アトランティス奇譚 最果ての星の物語 第十二話
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♢キメラ♢
トトの言葉に海王星は頷いて言葉を続ける。
「そうですね。私の計画をお話しする前に、キメラについていくつかお聞かせください」
海王星の質問に、アメミットは忌々しげに舌打ちする。
「まず一つ目です。彼らを生み出した目的は」
トトも、回答を促すようにアメミットを見つめるが、彼は下を向いたまま動かない。
「お答えいただけないのであれば協力は致しません」
海王星はアメミットを睨み付ける。
「キメラにつきましては、大気圏外に到達したのち、彼らのほとんどが命を落とすでしょうが、なんとしても星にお連れください」
「もとよりそのつもりだ」
アメミットは下を向いたまま吐き捨てる。
「結論が出たようですね。話は終了です。私はこれで失礼致します。お早めに母星にお引き取りください」
海王星が軽く一礼するのを見て、マアトが少し慌てた様子になる。
「そちらの案は?話さず戻るおつもりか」
海王星は冷たく一瞥する。
「こちらの計画は、キメラの処遇が全ての鍵です。彼らについての情報を出すおつもりがないのであれば、このまま全員お引き取りください」
海王星の強い返しに、マアトはどすんと椅子に座り込み、頭を抱えていたが、うめくように言葉を搾り出す。
「軍事利用を想定していた」
アメミットが弾かれたように顔を上げ、マアトを睨みつけたものの、海王星と目が合うと、ここで話を遮れば本当に手を引かれると察したようで、不貞腐れた顔でぷいと横を向く。
海王星はマアトと再び視線を合わせると静かに頷き、続きを促した。
「今後の戦争において、キメラたちによる攻撃を想定した。分神(われら)の思い通りに動く便利で攻撃性の高い生き物をストックできればという意向で実験を行った」
「それはどなたのご意向ですか?」
海王星の真正面からの問いに、マアトは言葉を詰まらせる。流石に黙り込むマアトに海王星は笑顔を向ける。
「まあ、そこは今重要ではありませんので、依頼主についてはお聞かせいただかなくとも結構です。話を進めましょう。」
明らかにほっとした様子のマアトを見遣りながら海王星は静かに思考する。
シリウスの動向は多くの星から監視されているはずだ。軍事目的の開発であることも想定されているだろう。とすればシリウス側も今回の大失敗は他星に知られたくないだろう。
シリウスに恩を売りながらこの星を守り育てるための最善を見つけなければならない。それに、シリウスがここから完全に撤退したと伝われば、この星はまたすぐに、新たな脅威に狙われるだろう。
手持ちのカードは多くはない。全てを効果的に使わなければ。
海王星は慎重に話を続ける。
「マアト様、この星には『死』というものが存在することをご存知ですか?」
突然の問いに、マアトは不快そうに眉を顰める。こんな辺境の星人に無知を指摘されるのは気分が悪い。
「死、ですか?それはどんな状態を指す言葉なのでしょう」
質問を発したのはトトだった。
その素直で柔軟な様子に、海王星は新たに一つの案を思いつく。
「はい、この星の生き物には死があります。死が訪れた生き物たちは、器を保てなくなります。死んだものたちは徐々に腐り、分解され、土に帰ります」
トトは海王星の説明を飲み込めていない様子をしているが、海王星は構わず続ける。
本題はここからだ。
「そしておそらく、地上に降りた分御霊(わけみたま)の皆様は、滞在期間の長さから想定いたしますに、もはや器を得られたのではないかと」
トトは不審げに問い返す。
「分御霊たちが、器を得たと?」
「はい。この星の器あるものたちと混合されたキメラはもちろんですが、長時間重力にさらされていた分御霊の皆様たちも、おそらく徐々に器が形成されているのではないかと」
海王星の言葉をようやく理解したトトがはっきりと青ざめる。
「ということは、もしや、地上に降りている分御霊たちは、もはや全員連れ帰ることができない、とおっしゃられるのですか?」
海王星は重々しく頷く。
「おそらくですが、私はそう予測しております。ご不審でありますれば、また再び調査船を飛ばして確認されますか?」
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