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【連載小説】ファインディング・ユー!第1話

■あらすじ
ジェイリートは魔法のある世界で、何かしらの時空のトラブルに巻き込まれやってきた異世界の人間を保護し、元の世界へ送り返す魔法が使える教会に送り届けるという仕事をしている。
今回迷い込んだのは、にほんと言う国から来たという気の弱そうな青年。いつものように仕事をこなすつもりが、青年は意外とトラブルメーカー!
ジェイリートが目を逸らした隙にこの世界のどこかに飛ばされて…!
魔法の世界を舞台に壮大な迷子探しが始まる!

※※※※※※


やあ! ようこそ魔法の世界へ!

空は澄み渡るように青く、小鳥は高らかに歌い、虫達は自慢の羽を震わせながら独自の音楽を奏で、狼の遠吠えが時折聞こえたりと自然豊かなこの世界。そしてここは一番煉瓦造りの建物が美しく栄えある大都市、メルマロール! 街灯も石畳の地面も何もかも芸術的で目が忙しいだろう?

え、リンゴの匂いがする? ああ、この街の猫はグルメでね、皆毎朝世界一美味しいアップルパイを焼いているからね。この時間はいつも家中から香ばしく甘い香りがするのさ!

それよりまず、青年。君の名前を聞いてもいいかい?
…ふむ、なんとも聞きなれない。というか、発音も難しそうだ。君の口の中はどうなっているのかな? ちょっと見せてくれないか。(ひょろっと背が高く痩せ気味の青年に近づき、左手で口を大きく開けようとするが避けられる。)

おや、失礼。そういえば私の自己紹介がまだだったね。私はジェイリート、君のように別の世界から迷い込んだ人間を保護する仕事をしているよ。この紫のシルクハットと、スーツ、この傘の持ち手の部分のような長い杖がトレードマーク。橙の蝶ネクタイとモノクルも似合っているだろう?覚えておいてくれたまえ!

さて、意味の無い質問をしよう。君はなぜここに来たんだい? 分からない? ほらやっぱり意味がなかった! HAHAHA、じゃあさっさと君を元の世界まで送り届けよう。そう緊張しないで、ほら、朝食用に持っていた私の家の三毛猫が焼くアップルパイでも食べるかい? (杖を降ると紙に包まれたアップルパイが一ピース、青年の手の中に。) マタタビ入りでこれがまた美味いんだよ。さぁ、遠慮せずに!

食べながら聞いてくれ。君が元の世界に帰るにはね、ちょーっと面倒なんだ。まずは役所に行って異世界遭難者登録をして、次にどこの世界から来たのかを調べるために研究所に行かなきゃいけない。
なぁに、その爪の欠片と数センチの髪の毛と、服の繊維で特定できる!

…え? チ…キュウ? に…に、ほんん? そんな事を言われても宇宙は広いんだ分かるわけがないだろう?

特定が出来たら帰還魔法で送り出してくれる教会があるからね。かつて異世界からこの国にやってきたリュール神を崇めている所さ。リュール神は迷い人を元の世界に帰らせた時、すべての者に幸福を授けると言われているから、変な心配はしないでいいさ。

おっと! こっちだよどこに行くんだい? え、そこの店が気になる? 君の世界にある馴染み深い物が窓から見えるから? そこはよりにもよってメィル婆さんの雑貨屋じゃないか! 入るのは良いけれど、店内に飾られている虹色の卵にだけは触れるなよ! あれは泥棒防止にワープ魔法が掛けられていて…あぁ! 話も聞かずに入ってしまった! 今回の迷い人はなんて自由だ! 面白い! 仕方ない私も来店しますかね…。(メィルの雑貨屋の扉を開ける。)うわっ!眩しいっ!急に店全体が光り輝くとは…ハッ!もしや虹色の卵に触ったのか!

「…ということで人を探しています。白と青の…まるで下着のように貧相な服装の異世界人、見ませんでしたか? 」  

即興で作った手配書片手に、私は街を歩きまわる羽目に! なんてこった!!

