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Q eND A《キューエンドエー》連載版 Q2(後)

Q2 漫画家、桜井のりおの作品で、三つ子の『みつば』『ふたば』『ひとは』を主人公とするギャグマンガは何?


↑前回↑

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 そこから後のことは、よく覚えていない。だけど、僕が2人の参加者を殺したことだけは、はっきりと覚えている。

【参加者が半数になったため、休憩とします。再開は3時間後です】

 幸か不幸か、そんなタイミングでクイズが一旦終わった。アナウンスが告げたとおり、ラウンド9が終わった時点で、参加者のうち半分が死んでしまっていた。
 開示されている能力も、2つ増えていた。

Answer:クイズの答えがわかる。
BAN:指定した参加者の能力を一定時間無効にする。
Counter:他の参加者がボタンを押す行動を予知し、その前にボタンを押すことができる。
Detective:クイズや能力に関する情報以外を、任意に聞き出すことができる。
Erase:クイズの問題文や選択肢の一部を非表示にできる。
Fifty-Fifty:クイズを2択扱いで回答できる。
Genre:問題の出題ジャンルを変更できる。
Holoscope:ラウンドに1回、参加者のうち一人の能力を知ることができる。
Immortal:指摘によって死なない。
Judge:能力の処理やクイズの詳細なルールについて、正確な情報を得ることができる。
Knight:ラウンド不参加時、参加者一人を選び、死亡しないようにできる。
Loop:死亡したとき、クイズをやり直すことができる。
Medium:死んだ参加者の能力がわかる。
Negotiation:ラウンドへの参加やクイズの得点を、交渉により変更できる。

 僕は、いつの間にか作られていた個室に入り、泥のように眠った。

「いやー。すげえよA。よくあそこまで頑張ったな」
 小学校の教室の隅で、ミラが僕に言った。
「ドッヂ、嫌いじゃなかったの?」
「うん。嫌いだけど、負けたくなかったから」
 僕は体操服袋をランドセルにかける。中にはドッヂボールで最後までボールを避け続けた結果、どろどろになった体操服が雑に詰め込まれている。
 ミラは少し茶色がかった髪をいじりながら、こっそり持ち込んだゲームボーイアドバンスで遊んでいる。
「ミラだって、最後まで応援してくれたじゃん。うちのチームも、みんな飽きてさっさと当たれっていってたのに」
「ムカつくんだよ、がんばってるやつをバカにすんの」
 ミラは昔から良い子だった。ぶっきらぼうな振る舞いで誤解されがちだったが。
「だからさ、今回もがんばれよ。死ぬなよ、A」

 浅い眠りから目が覚める。天井なのかもわからない無機質な白が目に入る。この理不尽なデスゲームのほうが夢だったらよかったのだが。

「起きたか」

 ミラがいた。こちらはピンク髪の本物だ。

「……まだ休憩時間?」
「あと1時間ぐらいある。次はあたしの番かもな。その時は、『テレパス』で助けてくれよ」

 まだクイズが続くことを思うと、かなり気が滅入った。それに、同点の場合延長戦になることもわかった今、ミラといっしょに生還する、ということが本当に可能なのかも、疑わしくなっていた。

「そうだ、そういえば」

 黙り込んでいる僕に気を使ったのか、ミラが慣れない調子で無理やり話題を変えた。
「今までやっててわかったか?Qが『異能力』なのか、技術なのか」
「……それはまだ、わからない」
 そうだ。どっちにしろQを攻略しない限りは、僕らに勝ち目はないのだった。
「だけど、技術でできる、ということはわかった。実際、ラウンド9では須藤さんに教えてたみたいだし」
 話していたほうが気が紛れる。僕はミラの気遣いに乗らせてもらうことにした。

「まず……クイズの問題文の構造にはパターンがある。Qは知識の量もすごいんだろうけど、このパターンを知っているから、あの早押しができるんだ」


7


「さっきの延長戦で……僕らは他の人よりずっと多くのクイズを解けた。だから、パターンがわかった」
 熾烈な延長戦の間、僕らと須藤・桔梗チームは、互いにほぼ最速でクイズに答え続けた。少なくとも僕はそう思っている。その結果、僕はクイズというゲームの性質に……パターンに近づけた。
「あの二人のおかげで気づけたんだな。じゃあ、なんとしてもこのヒントを使って生き残らないと」
「うん」
 神妙な顔をするマイカに、僕は説明を始めようとする。
「まず、問題文には大きく3つのパターンがあって……」

