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【連載小説】ファインディング・ユー!!第二話

『今は昔、遙かはるか昔のこと。
海だけの小さな星に楽園が欲しいと女神カトナーレは願いました。
すると、轟くような音と共に海が爆発し、海水が割れ、火山と大陸が現れたのです!喜んだ女神は森と動物と人間と、火山の守り神としてドラゴンを産み出しました。しかし、ドラゴンはとてもやんちゃな性格。何度も火山を噴火させてしまう暴れん坊。医療の神や水の神を大地に住まわせても沢山の命がドラゴンのマグマ遊びで死んでしまいました。怒ったカトナーレは…』

…はっ、あぁ、馬車が心地よくて眠っていた。
お陰で昔読んだ絵本の夢を見ていたようだ…。
おや、どうやら到着したようだな。さて、外に出るとしよう。

…さぁ着いたぞ! きのこの森!!
また黒馬車に銀貨二枚費やしてしまったけれど!

ここはいつもジメジメと湿気が多いため、大木の代わりにカラフルな巨大きのこが生えている地域だ。ふわふわと薄黄緑色に光って宙を漂う胞子虫がなんとも幻想的! ここでしか見られない絶景とはまさにここのことだ!

いや、今回は遊びに来た訳じゃない。一刻も早く青年を見つけて彼の住む本来の世界に帰してやらないと!
にしてもこの森は広い。一歩足を踏み入れたら三秒で迷子になることだってある。観光客向けに造られた散歩コースもあるが…、きっと青年はその道通りこの森を歩いてなんかいないだろう。
一体何が目的だというのだ! ここにしか無いもの…。そうか! 森の中央にある最古のきのこ! 通称「ワタぼこりの巣」! あそこは神話時代に万病を治す医療の神、ルルーユが住んでいたという伝説がある。羊飼いの少年が言っていた「青年にテレパシーを送る存在」が神の仕業だと仮定すれば、神話の舞台となった場所に行けばいい! なんて天才なんだ私は!
魔法は確かに便利だが、さすがに限界がある。特定の個人にテレパシーを送ることだって普通はできない。だが神話的存在となると話は別!
ソレが青年をこの世界に連れて来た可能性を考えれば、今回彼だけがこの世界に迷い込んできた理由も説明がつくしね!

HAHAHA!何が目的か知らんが、神の都合など私には関係ない!
急いで青年を捕まえ、一枚でも多く硬貨を稼ぐのだ! さぁ行こう、「ワタぼこりの巣」へ!!
えっと…どっちだ? ん?むむ! あのきのこの笠の上に立っているピンクのド派手なドレスに金色の縦ロールの髪の人間は! あれは間違いない、クリスリーヌ!!
奴も青年を追って来たに違いない。もうここまで来ているとは!
はっ、目が合った。ムキーーーッ!! なんですかあの人を馬鹿にした顔は! 
あ!!待ちなさい! あの青年は私が先に目を付けていたのだ! 貴様なんかに譲ってたまるか! 鳩の羽が生えたブーツなんか履いてきのこの上をぴょんぴょんと…小賢しい奴め!!

ふぅふぅ…、流石に走って追いかけるのは愚直。あんな奴より「ワタぼこりの巣」に行けばいんだ。この森の中心にある一番大きなきのこは…。
ほっ、っと。(杖を空に向かって投げると、杖の柄はとある方角を差してジェイリートの手に戻ってくる。)よし、いい子だ。
さぁ、クリスリーヌなんて放っといて目的地へ行こう!

ふふん、鳩のブーツなんぞただ跳躍力が上がるだけで自由自在に空を飛び回ることは不可能。ならば私だって早く移動できるアイテムがあるんだ。(杖の先で革靴を二回叩くと、スケート靴の様な形に変形する。)これでどんな地面でもすいすいーっと行きますよ! 待っていなさい、青年! 杖は到着まで道案内お願いしますよ! GO!(杖はジェイリートの真横に浮き、柄の先で再度方向を示し続ける。)

※※※※

すぃ、すぃーと! はい、到着!さてこれが「ワタぼこりの巣」だ!
なんと巨大な赤いきのこ! 千年生き続けているとあってどっしりとした迫力が凄まじい! 笠の上を見るだけで首がもげてしまいそうだ!
その名の通り胞子虫も大量に住み着いて、全体的にふわふわと常にほのかに光輝くこの神々しさは自然が生み出した芸術他ならない!