※※※※※

やぁやぁ! 困った困った!

HEY、そこの麗しい花屋のお嬢さん
少しお話を聞きたいんだがよろしいかい?
おっと、ナンパじゃないよ、だからそのプランターに埋まったマンドラゴラを抜こうとしないで!

人を探しているんだがね、ひょろっとした見た目で、髪は夜色で、服はね…上が白で下が青の…ああ、説明はまどろっこしい! そうか見せればいいのか! いや、私ったらうっかり!この手配書の写真の彼を見て!

こんな人間を探しているのさ、手にはアップルパイを持っているかもしれないけどね!
え、彼の名前? えぇーとー、そのー、なんかこう口がむず痒くなるような奇抜な名前さ! つまり…ヘンテコすぎて覚えていないんだ。でも、この見た目通りの人間さ!

そうか、見てないのか。んー残念。
頭なんて下げなくていいよ! 私が全く見当違いな所を探しているだけかもしれない。
あ、でも、お詫びをしてくれるというなら今度一緒に食事でも……あぁ! 冗談だよ冗談! だからそのマンドラゴラをそれ以上引っ張らないでくれ! じゃあね、お邪魔しました!

…全く、何だったんだあの花屋の娘は。私は紳士になりきって対応したはずなのに!
しかし困った。まるで砂漠の中で砂金を探しているようなものじゃないか。なんで私はこんなことを……ん、本当になぜ私はこんなことを?

確かに私はこの世界に迷い込んだ異世界人の世話をする仕事をしている。誰に頼まれて? 私が一人でやっている。どこの会社にもグループにも所属せずに自らの意思で。つまりは自営業ってことさ!
異世界人は何も知らないが故にこの世界の法則を乱すのが得意。だからとっ捕まえて、市役所、研究所、教会に連れていくと各施設から報酬が貰えるからそれで生計を立てているだけだ。

ということは?

私は別にあいつに執着して探さなくても、また他の異世界人を捕まえて元の世界に返せばいいだけのこと! なんと!私としたことがこんなことにも気が付かないなんて!

ちょっと頭に血が上っていたのかもしれない、すこし冷静に…おっと! こんな所にテイクアウト専門のバードコーヒー屋。
もしもし?ミルク入りを一つ、テイクアウトで頂けないか? (黄色い羽根の鳥がバタバタと飛びながらカップに入ったコーヒーを運んでくる。) んん、ありがとう。芳しい香りとドロリとした感じ、流石家で作るものとは一味ちがうね。ほら、お代の銅貨だ。受け取りな。

時刻はまだ朝。私はまだまだ稼ぐチャンスを持っている!

さて、地図を開こう。(杖で地面を二回叩くと宙にこの世界の地図が浮かびあがる。楕円形に近い形の大きな大陸が地図の七割を占めているようだ。大陸の真ん中には大きなカトナーレ火山が書き込まれている。)
この地図には異世界から迷い込んできた私の金の成る木……んんっ! 困り果てている人や動物が赤い丸となって表示される優れもの!

なになに……? なんてこった! 赤丸はたった一つではないか! いつも一人見つけたら他にも数人迷い人が居るというのに!
ということは、畜生! やっぱりあいつを探さないと今日は銅貨一枚も稼げないということになる!
そしたら同業者のクリスリーヌにまた笑われて……、いや違う! クリスリーヌにあいつを取られる前に探し出さなければ! 笑われる以前にもっともっとバカにされるぞ!

えっと…ここは東の位置、羊飼いの地域!
仕方ない、行くしかないか! 一刻も早く空飛ぶ馬車タクシーを捕まえねば!