 その時。

「ね、ねえ大変ですよ!」

 マイカが部屋に飛び込んできた。彼女もラウンド9以降ふさぎ込んでいたが、少しは調子を取り戻したのかもしれない。荒い息を鎮めながら、マイカは言葉を絞り出した。

「Qが、全員にクイズの解き方を教えるって……!」

 先ほどまでクイズをしていた会場に行くと、Qが壇上に立っていた。相変わらずの笑顔で、僕たちを含め他の参加者たちを見回している。

「やあ、ごめんね。疲れてるのに」
 僕らが後から来たのに気が付くと、Qはにこやかに手を振った。
「でも、これは全員に聞いておいてほしいんだよね。せっかくクイズをやるんだから」
 12人の参加者たちは、不可解な展開に顔を見合わせている。
「なんかキメーよな!俺たちに解き方を教えて、お前になんのメリットがあんだよ!」
 大声でQに言ったのは、太った男の参加者……確か半蔵モンヂと言ったか。威圧的な言葉も、Qは意に介さず飄々と返す。
「メリット?ないけど。別にボクがこれを教えようと教えまいと、みんなはボクにクイズで勝てないから、関係ないんだよね。しいて言えば、みんながクイズに詳しくなってくれて、ちょっとはいいゲームができたらいいなって!」
「はあぁ?なんだそりゃ!」
「まあとりあえず聞いてよ!メリットといえば君たちには山盛りなわけだし……クイズに勝ちやすくなるし、これをマスターすれば『アンサー』だって見破りやすくなるよ?」
 参加者にざわめきが広がる。
「それとも……キミは『アンサー』だから反対してるってわけ?」
 Qがいたずらっぽく笑うと、半蔵は激しく首を横に振った。
「な、んなわけあるか!変な野郎だな」
 大男が口ごもり、Qは説明をし始める。

「まずね、クイズっていうのは知識を競うゲームなんだ。だから、知識があるほうが有利になるように、いろんなお約束があるんだよね」
 クイズ王というだけあって、説明も慣れているようだった。
「例えば、【日本で一番高い山は何?】これはみんな知ってる。富士山だよね。だから、これで早押しをやっても、知識で差がつかない。でもこうだったらどうかな?【1707年に噴火し、当時は江戸にまで火山灰が降ったとされる火山は?】これだったら、歴史に詳しい人だけがわかって、知識で差が出るよね」
 そうだ。前半が難しく、後半が簡単。僕があのラウンドを切り抜けて見つけたパターンの一つだ。
「だから、問題文はこうやって作られる。【1707年に噴火し、当時は江戸にまで火山灰が降ったとされる火山で、日本で一番高い山は何?】歴史に詳しかったら、前半部分でわかって早押しできる!おめでとう!でも、わからなくても後半まで待てば、みんな知ってるから回答できるね。これがいわゆる、前振り・後振りの形式だ。知っていれば、【1707年に噴火し】ぐらいで答えてもいいかもしれないねえ」

 僕がやっと見つけることができた法則が、わかりやすく解説されていく。

「次に、列挙するタイプの問題。【ウガンダ・マサイ・アミメといえば、なんの動物の名前?】わかる人?」
「……キリンね」
 僕の隣で、背の高いスーツの女性が答える。
「正解!ウガンダとかマサイだけじゃわかんないけど、アミメキリンだったら動物園で見たことある人もいるんじゃないかな?これもさっきの問題と同じで、前ほど難しくて後ほど簡単なんだね。お姉さんなかなか物知りだね」
「……どうも」
 スーツの女性は表情を全く変えない。
「似たような形で、命数問題っていうのもあるね。【日本三景といえば、松島、宮島と何?】っていうような。三景は3つしかないから、最初の2つを聞けばいいんだけど……」

