行(EBRD)のChisinau川Bicリハビリテーションローンです。Chisinau(キシナウ)が成長するにつれて、Bic川は汚染され、洪水を起こしやすくなり、地域社会、インフラ、経済に影響を与え、都市の魅力を損ねてきました。深刻な洪水は、気候変動の予測される影響——短く激しい豪雨をより多くもたらすと見られています——を通じて、いっそう有害になると予想されています。EBRDのChisinau川Bicリハビリテーション・洪水防護プロジェクトは、雨水の流出とBic川との相互作用の管理を全体として改善する、複数の解決策のブレンドに資金を供給します。これはEBRDによるプロジェクトへの自然ベースの解決策の初めての正式な統合を表しています。プロジェクトはさらに、より伝統的な雨水管理システムを補完するグリーンスペースを創出します。

 対象セクターは(グリーン)インフラ、都市生態系で、地域はモルドバです。自然対策としては、水の貯留区域と河岸緩衝帯の整備が挙げられ、具体的には7.6キロメートルの河川チャネルの部分的な再形成と、排水ネットワークの再生やフラップバルブの設置といった洪水管理対策の統合が含まれます。ビジネスモデルの駆動要因は極端現象の緩和と水流の調整です。ビジネスモデルのタイプは「リスク低減」で、増大する洪水リスクに伴う約2,100人の直接受益者への被害とコストを減らすものです。より広くは、水質と川の魅力を回復し、都市に住み、働き、訪れる約10万人に、レクリエーション、アメニティ、持続可能なモビリティの選択肢を提供し、健康と福祉にポジティブな影響を与えます。プロジェクトには、約90のレインガーデンと85のツリーピットを都市環境に設置する計画も含まれています。副次的便益は主に水質の改善で、最近の鉄砲水イベントへの対応として、影響を受ける地域の土地価格を上げる可能性もあると見込まれています。

 金融商品は、シニア債務と助成金を通じたブレンデッドファイナンス(ローン)です。このプロジェクトは、EBRDとEIBが均等な割合で提供する、Chisinau市へのローンです。ローンはGreen Climate Fundからの助成金によって支えられています。チケットサイズは2,000万ユーロで、テナーは10年超です。国際金融機関(IFI)主導の資金供給であるため、その条件は市場で通常得られるものではない場合があり、商業金融を締め出さないように設計されています。財務リスクについては、GCFの助成金を活用したブレンデッドファイナンスの構造が、投資のリスク・リターンのプロファイルを改善する助けとなります。革新的なプロジェクトのコンセプトに伴う実施リスクを減らすために、追加の能力構築も提供されます。EBRDは関与する主要なカウンターパーティと長年の関係を持っており、これが潜在的なリスクに対するポジティブな全体見通しを支えています。インパクト評価の指標としては、都市部については10年に一度から20年に一度へ、Bic川全体についてはより広く15年に一度へと洪水を減らすことが意図されており、プロジェクトから便益を受ける直接・間接の総人口のモニタリングも挙げられています。利益の分配について、プロジェクトファイナンスローンの返済はプロジェクト自体にではなく、市の全体予算に結びついています。借り手である市は、税収と都市の経済成長へのレジリエンスの向上から便益を得ます。市はまた、嵐や洪水の修復を担う公営企業への予算配分を減らすこともできます。これにより、借り手である市のリスクプロファイルと、銀行にとっての全体的なリスク・リターンの期待が改善されます。実施には3年超かかると見込まれています。

 複製可能性については、改変された河川システムを持つ地域で、既存の自然水システムの潜在的なレジリエンスを活用し、再形成と自然ベースの解決策の統合によって鉄砲水の影響を減らすことで、同様のプロジェクトが可能だとされます。このプロジェクトは、自治体を受益者とする将来の同様のプロジェクトファイナンスローンの成功モデルを示す、グリーン・ブルーインフラのパイロット事例です。その構造は、並行ローン構造のなかで商業銀行を共同資金提供者として巻き込むことで、民間金融の役割を拡大するように強化できます。プロジェクトはまた、国際金融機関(IFI)が記録上の貸し手となり、B貸し手がサブ参加するA/Bローンとして組成することもできます。これによりB貸し手は、自ら組成・ストラクチャリング・モニタリングを行わなくても、こうしたネイチャーポジティブなプロジェクトの組成に関するIFIの経験を活用できます。あるいは、保険のカウンターパーティが、ローンのマージンの一部と引き換えにリスクエクスポージャーの一部を引き受ける、アンファンデッド・リスク・パーティシペーション(URP)やノンペイメント保険(NPI)を結ぶこともできます。

