アトランティス奇譚 最果ての星の物語 第七話
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♢シリウス星からの来訪者♢
海王星は太陽系の最も外側に位置しており、自らの軌道を通り抜けるものは全て認知が可能になっている。
ゆえに、外宇宙から三番目の星を目指す宙船たちは、もれなく彼の監視下に置かれていた。
とはいえ、ここは宇宙の最果ての地であり、成立初期の頃は、目的地を見失って迷い込んだ船の方が圧倒的に多かった。
しかし、太陽系の成熟とともに、三番目の星を目指した外宇宙からの船が、次々と飛来するようになっていた。
海王星の軌道を超えた宙船は、太陽の方角へと、まっすぐに船を進めてゆく。
そして、ゆったりと巡りめぐる小さな青い星が太陽を背にしてその縁を白く輝かせているのを見つけると、心の底から感嘆する。
そのまま徐々に船が近づけば、零れ落ちそうなほどの青に満たされて照りつける太陽の光に艶やかに輝くその姿は「世にも稀な命ある物質の星」として、見るもの全てを魅了した。
そしていつしか外宇宙の知恵あるものたちの間で、太陽系の三番目の星は「アトランティス」と呼ばれるようになっていた。
彼らの言語で「青い水の星」という意味である。
青い水の星アトランティスは、美しいだけではなく、宇宙全体から見てもあまりにも特異な性質を持つ星であり、その貴重さから独自に研究しようとする者が出て来るのも無理からぬことであった。
アトランティスを研究するために船を派遣してきた幾つかの文明の中で、特に繰り返し宙船を送り込んできたのがシリウスだった。
高度な文明を持つシリウスは、アトランティスに対して異様なまでの興味を示していた。
そして幾度目かの挑戦において、ついにシリウスは、念願のアトランティスに到達することができたのだった。
シリウス星から多くの研究者たちがアトランティスに降りた当初から、海王星は彼らの行動を注意深く観察していた。
アトランティスは確かにとても美しく魅力的な星ではある。
しかしながら、外宇宙の住人にしてみれば、それは得体の知れない未知の星であり、唐突にそこに降り立つという蛮勇に半ば呆れつつ、一方で感心もしていた。
そして、蓋を開けてみれば、シリウスは丸腰の無防備なままアトランティスに乗り込んだわけではなかった。
彼らはまず、地上に降りることなく、地球の大気のなかを空船で移動することから始めた。
船で浮遊しながらサンプルを集め、長い時間をかけ安全を確認した上で、ようやく海の上に船を下ろした。
彼らが時間をかけてアトランティスを研究している間、海王星もまた同じだけの時をかけて彼らを観察していた。
事前の情報として、シリウス星人の特徴は、変化を好み挑戦を厭わないことだと聞いていた。
それゆえ彼らが地上の生き物たちと細胞を合わせて自らキメラ化してゆくことも、見ていて気分のいいものではないにしろ、仕方のないこととして受け入れていた。
事情が変わったのは、シリウスがこの地に降り立った日から、一万年という途方もない時間が過ぎた頃だった。
突然判明した事実に、シリウス星人たちは大騒ぎになっていた。宙船を動かすためのエネルギーが補充できなくなったというのだ。
もちろんシリウス星人たちも、他星で暮らす場合にエネルギーの確保は最重要課題だとわかっていた。
ゆえに、到達当初から今に至るまでの間、エネルギーについてはかなりしっかりと継続した研究が行われていた。
初期の頃はシリウスの方法をもってエネルギーの生成を行うことはまだ可能だったのだ。もちろん母星にいた頃とは比べ物にならない小さなエネルギーではあったが、なんとか細々と継続した生成が行えていた。
しかし、海の上に降りてからというもの、シリウスの設備に使うエネルギーの生成効率は格段に落ちてしまった。
それでも、他の研究は順調過ぎるほど順調に進んでおり、とりわけ地上の生き物とのキメラ化はあまりにも簡単に実現したゆえに、エネルギー生成の値もそのうち回復するだろう、と、誰もが高を括っていたらしい。
それが突然に、もはや星に帰れるかどうかのエネルギー量しか残っていないと判明したことで、流石の彼らも慌てはじめていた。
それでも彼らは、なんとか冷静を保ちながら、可能な限り早く母星へと帰還するための計画を立て始めていた。
エネルギーの研究者たちによれば、帰還の際に最も負荷がかかるのは、この星の大気圏を抜ける瞬間だということはわかっていた。
しかしながら、どうしてそこまで負荷がかかるのかは、シリウスの研究設備をもってしてもわからなかった。
理由か判明したのは帰還前日、先遣隊の船が外宇宙を目指し飛び立った時だった。船に乗った乗務員の数人が、大気圏が近づくにつれて泡を吹いて苦しみ始めたのだ。
慌てて地上に戻った船から意識を失った乗務員たちが次々と運び出され、その光景を見たシリウス星人たちは本格的なパニックに陥ってしまった。
その後判明したことによれば、苦しみ出した乗務員たちは全員がキメラであり、地上の生き物との混合率が多ければ多いほど症状が重いという事実だった。
再びのパニックを避けるために秘密裏に実施された再調査でも、やはり同じようにキメラの乗務員たちはもれなく体調を崩してしまった。
これは、シリウス星人たちにとって、あまりにも衝撃的な出来事だった。
この結果を鑑みるに、この地の生物たちは、外宇宙に出ることができない組成で出来ている。
そして、その生き物たちと自らを混ぜ合わせてしまったキメラたちは、もはや外宇宙に出ることができなくなってしまった。
ということは、彼らはもはや、母星に戻ることができないのだ。
シリウスの研究者たちは、あまりに無慈悲な結論を目の前に、呆然と立ち尽くすしかなかった。
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なんという長い地の文!!
読んでくださっている皆様が飽きてらっしゃらないことを願いつつ。。
ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。
「アトランティス奇譚」は2020年にnoteに発表した「アトランティス崩壊前夜」という物語を大幅に加筆・修正したうえで、2026年note創作大賞に応募しております。
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