※※

着いたぞ、羊飼いの地域!
ああ、タクシーさんお世話になりました(運転手に銀貨二枚渡すと、黒馬が一鳴きして馬車は颯爽と飛び去っていく。)

さあ、どこだ青年!! わあ!!
(だだっ広い草原、沢山の羊がジェイリートを見つけ駆け寄って来る。まるで白い津波のようだ。)
ああもう! メェメェメェメェうるさい!
道を開けろ羊ども! やめろ私を背中に乗せて一斉に走るでない! 目が回るだろ!!

あっ!? あの赤い屋根の小屋の前に居るのは私の探し求めている青年ではないか!
馬車に乗ろうとしている!? おい、お前どこに行くつもりだ私はここだぞ! やめろ、羊!私を反対方向に運ぶな! おい待て、杖はどこだ!?
先頭の羊が咥えているだと!! いつの間に!
やめろ下ろせ杖を返せ! お前は馬車に乗るんじゃなーーーーい!!!!

…はぁ…やっと羊の群れから脱出出来た…。杖も取り返したが涎でベトベトだ。うえっ。(杖を空に向かってワイパーのように振ると、ジェイリートの居るところだけシャワーのように温かい雨が降り、止むと同時にドライヤーのような熱い風が吹き荒れる。)
これで大丈夫、紳士は常に身だしなみを整えていなくてはなりませんからね。

さて、どうしましょう。青年は馬車に乗ってどこかに行ってしまった。あれは白馬の馬車だったからな、空は飛んでいないはず。しかしここで一つ疑問がある。青年は無一文の身、そう易々と馬車になんて乗れないはずなのに何故乗れた? あの赤い屋根小屋で硬貨を手に入れたのか? ふむ…一度尋ねてみよう。

(ジェイリートは赤い屋根の小屋に辿り着くと、扉を三回ノックする。すると、背の小さい羊飼いの少年が中から出てきた。)
やぁ、少年! 私はジェイリート。異世界人保護を仕事にしているよ。先程、ここに白と青の薄っぺらい服を来た夜色の髪の青年がここに来ただろう? 彼はね、私が保護して元の世界へ帰してあげなければならなくてね。いや、そんなに怪訝な顔をしないでくれ! 怪しい者ではないよ、ほら、異世界人保護者証明書をご覧! (胸ポケットから顔写真つき証明カードを撮り出して見せる。)
ちゃんと本物さ、ほら、カードの右下、捏造防止の七色のカラスがちゃんと印刷されているだろう?

お、やっと警戒を解いてくれたか。やれやれ。最近の若者はなかなか心を開いてくれなくて困ってしまうよ…いや、なんでもない! ただの独り言だよ気にしないで!
それで、先程馬車に乗って行った青年だけれど…なるほど、羊の餌やりを手伝ったから報酬に銀貨八枚渡したと…。どこに行くかは聞いたかい? んん? 頭の中に声が聞こえるからその声の主に従う? 青年が確かにそう言ったんだな? そうか…。
誰かがテレパシーを異世界から来た青年に送っている…。しかし、何故? 

おっと、すまない少年。つい考え事をしてしまった。何? ここの羊の毛がどんな熱にも強い高級品であるのを知っているかだって? そんなの常識じゃないか! 大昔、カトナーレ火山が大噴火を興した際、東羊の毛で編んだ防護服が当時の人々をマグマから護ったという伝説があるくらいに!

ん? ここに来たのも何かの縁だからと、この東羊のストールを私に?! まってくれ、これは金貨クラスの超高級品じゃないのか!?  え、先程の羊達と遊んでくれたお礼でもあると…そうか…ふむ…そういうことなら…。
見たまえ、少年! 蝶ネクタイの下にねじねじっと巻いてみたぞ!首回りがなんともボリューミー! 最高じゃないか! そして青年が向かった先まで教えてくれるのか! 
…なるほど、北のきのこの森。確かにそう言ったんだね? ううーん、あそこに一体何が…。おっと!こうしちゃいられない! クリスリーヌに先を越される前に彼を見つけて元の世界に返さなければ!
さらばだ少年! ストールありがとう! また会う日まで!!

https://note.com/neko0629/n/n73370158af3a

三話

四話

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