10. Caisse des Dépôts Branche de Croix運河再自然化ローン——公的資金が「呼び水」になる

 十番目は、Caisse des Dépôtsのグループ(banque des territoires)によるBranche de Croix運河再自然化ローンです。リール欧州都市圏(MEL)は、その「Plan Bleu Métropolitain(大都市圏ブルー計画)」を採択し、Branche de Croix運河の野心的な再自然化と、運河や河川を回復する政策に着手しました。プロジェクトは、大都市圏のグリーン・ブルーネットワークにおける重要なつながりであるCroix運河を再自然化するもので、人工構造物を取り除いて自然な流れを回復し、古いドックを取り壊し、河床を再び開き、堆積物を浚渫し、岸を再形成し、公共のグリーンスペースを創出します。La Banque des Territoires(Groupe Caisse des Dépôtsの公的銀行部門)は、都市に自然を回復し、土地の充足性を促進し、地域のレジリエンスを確保するために取り組んでいます。

 対象セクターは都市生態系(水理および景観の復元)で、地域はフランスです。自然対策としては、レガシー堆積物の除去——川の自然な状態を人工的に変えてきたさまざまな構造物の撤去——が挙げられ、より具体的には、古い構造物の撤去、Dragon港の再自然化、川の再開放、岸の清掃と景観整備が含まれます。ビジネスモデルの駆動要因は水流の調整です。ビジネスモデルのタイプは「リスク低減」で、資金供給された工事が洪水との闘いを支えるものです。副次的便益は、水、水流の調整、存在価値、遺贈価値、ライフサイクルの維持、レクリエーションや観光の機会です。

 金融商品はインパクトローンです。これはグリーン復興計画の一環としてのローンで、プロジェクトの半分の資金を賄います。地方自治体へのローンであり、プロジェクトのリスクを下げ、保証を提供するものです。チケットサイズは、税引前で総額2,110万ユーロのうち800万ユーロのローンです。金利はLivret A金利(2024年1月1日から3%)にプラス0.60%、期間は25年です。財務リスクについては、公的銀行が一般利益のプロジェクトに資金を供給するため、投資収益はかなり低いとされます。インパクト評価の指標としては、現在その場所に訪問者がいること(河岸を散策する地域住民や観光客)、そして多くの鳥がこれらの自然区域に飛来していることが挙げられています。キャッシュフローについては、公的な地方自治体による公的プロジェクトであるため、ビジネスに関するものではないとされます。

 複製可能性については、他のあらゆる公的銀行によって複製可能です。イネーブリング環境としては、EU水指令とEU生息地指令が挙げられ、グリーンシフトのプロジェクトへの資金供給はbanque des territoiresの中核事業のなかにあるとされます。報告書は、この公的ローンが、投資収益なしにこうしたプロジェクトに資金を供給するために必要だと位置づけています。これは共通善のための公的プロジェクトです。ローンは民間投資家にとっての保証の役割を果たしうるものですが、ここではすべてが公的なアクター(地方自治体自身と政府)によって支払われました。都市(複数の市の集合体)は25年で返済することになります。重要なのは、たとえ完全に公的な資金であっても、それが民間投資家にとっての一種の保証として機能しうるという点です。達成された開発の強い商業的ポテンシャルが投資収益を駆動するため、民間投資家を巻き込んで複製されうるとされているのです。


10の事例から浮かび上がる7つのトレンド

 ここまで見てきた10の実践は、それぞれ異なるセクター、地域、金融商品を扱っていますが、報告書は、これらの事例と金融機関との議論を横断して、共通する7つのトレンドを抽出しています。

 第一のトレンドは、金融商品の多様化の進展です。グリーンボンド、ブレンデッドファイナンス、サステナビリティ・リンク・ローン、自然資産の収益化など、より幅広い金融ツールが、プロジェクトのタイプに応じたオーダーメイドの資金供給を可能にすることで、自然を投資可能なものにしています。これはまた、異なるリスク・リターンの選好を持つより幅広い投資家層を引き付け、リスクを減らし、セクターや地域を横断する規模拡大可能な投資を支えます。

 第二は、リスクを減らすためのブレンデッドファイナンスです。ブレンデッドファイナンスの構造は、自然関連プロジェクトのリスク・リターンのプロファイルを改善するために用いられます。公的資金や助成金がしばしば譲許的な資金や保証を提供することで、グリーンインフラや建築環境のような複雑な投資を、民間投資家が資金構造に参加するうえでより魅力的で実現可能なものにします。