【時間です。ラウンド10を開始します】

 オラクルのアナウンスが響く。また、死のクイズが始まってしまう。

「じゃ、ここから先は、実際にやりながら見せようか」

 Qは屈託のない笑顔でそう言った。


8


「えーっ、ボクじゃないの?せっかくなんだしやらせてよ!」

 子どものように頬を膨らませるQ。ラウンド10は、半蔵モンヂ・平川ホウゾウ組対飯島イサム・宮本ミヤコ組となった。
「ケッ、デスゲームやりたがるとか頭イってんだろ」
「半蔵、口を慎め」
「ッチ……あーッス……」
 半蔵モンヂは先程Qに食って掛かっていた太った男性。サスペンダーが悲鳴をあげるほどの巨漢だ。隣の平川ホウゾウは、初老から老人といった白髪の多い男性で、半蔵と並ぶと余計に小柄に見える。知り合い同士で、平川のほうが立場が上のようだ。
 もう一方のチーム、飯島イサムと宮本ミヤコは、
「Qさん、マジパネっす!これでオッサンどもバチボコっすよ!」
「わたくし、うまくできますかどうか……」
 飯島イサムは派手な格好の青年で、渋谷とかにいそうな雰囲気だ。宮本ミヤコは上品なおばさんといった感じで、こちらも外見は正反対な組み合わせだ。この2人は、以前のラウンドから須藤ヤスミとともにQの周りにいたグループだ。
「ま、飯島さんと宮本さんが解いてくれるから、それをボクが解説するんでもいいかな……クイズやりたかったんだけど」
「まかしてくださいよQさん!ぶっちゃけこれ知ってたら負けねーんで!」
「そうね、せっかく教えていただいたんですから」
 彼らもQからクイズのコツを聞いているようだ。つまり、Qチーム対半蔵・平川ということになる。

 向かい合った席には解答者4人。周囲には僕らを含め9人の参加者がいる。先程まであそこにいたのは僕らで、向かいに座っていた2人はもういない。
「……わかんねえよな」
 僕の隣でミラがつぶやく。
「なんでQは、自分でクイズの解説なんかするんだろ」
「『アンサー』を本気であぶり出そうとしてるんじゃないですかね……」
 Qがクイズで負けるとすれば、相手は『アンサー』しかない(つまり僕だ)。クイズの定石を他の参加者たちの共通認識にすれば、『アンサー』のミスを見つけ出しやすくなる。
「案外、マジでみんなでクイズをやりたいだけだったりしてな」
「そうなんだよ」
「うわっ!?」
 Qが急に割り込んできて、僕らはのけぞった。
「さっきのラウンドでさあ、Aくんたちだけスゴい試合してたじゃん?延長戦もあって2人だけたくさん解いてるし。他の人と実力差があると不公平だと思ってさ」
「……本当にそれだけなのか?」
 僕はQに疑いの目を向けるが、Qは全く意に介さないようだ。
「本当だよ!クイズ王なんだよボク。三度の飯よりクイズが大好きなんだ。まあここにきてからお腹減らないんだけどね」
「それだけにしては、Aさんに絡んでないですか?」
「それは、Aくんが一番クイズがデキそうだからだよ。ライバルってやつ?ラウンド9でポカしかしてなかったキミと違ってね」
「ぐっ……」
 マイカはそれきり何も言い返せなくなってしまった。

【問題。】

「あ、始まっちゃうじゃん。解説してあげないと」

【日本で一番高い山は富士山ですが、に】

 ピコーン!
 押したのは宮本だ。隣では飯島が目を見張っている。

「なぜここで答えがわかるのか?それはこの問題もパターンがあるからなんだねえ。ですがを挟む問題は、パラレル問題といって、必ず前後が対応するようになってるんだ。今回だと対応する可能性があるのは『世界で一番高い山は?』とか、『一番低い山は?』とかもあるけど、今回は【ですが、に】と来たから【2番めに高い山は?】とくるわけだね。何と何が対応しているかわかれば、最後まで聞かなくても押せるってわけだ。じゃ、宮本さん、答えをどうぞ!」
 Qが早口でまくしたてた後、宮本はゆっくりと答える。

「……北岳、です」

 正解音。
「おおっ!お見事!拍手!」
 わざとらしく拍手をするQ。参加者のうち何人かが、つられて手を叩いてしまう。Qは場の空気を掌握しつつあった。

「さ、次の問題いこう!今度はどんなのかな?ワクワクするね!」

9


【問題。『正しさとは】

 ピコーン!

「っしゃ!」
 飯島がガッツポーズをする。
「『うっせえわ』」
 正解だ。解答が早い。
「うんうん、良い押しだよ飯島さん!今のは書き出しとか歌い出しで早押しさせるのはけっこうよくあるんだよね。こういうのはホントに早押し勝負だからね」

【問題。七福神で唯一じょ】

 ピコーン!

