アトランティス奇譚 最果ての星の物語 第八話
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♢海王星と夢のかけらたち♢
パニックに陥った異星人たちに救いの手を差し伸べたのは、この星の守護者、海王星だった。
海王星は分御霊たちの無意識領域に手をかけると、ひと息にこじ開けて中を覗き込む。
絶望で歪んだ彼らの無意識は、ひどく濁ってしまっていた。
海王星は一旦彼らの無意識から手を離すと、己が手のひらに、この星の生き物たちの紡ぐ夢を集め始める。
豊かな海、緑の丘、そこに住まうすべての生き物たちは、常に幸せな夢を見ていた。そして彼らはいくつもの夢のかけらを分けてくれた。
きらきらと降り積もる夢のかけらは、彼の手のひらを溢れるほどに集まってゆく。
その美しい景色に、海王星は嬉しそうに微笑んだ。
「美しいこの星の子どもたち、なんて優しい子達だろう。こんなにもたくさんの夢のかけらを分けてくれるなんて。素晴らしき我の夢見達よ」
海王星はうっとりと一人呟いた。
そして集まった夢のかけらを両掌で包みこむと、濁った分御霊の無意識に向けてそっと開放した。
暗く淀んだ闇の中に放たれた夢のかけらは、ゆっくりと彼らの無意識へと広がってゆく。
この地上に生きる優しく美しい生き物たちの夢の光に、分御霊たちの深い絶望は癒され、きらきらと溶けて消えていった。
彼らの無意識領域から絶望が減るにつれて、泣き叫んでいた分御霊たちはみるみる安らかな表情へと変わり、静かに目を閉じてゆく。
海王星は彼らの穏やかな眠りを確認すると深いため息をついた。
彼らはあまりにも哀れだった。訳もわからぬままに形を変えられて、もはや母星に帰ることすらできなくなってしまった。
なんと哀れで、なんと悲しい、遠い星からの訪問者たち。
潮時だな。
海王星は一人つぶやく。
愛しい第三惑星に厄介な混ぜ物を作りあげ、挙げ句の果てに置き去りにしようとするシリウスに対し、海王星は心の底からの憤りを感じていた。
海王星は空を見上げる。その遥か先、宇宙との境目にはシリウスの船がある。責任は果たしてもらわねばなるまい。
なにより、自らの分御霊たちがこんなに苦しんでいるにもかかわらず、彼らは安全な場所に留まり続け、地上へ姿を現すこともない。
そろそろ彼らにも届く頃だろう。
さて。彼らの船に伺うとしようか。
そう呟くと、海王星の姿は端から光る粒子となり、吹き抜ける風にゆらりと消えていった。
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