 第三は、グリーンボンドとサステナビリティ認証です。自然への投資は、林業におけるFSCのようなサステナビリティ認証や、グリーンボンドとますます結びつくようになっています。これらは、報告されるインパクトの信頼性を高める、明確で監査可能な指標を提供し、民間投資家にとって重要な要因となります。

 第四は、長期の投資ホライズンです。林業や再生型農業のような自然投資は、ときに25年以上に及ぶ長期のホライズンを必要とします。この延長された時間軸は、着実な生態系の再生を支えると同時に、安定的で複利的なリターンと、環境・市場リスクに対するより大きなレジリエンスを可能にします。

 第五は、パフォーマンスベースの資金供給です。プロジェクトは、生物多様性の指標、炭素隔離、水と土壌の品質の改善といった測定可能な環境KPIに、財務リターンをますます結びつけるようになっています。このアプローチは説明責任を強化しますが、生物多様性の指標はまだ初期段階にあり、特定の生態系の便益を完全に定量化することを難しくしています。これらの指標の継続的な開発と洗練が、将来の資金供給モデルでその潜在力を引き出すために不可欠だとされます。

 第六は、副次的便益を持つツールとしての炭素クレジットとネイチャークレジットです。EUネイチャークレジット・ロードマップに沿って、自然の損失と気候変動に対処する革新的な自主的手段をパイロットする傾向が高まっています。ネイチャークレジットと炭素クレジットは、ネイチャークレジットがしばしば炭素の要素を含むため重なり合うことがありますが、異なる戦略的な目的を持っています。ネイチャークレジットは、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)と整合する企業にとって特に重要で、EU水レジリエンス戦略で強調されているような、水のレジリエンスや洪水制御の改善といった副次的便益を提供します。一方、炭素クレジットは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のフレームワークにより適しています。これらの異なる役割を認識することが、それぞれがより広い環境・財務の目標にどう貢献できるかを明らかにする助けとなります。

 第七は、気候レジリエンスのための自然を活用した解決策(NbS)です。水路の復元や能動的な森林管理といったNbSは、洪水、干ばつ、浸食といった気候関連のリスクを管理し、森林火災を防ぐためにますます用いられています。これらのプロジェクトは、目に見える経済的・社会的な副次的便益をもたらしながら、生態系のレジリエンスを強化します。

 報告書は、10の実践に基づいて、異なるセクターと生態系が、特定の金融商品に合わせた投資機会を提供することを示しています。ここでは、その内容を6つのセクターごとに見ていきます。

 建築環境・都市生態系では、適した金融商品はインパクトローンと公的プロジェクトファイナンスです。適した投資家は、公的銀行、開発銀行、自治体当局、機関投資家です。収益は、土地価格の上昇、洪水管理のための市の予算削減、長期的な税収のレジリエンスから生まれます。

 (グリーン)インフラでは、適した金融商品はブレンデッドファイナンス、ローンと助成金、サステナビリティ・リンク・ローンです。適した投資家は、開発銀行、インパクト投資家、自治体組織、フィランソロピーの資金提供者です。収益は、回避された被害コスト(洪水の低減など)、インフラ効率の改善、そして観光や土地価格といった間接的な便益から生まれます。

 水道事業では、適した金融商品はブレンデッドファイナンス、シニア債務と助成金です。適した投資家は、開発金融機関、自治体の資金提供パートナー、社会的インパクトファンドです。収益は、洪水予防の節約、保険負債の低減、サービス提供の強化から生まれます。

 (再生型)農業・食料では、適した金融商品は、プライベートエクイティ、サステナビリティ・リンク・ローン、資金フローのスタッキングです。適した投資家は、機関投資家、ファミリーオフィス、インパクト投資家、開発銀行です。収益は、ローン量や利用の増加による全体的な金利収入、エグジット時の資本利得、持続可能な財への割増価格、投入コストの低減、ローン金利の割引、そして長期的な土地の価値上昇から生まれます。

 林業では、適した金融商品はグリーンボンドと自然資本資産です。適した投資家は、機関投資家と個人投資家、アセットマネージャー、ESGファンド、ファミリーオフィスです。収益は、グリーンボンドの発行を通じた時間をかけたリターン、木材および非木材製品の販売、炭素・生物多様性クレジットやPES、そして所有者への配当としての営業純利益の分配から生まれます。