 今度は宮本が押した。
「……弁財天」
 これも正解だ。
「な、なんでわかるんだ?」
 ミラが驚くと、待ってましたとばかりにQが解説する。
「これは面白い問題でねー。七福神っていえば、一般的に恵比寿、大黒天、福禄寿、毘沙門天、布袋、寿老人、弁財天なんだけど、この中で唯一っていえば唯一女性の弁財天か、唯一日本の神様の恵比寿が聞かれがちだね。だから【唯一】の後の【じょ】まで聞く必要があったんだよね」

 これで3-0だ。半蔵・平川チームは未だに押せていない。

「宮本さんは教師をしてただけあって知識が豊富だし、飯島さんは反射神経が良い。それに2人とも要領がいいから、教えたことをすぐ吸収してくれたよ」
 Qは僕のほうを見て目を細めた。
「さーて、これで一通り、Aくんが気づいてそうなところまではみんなに共有できたかな?」
「なっ、てめえやっぱり……」
「キミはクイズのパターンに気づいてたから早押しできたんでしょ?そうでなきゃ……キミが『アンサー』ってことになるけど?」
 目の奥が笑っていない。僕は言葉を選んで、Qに返す。
「……間違ってないよ」
「そうだろうとも。キミにはもっと強くなってもらわないと困る」
 僕によくわからない執着を見せるQ。僕が『アンサー』だとバレるような行動をするのを狙っているのだろうか。

【問題。4択問題です】

 4つの選択肢が、2つの回答席の間に表示された。ラウンドが進んでから、こうした単純な早押しでない形式も増えている。
 ①リップ ②チーク ③マスカラ ④アイライナー

(答えは『チーク』だけど、化粧品関係は問題の想像がつかないな)

【次の4つのうち、もく】

 ピコーン!

 回答席のランプが灯る。押したのは意外にも、半蔵だった。

「チーク」
 正解だ。半蔵はフン、と鼻を鳴らす。

「よく化粧品の問題がわかったな。今のはあそこでわかるのか?」
 マイカは素直に感心して、僕に聞いてくる。
「いや……たぶん、まだわからないんじゃないかな」
「あ?じゃあなんで正解できるんだよ。当てずっぽうか?」
「『異能力』を使ったんだ。たぶん半蔵の、だけど、まだ確定じゃない」
 これはただのクイズではなく、『異能力』クイズだ。3点差をつけられ、いよいよ平川・半蔵チームも『異能力』を使っての反撃に出たのだろう。
「そう、あの段階では問題が『何を聞いているのか』もわからない。展開のギアが一段上がったね」
 Qは興味深そうにあごをなでている。

【問題。4択問題です。次の出来事のうち、古い順に並べると3番めに】
「2000円札の発行」
【問題。4択問題です。次の4人のプリキュアのうち、最もあたら】
「キュアホイップ!」

 半蔵が4択問題を連取して、得点が並んだ。3-3。

「くそっ、なんなんだよコレ!」
 飯島は明らかにイラついていた。Qから教わった必勝法が通じないのだ。ムリもないだろう。
「オッサンども、なんか『異能力』やってんだろ?!バレバレだぞ!」
「お、落ち着いて飯島くん、そんなこと言っても意味ないわよ」
 宮本が飯島を抑えようとするが、止まらない。
「そんだけ歳喰ったら、『異能力』でズルしないと俺に勝てないもんな!オッサンどもが生還してなんになるってんだよ!」
 半蔵たちを挑発する飯島。
「特にそっちのデブオタ!何が『キュアホイップ』だ、うれしそうに答えやがって!キモいんだよ!」

「……うっせえわ、ガキが!プリキュアバカにすんな!!」

 それに対して、何が逆鱗に触れたのか、突然半蔵がキレた。大きな体を揺らし、回答席を叩く。

「あーもう、いいわ、言うわ。もともとダリーんだよ読み合いとか……」

 そして、飯島を指さして、挑発し返すように言い放った。

「おれの『異能力』は『フィフティ・フィフティFifty-Fifty』。……っふ〜〜っ、もう隠すのもまどろっこしいから言っちまうけどよぉ〜〜。飯島!おめーに度胸があんなら、『能力指摘』してこいよ……。4択問題が続く限り、お前に勝ち目はないぜぇ〜〜っ」