いや、いかんいかん。見惚れている場合ではなかった。んんっうっ!青年の姿は…見当たらないな。ここでは無かったというのか? クリスリーヌもまだ到着していない様子。ふん、やっぱり鳩の羽の靴よりこちらの方が優秀ということ!
おや、きのこの下の軸部分、人工的な穴がぽっかり空いているな…。ややっ!中は机一つとその上に薬瓶がズラリ! これは薬屋か!こんな所に!

HI、こんにちは。おや、店主は栗色のリスさんですか。いや、ふわふわと可愛らしい。
私、人を探しておりましてこの手配書の青年なんだけれどね。こちらに…何!? たった今来ていたと!? 姿は確認出来ていない、綺麗にすれ違ったというのか…? なんてことだ! 何? 彼は頭の中の声が滝に行けと騒ぐと言っていた? 羊飼いの少年と証言が一致しているぞ!
なるほど。ありがとう、薬屋のリスの店主! …え、何? 店に来たからには何か買えと? あー…生憎私、とっても健康な体を持っていてね。薬は…わ、分かった分かった!!! 買う! 買わせて頂きます!! だからどんぐりを次から次へと投げないでおくれ!! 痛いっ!

え、えーと、、こ、この! この一番人気とやらの薬を頂くよ!薬に一番人気とかあるのがよく分からないけどね! ほう、この「ワタぼこりの巣」の笠の部分一欠片と、胞子虫の綿と、この森のどこかにルルーユが植えたと言われる神秘の草を一枚煎じた万能長寿薬か。
まぁ、物にも縁というものがある。小瓶一つ分貰っておこう。
お代は…銀貨一枚!? こんな小さじ一杯くらいしか無い量で!? かなり高…いや、なんでもない! 払う、払わせて頂きます! ほらこの通り!! 
では、お邪魔しました!!!

…ふぅ、とんだ災難だ今日は。仕事だというのに硬貨が飛んでいく一方じゃないか。(ワタぼこりの巣から騒がしい声が聞こえる。) …ん? ああ、クリスリーヌがリスの店主と揉めているのか。あいつはケチくさいからな、余程の事が無い限り金を出そうとはしないだろう。
リスの店主にはここで時間を稼いでもらって、急いで青年を追わなければ!
滝…滝といえば有名な場所がある。さて、そちらに向かうとしよう!


※※※※※

やぁ、全く時代だね! 驚いた!
今は観光地と観光地を繋ぐワープゲートなる物を管理する施設があるなんて! たった一歩で目的地!正に魔法と化学のハイブリッド!
…私の懐から銅貨も五枚飛んでしまったけれど。青年もこれをくぐったのだろうか?
そうか、地図を出して青年の場所を見ればいいのか。(杖で二回地面を叩いて大陸の地図を浮かべると、北西の辺りに赤マルが表示される。) あら、どうやら自力でこちらに向かっている様子。
まぁ、いい。私馬車を使わずたった一歩でこの大陸一番の西の大滝、シャナール滝の下に到着だ! 物凄い量の水が毎秒毎瞬落ちることで鳴り響く音は、腹の底から震え上がらせる!常に背骨も小刻みに揺れて、体の感覚が可笑しくなるよ!