 自然保全では、適した金融商品はインパクトローン、ブレンデッドファイナンス、助成金です。適した投資家は、インパクト投資家、金融部門を持つNGO、公的銀行、多国間機関です。収益は、生態系サービスの収益化、生物多様性に連動したリターン、そして農業や水道事業のための副次的便益(補助金、割増価格、回避コストなど)から生まれます。

 このように整理すると、同じ「ネイチャーファイナンス」という言葉のもとでも、セクターごとに向く金融商品、向く投資家、そして収益の源泉が大きく異なることが分かります。報告書がセクター横断で事例を集めた意義は、まさにこの「適材適所」の地図を描き出した点にあるといえます。 


自然への資金動員を支える4つのメッセージ

 最後に、報告書が全体を通じて導き出す4つの結論を確認します。

 第一に、自然への資金動員には幅広い協働が必要だということです。集団的な行動が、民間・公的の金融機関だけでなく、他の主要なステークホルダーからも求められます。企業は、回復された地域から生産された財を購入することで収益創出を支える、極めて重要な役割を果たします(バリューチェーンの協働)。一方、都市は、復元の取り組みによって可能になる洪水制御のような生態系サービスに資金を供給する好位置にあります(場所に根ざした協働)。複数の便益と生態系サービスを提供するという自然の独自の能力を活用することは、収益を生み、持続可能な開発を駆動し、レジリエントな経済を生み出すことができます。

 第二に、生物多様性を伴う財務リターンです。ポジティブな生物多様性への貢献は、自然による害虫制御、気候の調整、そして洪水や森林火災といった欧州における重大な気候関連の自然リスクからの保護を通じて、リスク低減をもたらすことができます。それらはまた、生態系サービス——とりわけ洪水制御や水の貯留といった水に関連するもの——を回復することで価値創造を可能にし、製品の品質を高め、市場価値を上げ、長期的なリターンを支えることができます。

 第三に、パフォーマンスとインパクトの証明の必要性です。明確なKPI、堅牢なタクソノミー、信頼できる認証基準は、自然への投資を拡大するための重要なイネーブラーの一つです。KPIは適応的であり続けなければなりません。進化する研究と、とりわけアーリーステージのベンチャーにおける移り変わるビジネスモデルが、パフォーマンスの測り方を時間とともに再定義しうるからです。同様に重要なのが、自然KPIの生成を拡大しコストを下げる技術(衛星モニタリング、ドローン、IoT、AIなど)を開発し、インパクト測定の正確性、効率性、アクセス可能性を改善することです。

 第四に、金融イノベーションとイネーブリング政策です。有利な資金供給の条件は、自然への投資を拡大するためのもう一つの重要なイネーブラーです。例として、NbSの長期的なリターンを支える忍耐強い資本、再生型農家に報いる金融的なインセンティブ、そして拡大されたブレンデッドファイナンスのファンドが挙げられます。そして、欧州で自然への投資を拡大するには、イネーブリングな政策、調和されたフレームワーク、そして明確な生物多様性基準を持つ堅牢なタクソノミーが必要です。生物多様性ネットゲイン(BNG)のような革新的なスキームは、生態的な成果を計画に組み込み、民間資本を動員する助けとなります。EU自然再生規則は、生物多様性を気候や土地の目標と結びつける測定可能なフレームワークを提供し、EUタクソノミーは信頼できる投資戦略を導く助けとなります。EUタクソノミーの6つの環境目的の一つが生物多様性であるとはいえ、技術的なスクリーニング基準がまだ開発途上であるため、実務的なガイダンスは限られたままです。最後に、新たに登場しつつあるネイチャークレジットのスキームは、生物多様性、気候、水のレジリエンスについて検証された成果を提供することを目指していますが、信頼を築きEUの復元目標に意味あるかたちで貢献するためには、生態的な完全性、永続性、包摂的なガバナンス、そして意義を確保しなければならないとされています。

 この報告書を通読して印象に残るのは、ネイチャーファイナンスが、もはや概念実証の段階を超えて、具体的な金融商品とリスク・リターンの構造として動き始めているという事実です。農地ファンド、上場株式ファンド、継続被覆林業の実物資産ファンド、林業グリーンボンド、ブレンデッドファイナンスを伴う自然洪水管理、資金フローのスタッキング、アグリフードへのプライベートエクイティ、森林自然資本の多様な収益源、開発銀行による自然ベースの統合、そして公的インパクトローン。これら10の実践は、それぞれ異なる資産クラスを通じて、「自然に投資する」という言葉に具体的な中身を与えています。


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