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「半蔵、何を言ってるんだ?」
「いいだろ平川サン……イキるならそんだけの度胸があるのか見せてもらおうぜぇ~っ」
 自らの『異能力』、『フィフティ・フィフティFifty-Fifty』を突然暴露した半蔵に、対戦相手も、同じチームの平川も、僕ら他の参加者も騒然としていた。
「な、なんなんだアイツ。おいA、あんなことして意味あんのか?」
「正気じゃないですよ、能力が当たったら死ぬのに!」
 ミラとマイカが僕にたずねてくるが、僕にだってわかるわけがない。
「そんなことをやっても意味はないんだけどな……」
 Qは不思議そうに、本当に理解できなそうな調子で言う。
「だってそうだろう?こんなの、ジャンケンで『次はグーを出す』って言っているようなものだ。『フィフティ・フィフティ』の能力的に今起こっている現象と合致していたとして、それは彼の『異能力』だという確証は一切ないんだから」
 Qの言葉に頷きながら回答席に目を向ける。当の飯島は挑発に乗って、今にも『能力指摘』をしそうだったが、同じチームの宮本が必死で止めていた。
 混沌とした状況の中でも、クイズは進む。

【問題。4択問題です】

「クソっ、なんの『異能力』なんだよ、この4択問題は……」
 飯島もボタンに指をおいた。
 選択肢は、①トルコ料理 ②インド料理 ③フランス料理 ④日本料理

【次の4つのうち、世界さ】

 ピコーン!

 まだ問題文が5文字も読まれていないのに、半蔵が押した。

「トルコ料理」

 正解だ。これで4-3。飯島・宮本チームは、あと2問正解されたら敗北が確定してしまう。

「くっそ、あのオッサン、もう『異能力』使ってるのを隠しもしねえ……なんなんだ今の、あいつホントは『アンサー』なのか?」
「だから『フィフティ・フィフティ』だっつってんだろ?さっさと指摘してみろよ」

 歯噛みする飯島に、挑発する半蔵。この状況を打破するには、『能力指摘』をするか、あるいは飯島たちも『異能力』で正解を導くしかないだろう。

【問題。4択問題です】

 もう何度も聞いたアナウンスとともに、選択肢が表示されーー。

「……ああ?なんだコレ……?」

 半蔵は無い首をひねった。選択肢は、

①○の○に○○ ②○○に○ ③○○○に○○○ ④○○の○○○

 そのほとんどが不自然に隠れている。

【次のうち、意味の異なることわざはどれ?】

 会場内が静まり返った。

「どれ、って言われても……なあ」

 ミラが隣でこぼし、こちらを見た。

(これ、何がどうなってんだよ!?答えはなんなんだ?)

 ミラの『テレパス』が僕に思考を伝えてくる。

(答えは『④河童の川流れ』なんだけど……こんなの、わかるわけが)

 ピコーン!

 静寂に響いたボタンの音。押したのは、宮本だ。

「④番。……でいいのよね?中身はわからないけど」

 正解だ。これで点差は0になった。

「おお!すごいねえ!」
 Qがうれしそうに手を叩く。これが解答できたのは、彼にとっても予想外だったようだ。
「たぶん①馬の耳に念仏②ぬかに釘③のれんに腕押し……④はなんでもありだけど、河童の川流れ、とかかな?正解の④がわからなくても、他の3つが同じ意味のことわざってところから閃けば、解答できるね!すごいすごい!」
 Qの喜びようからして、これは本当にファインプレーだったようだ。宮本は安堵の表情を浮かべている。それを見ながら、Qは急に真顔になって続けた。
「……まあ、彼女本人が『イレイズErase』でなければ、だけど」

 Erase:クイズの問題文や選択肢の一部を非表示にできる。

 この状況は、明らかにその『異能力』の影響下にあるものだ。いよいよ状況が複雑になってきて、僕は頭が痛くなる。

 自称『フィフティ・フィフティ』の半蔵、『イレイズ』で阻害した問題に正解した宮本。4択問題が出続ける現象。

 誰が、何の『異能力』で、この状況を作り上げているのか?


11


 Qの指導したクイズの解き方で有利になった飯島・宮本チームに、半蔵・平川チームは(おそらく)『フィフティ・フィフティ』で4択問題を連取。状況を覆し優位になったが、展開は再度覆った。あらゆる問題を2択にできる『フィフティ・フィフティ』も、『イレイズ』で選択肢自体を消されると、うまく働かないようだ。これで、4-4。

 しかし、僕の視界の隅で、Qはいつになく険しい顔をしている。自分の周囲の人間が勝ちそうなのに、なぜ?