さて、そうだな、毎回私が青年を追いかけてばかりなんだ、今回は先回りもしたし私が待ち構える形式を取ってみよう。
神話の舞台といえばなんと言ってもシャナールの滝つぼ! 火山が噴火した時、滝つぼからシャナール神が現れ、滝の水を天に向かって噴射して大雨を降らしたという。
滝つぼの中に入るのはもちろん無理な話だからな、もっと近くに行ってみよう。

…あ、あ、あーーー! 水の音が凄まじくて自分の声すら聞き取りにくい! まいったな、これじゃ青年が近くに来たかどうかを確認するには目視しか無いという訳か。
観光客達は皆崖の階段を登って上に向かっているから、さすがに人が居たら分かる…か…? でも背の高い草木が生い茂っているから影に隠れられたらやっかいだ。
どれ、地図をポーンと表示! おや? 赤丸が滝の所にある! ど、どこだ!?青年はこの近くに居るのか!? 全くもって見当たらない! ええい! この足で探し出すしかない!
わっ! なんだ!? 何かを踏んだぞ!? ぶよぶよとして気持ち悪い! うげっ、靴に何かネバネバしたものが…(ジェイリートが前を見ると、巨大なイボガエルがこちらを睨みつけている。)
ひ、ひぇーーーー!!! 逃げろ! 杖よ!(杖で靴を二回叩いてスケート靴に履き替え、デタラメに走り回る。イボガエルは大きな声で一つ鳴いてジェイリートを追いかけるが、途中で力尽きたのか倒れ込み、そのまま追って来なくなる。)

ふぅ、ヒヤヒヤした。やっぱり人が普段立ち入らないエリアは野生で溢れているものなのだな。…ん? だいぶ滝の真下に来たな…。おや? 滝の裏、洞窟がある。人一人通れる通路もある…。観光客がこんな所来るはずもないから道の整備はされていないが、折角だ、行ってみよう。

(ゴウゴウと水が叩きつける音に耳が麻痺し、体全体に飛沫を浴びながら危なげなくジェイリートは洞窟の中へ入る。) 真っ暗だ。湿った臭いがするが、害は無さそうだな。観光業界が手を加えている様子もない。ここは、なんだ?(杖を逆さに持ち、先端に向かって指パッチンをすると杖は松明のように火を宿す。)

…あぁ、目が慣れてきた。
これは…なんだ? 石で出来た古い祭壇のようなものがある。シャナールを祀っているものか?
壁には…何も書いてないな。いや、もう消えてしまったのか?
なんだ? 祭壇の上、空のコップがある。これは比較的新しいものだな? 誰かが昔お供えでもしていたのか? このまま見過ごすのも気持ち悪い。なぜならこの世界では神は現在、人に見せる姿を失ってもこの世に存在し続けていると言い伝えられているからだ。だから青年のテレパシーの声も神のものと仮説を私が立てられる訳で。

仕方ない、何か備えよう。水の神だから、やはり水か。(洞窟の外へ出て、滝の水をすくって入れて戻る。) よし、これでいいだろう。後は手でも合わせておくか。…我が名はジェイリート。神よ、どうか私にご加護あれ。…よし。うん、いや実にいい事をした気分だ!
これで気持ちよくここから離れて青年を探しに行けるというものだよ!!…うわ!?(突然地面が強く揺れ、ジェイリートは膝をつく。)なんだ、私は神を怒らせたのか!? いや、違う地震か、これは! 外は? (慌てて滝の外へ出る。)

ウワサガラスが群れで空を飛び回っている…。おお、下ばかり向いていたから気が付かなったが、ここはカトナーレ火山がかなり近いのだな。こんなに大きいとは思わなかった…! あれ? 山が振動しているように見えるのは私だけか?もしかして、今の地震…!
待て待て待て、ジェイリート。極端な結論を出すのはよせ。この火山が最後に噴火したのは四百年も前。私が生きている間にそんな事が起きるなんて天文学的な数字ではないか?

んん、そうだ、青年! 青年はどうした?!(地図を出すと、赤丸は火山へ向かっている。) なんてことだ!!!やめろ、私の馬鹿げた妄想が現実であるかのような移動をしないでくれ!

ああ、もう! 仕方ない、万が一の事も考えて滝の水を一杯すくって…!(杖を掌の上で四回叩くとからのボトルが出てきて、川の水を入れる。)

 いくぞ、カトナーレ火山へ!


1話

3話


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