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アトランティス奇譚 最果ての星の物語 第六話


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♢海王星と太陽♢

時は悠久のかなた、宇宙の創世に遡る。

海王星は、長く長く飽いていた。
もはや永遠と呼べるほどに宙を漂い、収束と拡散を繰り返してきたが、それでも何一つ変わることなくそこにあるのはただ永遠の今だけだった。

そしていつしか海王星は、自分はこの広い宇宙の片隅で、跡形もなく塵と成す日が来るのを待つばかりの存在なのだろう、と思うようになっていた。

微睡と覚醒を繰り返しながら広大な宇宙を漂っていた海王星は、いつしか宇宙の中心を遠く離れ、天の川銀河を超えて、最果てといわれる辺境の地に到達していた。

全ての源であるグレートセントラルサンの光をもってしても、この辺境までは届かない。
一体宇宙とはどこまで広がっているものなのかと、海王星は一人思案する。

暗い空をゆっくりとたゆたいながら再び微睡に落ちかけた海王星であったが、ふと袖を引かれたような気がして目を開ける。

そこにはまだ幼く小さな太陽が、一人きり、じっとこちらを見つめていた。

こんな最果ての辺境に新しい太陽が生まれていたのか。海王星は内心大いに感嘆する。

生まれたての太陽をこんなに近くで見るのは初めてで、海王星はつい無防備にその手を伸ばしてしまった。

こちらを見つめていた太陽はその機を逃さない。ふわりと大きくフレアを開き、海王星を捉えると、あっという間に彼の磁場に絡め取ってしまった。

太陽という星は自らの周囲に強力な磁場を持ち、絡め取ると決めたものは絶対に逃さない。どんなに幼くとも彼は「太陽」であった。彼が持つ強力な磁力は、宇宙空間を当てもなく漂う惑星のかけらたちをして、抗えるようなしろものではなかった。

その後も太陽は狙った星のかけらを確実に捉えては、彼の家である太陽系のなかに適宜配置し、ゆっくりと育てていった。


海王星にとって、太陽に絡め取られたことは意外なアクシデントであったものの、決して不快な出来事ではなかった。

ひたすらに漂い続けた不変の時間に突然大きな変化を得て、海王星は自分の中に新しい夢が生まれて来るのを不思議な気持ちで眺めていた。



そして、太陽系が成立して数億年ののち、太陽から数えて三番目の星で、緩やかでひそかな異変が起こっていた。

その三番目の惑星では、繰り返し起こる大規模な火山の噴火と地表付近に集まった大気の化学反応により水が生まれ、水に冷やされたマグマが固まり大地が出来上がり、固まった大地に雨が降り、徐々に海が生まれ、海には生命が芽吹き始めた。そしていつしか独自の生態系を築き始めていた。

元来、宇宙のほとんどの星はガスと塵でできている。海王星とて例外ではない。そこに生命の育まれる余地はないと言っていい。

しかし三番目のあの星は、いつしか大地と水、そこに付随する自然という名の「いのちある物質」が生み出されていた。

それは長く宇宙空間を漂ってきた海王星をもってしても、初めて見る景色であった。

地表は豊かな水に覆われ、大地には草が生え花が咲く。花の周りには蜜を求めて小さな昆虫たちが飛び回る。

そんな星は、広い宇宙を見渡してもどこにもなかった。

何より重要だったのが「水」の存在である。

地球の地表のほとんどを覆っている水と同じ成分は海王星にも多く存在している。しかし大切なのは地表にとどまり一定のリズムで満ち引きを繰り返すことであり、動き続ける水は大地の形を変え、雨を降らせ、惑星全体に生命の流れを作り上げた。

海王星は、日々見守り観察すべき対象を見出し、その変化の全てを愛していた。あのつまらない、繰り返す永遠の日々を思えば、日々移り変わるいのちの景色はまるで鮮やかな夢のようで、今や彼は自らを絡め取り太陽系の守護者とした太陽に、心から感謝していた。

そうして海王星が自らの夢を育み出した頃、彼の愛してやまない太陽系には、外宇宙からの探索船が、ひとつ、またひとつと、「三番目の星」を目指して訪れるようになっていた。

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