【問題。4択問題です】

選択肢は、①徳川■〇 ②徳川■△ ③徳川△◆ ④徳川◆〇 

 異様な表示に会場がどよめく。
「はぁ?!みんな苗字おんなじじゃねえか!」
 ミラが叫んだ。
「いや、将軍の名前だからそこは同じになるんでしょうけど……」
 マイカが突っ込みを入れるが、そういう問題ではない。
「いや、それよりも」
 僕は思わず口走る。答えは③なのだが、こんなの。
「こんなの、答えようがないんじゃないか……?」
 今までたくさんのクイズをやってきたが、答えようのない問題というのは出題されなかった。『イレイズ』の影響を受けてもなお、先ほどの問題は解けるようになっていた。だとすると、一見回答不能に見えるこれも……?

【次の4人の将軍のうち、生類】

 そこまで問題が読まれたとき、Qが「なるほど」とつぶやいたのが聞こえた。
 そして、ほぼ同時に、

 ピコーン!

 ボタンが押される音。押したのは、またも宮本だった。

「徳川綱吉」
【何番?】
「……③」

 正解だ。

「すごいすごい!やるじゃないか宮本さん!いやぁびっくりだよ!」

 Qが飛び上がって大喜びしているが、他の参加者たちは皆、状況に思考が追いついていないようだ。僕もそうだ。

「なんにもすごかねえよ!コイツが『イレイズ』の本体ってだけだろ!」
 半蔵が口から唾をとばしながら叫ぶ。能力指摘しようと指さしたところで、
「待て、半蔵」
 平川がそれを止めた。
「この問題、俺らが頭で負けただけだ。さっきみてえに、解けるようにできてる」
「マジかよ、平川サン」
「……さっきの問題で、〇がなんでも文字が入るのはわかってた。だったらわざわざ記号を分けてる■◆△には共通の文字が入ると考えるのが自然。すると、③が『家でなく、他の将軍の名前に使われている文字だけで構成される』とわかる。徳川将軍の名前の中でこの条件を満たすのは、②の家綱と④の吉宗の『綱』と『吉』を使っている『綱吉』だけだ」
 平川がしゃがれた声で述べるのを、会場全員が聞き入っていた。

「あのお嬢さん、おそろしく頭がきれる。次も同じように隠されたら、勝ち目がねえな」
「そう!そうなんだよー!いやあすごいね!逸材だ!」
「い、いえ、そんな……」

 宮本は、平川とQに褒められ、少し照れているようだった。
「ッチ、しょうがねえな……これを取りゃあ延長戦だ。いつまで続けられるか試してやるよ」
 半蔵がボタンに手を置く。

【最終問題です。問題。4択問題です】

 最後まで4択が続く。選択肢が公開された。

①〇 ②× ③△ ④□

「最後まで『イレイズ』がかかってんのか。こりゃQのチームの勝ちだな」
 ミラが僕の隣でつぶやく。
 僕は「あれ?」と声を出しそうになって、すんでの所でやめた。

 これは、おかしい。なぜなら、答えは②の×だからだ。『イレイズ』がかかっていない。
 そして、そのことに気が付いてしまえば『アンサー』であることがバレる。

「『能力指摘』だ」

 太った人間独特の、くぐもった声が聞こえた。


12


◆◆

 飯島イサムは、お世辞にも頭が良いとは言えない男だった。彼は自分でもそれを自覚していて、あまり頭を使わない生き方をしていた。だが、「誰についていけばいいか」に対する嗅覚だけは、自信があった。
 早押しクイズという、頭を使うものの代表で生死が決まるゲームに巻き込まれたときは、すぐに死ぬものと思っていたが――。

【問題。日本三景とは、】
「天橋立」

 Qという圧倒的なクイズ強者を見つけ、彼についていくことにした。もし彼に利用され、だまされて死んだとしても、一人でやってもすぐに死ぬのだから、結果的には変わらない。そう思っていたが、意外にもQはイサムに好意的で、いろいろと戦い方を教えてくれた。

「キミの『イレイズ』は、『BAN』と並んで数少ない妨害能力だ。ここぞというときに取っておくのがいいね……警戒されると面倒だし」

「今までの問題からして、全員が解けないような問題は出ていない。わからなくても焦って押さないで、ゆっくり聞けば後振りでわかることもあるよ」

 Qの協力もあって、イサムは最初のラウンドをなんとか突破。そして今、同じくQの取り巻きの宮本とチームを組んで、クイズに挑んでいる。
 追い込まれて思わず『イレイズ』を使ってしまったイサムだったが、彼には妨害前の問題と選択肢が見えても、答えがわからない。
(やっぱりオレはアホだ、こんなことしても意味がない)
 後悔しかけたその時、チームの宮本がなんと正解した。これにはQも、イサムも大喜びだった。

「宮本サン、すげえっすよ!これなら勝てる!」

 イサムが『イレイズ』で妨害し、宮本がゆっくりと考えて正解する。このパターンで、最後の1問をとれば勝てる。このクイズは、チームを組んだ者が勝つ。クイズで最強のQに、宮本もここまで強ければ、この人たちについていけば負けないだろう。イサムは、改めて自分の嗅覚に自信を持った。

【問題。】

 イサムは勝利を確信して、『イレイズ』を起動する。これで表示される選択肢がおかしくなって――。

「なっ」

なっていない。というより、普段ならわかる書き換えの結果もわからない。『イレイズ』が発動していない。 

 何が起こっている?イサムは選択肢を映していた空間から、周囲に視線を巡らせる。

 クイズの解答者を取り囲むようにいる、他の参加者の中。そして、解答席の対面。4人の参加者が、イサムを指さしている。

 半蔵モンヂ。平川ホウゾウ。乾イヴァン。大門サクラ。

 親指と人差指で、銃をつくるようにして、イサムを標的にしていた。

 ◆◆

「『能力指摘』だ」

 くぐもった声のする方を見る。解答席の半蔵と平川が、飯島を指さしている。僕の隣でクイズを見ていた長身の女性も。他にも一人、外国人っぽい顔の男性が同じようにしている。全員が、指先で銃をまねるみたいにして、飯島に向けていた。

「ほんとはよぉ~……『アンサー』も釣れりゃあ一石二鳥だとおもってたんだがなぁ~~……ここまで隠してきただけあって用心深いぜ……飯島イサム、オメーと違ってな……」
「な、なんだよこれっ!」

 当の飯島は混乱している。当然だろう。『イレイズ』が使えなくなったのだから。
「『BAN』か。ここで動いてくるとは。悪い予想が当たった」
 Qは珍しく真剣な表情で行方を見守っている。

「ここまでアホみたいな挑発に乗ってやった甲斐はあったぜぇ~~……フツーに4択解いてれば勝てたかもしれないのになぁ~~?」

「お、お前、『フィフティ・フィフティ』じゃ……や、やめろおっっ!」

 半蔵は勝ち誇り、飯島を見下ろして言った。

「飯島イサム。お前の能力は『イレイズ』だ。マヌケさ加減をあの世で反省しなぁ~~ッ!」

 ピンポーン!

 空虚な正解音が鳴り、飯島の頭が弾け飛んだ。
 宮本の顔と上品な服に、べったりと血の跡がつく。
 少しの静寂のあと、彼女の悲鳴が会場に響いた。

 その後、最後の問題……【次の4つの記号のうち、一般的に海外のテレビゲームで決定を意味するボタンはどれ?】を半蔵が正答。5-5で延長戦になったが、もはや宮本に戦う気力は残っていなかった。
 ラウンド10は半蔵・平川チームの勝利で終わり、2人の参加者が減った。

「……ひでえ野郎だ。これから死ぬやつをあんなにボロクソに言って……」
 ラウンドが終わり、生き残った半蔵と平川が席を降りてくる。誰もが言葉を飲み込む中、ミラの絞り出すような声が聞こえる。
「あ?なんだぁこのガキ……」
 半蔵がミラに近づいてきた。僕は2人の間に入ろうとするが、それより速く、誰かが割り込んできた。

「半蔵」

 聞いただけで背筋が凍るような冷たい声。ミラの前に立ったのは、先程飯島を指さしていた長身の女性だ。改めて見ると、肌が異様に白い。

「な、なんだよボス、ちょっとテンション上がっただけ」

 彼の言葉を最後まで聞くことなく、女性は長い脚で半蔵の顔を蹴り上げた。
「グアッ!?」
 巨体がわずかに宙に浮き、崩れ落ちる。倒れ伏した半蔵をヒールで踏みながら、女性は他の参加者を見回した。

「お見苦しいものを、大変失礼しました。お詫びいたします。彼の言動は我々の総意とは一部異なるものです。今後は慎ませます」

「……なんなんですか、あなたは」
 展開に頭が追いつかない僕は、思わず聞いてしまう。女性は踏みつけにしたまま、僕を見下ろして答えた。

「私は大門サクラ。警察です。半蔵モンヂ・平川ホウゾウ・乾イヴァン……そして、桔梗ユカリとともに、我々警察はこのテストから国民を保護するために潜入しました」

 桔梗ユカリ。その名前を聞いて、僕の心臓が跳ねる。

「我々は国民の保護を最優先に行動します。半蔵の言動は任務の遂行のためとはいえ、過度に他参加者を侮辱するものでした。我々の総意ではありません。改めて謝罪いたします」

 淡々と、整った唇で、原稿でも読み上げるように告げる大門サクラ。

「け、警察が来てくれた!」
「リリたち、おうちに帰れるの!?」

 僕らとQ、そして警察と名乗った4人以外の生き残りが色めきだつ。色黒の青年、禅寺ゼンジロウと、双子の子ども、二荒山リリとララ。もう参加者もだいぶ少なくなってしまったが、そのうち4人が同じ組織の人間だったとは。

「ええ、私たちは全力を尽くします」

 サクラはにっこりと笑った。人を安心させるために最適化された笑み。これも警察のスキルなのだろうか。

「……国民の保護とかいう割りに、ずいぶん容赦なく殺したよね。宮本さんとは、クイズで対戦したかったのに……」

 恨めしそうなQの言葉に、サクラは返す。

「未だにここから脱出するプランが立っておらず、クイズが続いているのは我々の力不足です。そして、あなたをまだ野放しにしていることも」
「……どういう意味?」

 Qの質問に答えず、彼女は僕ら残りの参加者を見回した。

「皆さん!」

 空間が、びりっと揺れるような大音声だ。

「我々は、この理不尽なクイズの裏で調査を行い、脱出のプランを立ててきました。皆さんには、ぜひとも協力していただきたい!共にこのデスゲームから生還するためには……」

 サクラと、目が合った。

「クイズ王Qと、『アンサー』を排除しなければならないのです!」


――つづく


Q2 漫画家、桜井のりおの作品で、三つ子の『みつば』『ふたば』『ひとは』を主人公とするギャグマンガは何?
A2 『みつどもえ』

↑次回↑


この作品は、2022年の逆噴射小説大賞に応募した作品の連載版です。

カクヨムに掲載したものをNoteに転載しています。


おまけ:この章で出てきたクイズの全文


Q 日本で一番高い山は富士山ですが、二番目に高い山は?
A 北岳

Q 『正しさとは 愚かさとは』という歌いだしで始まる、Adoの楽曲は何?
A 『うっせえわ』

Q 七福神で唯一女性の神様は誰?
A 弁財天

Q 次の4つのうち、木材の名前はどれ? ①リップ ②チーク ③マスカラ ④アイライナー
A ②チーク

Q 4択問題です。次の出来事のうち、古い順に並べると3番めになるのはどれ? ①2000円札の発行 ②5000円札の絵柄が樋口一葉になる ③10000円札の絵柄が福沢諭吉になる ④1000円札の絵柄が聖徳太子になる
A ①2000円札の発行

Q 4択問題です。次の4人のプリキュアのうち、最も新しいのは誰? ①キュアブロッサム ②キュアホワイト ③キュアハッピー ④キュアホイップ
A ④キュアホイップ

Q 4択問題です。次の4つのうち、世界三大料理に含まれるのはどれ? ①トルコ料理 ②インド料理 ③フランス料理 ④日本料理
A ①トルコ料理

Q 4択問題です。次のうち、意味の異なることわざはどれ?①馬の耳に念仏 ②ぬかに釘 ③のれんに腕押し ④河童の川流れ
A ④河童の川流れ

Q 4択問題です。次の4人の将軍のうち、生類憐みの令で知られるのは誰? ①徳川家康 ②徳川家綱 ③徳川綱吉 ④徳川吉宗
A ③徳川綱吉

Q 4択問題です。次の4つの記号のうち、一般的に海外のテレビゲームで決定を意味するボタンはどれ? ①〇 ②× ③△ ④□
A ②×

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