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業務システム刷新のはずが…中国子会社まるごと立て直すハメになった話

本記事では、中国赴任に先立って私が手がけた「システム刷新と経理部門再構築」について記している。ただし、実際の赴任後はこの業務にとどまらず、会社全体の構造改革、業務プロセスの見直し、人材の再配置、情報共有体制の再構築など、多岐にわたるミッションを担っていた。
赴任のきっかけやその他のエピソードについては、別記事『中国赴任のきっかけは「会社の〇〇」だった――「あなた、行ってくれないか?」それがすべての始まり』にて紹介している。こちらもぜひ併せてご覧ください。

「この会社のシステム、なんとかしてくれないか?」

すべてはその一言から始まった。中国赴任を命じられる一年前、本社の役員から話が来た。どうやら、ある海外子会社のシステムに問題があるらしい。

最初は軽い相談のように聞こえた。けれど蓋を開けてみれば、半年以上に及ぶがっつり案件。しかも、ただのIT入れ替えでは終わらない。経理、開発、経営層……全方位に向けての業務改革の始まりだった。

「まともな数字が出てこない」から始まった

発端は、本社が現地法人に資料を要求しても、まったく、まともな数字”が上がってこないという問題だった。

さっそく経理部門にヒアリングしてみると──「うち、まともな会計システム無いんです」と、まさかのストレート回答。ツッコミたい気持ちをぐっと堪えて、まずは会計システムの刷新を最優先で進めることにした。

この時点では、普通にパッケージを入れてカスタマイズすればOK、くらいに思っていた。甘かった。

業務インタビュー開始、そして現実に引き戻される

プロジェクトの進め方はオーソドックスに。

1.経営層・経理・開発・営業など各部門へ
  インタビュー
2.現行の業務内容を業務フローに落とし込む
     (As-Isモデル)
3.改善要望を拾って、あるべき業務像
    (To-Beモデル)を描く

途中までは順調。だが、経理へのヒアリングで衝撃が走った。「開発中のソフトの棚卸?……うちは、仕掛品って概念が無いんですよ。コストは全部製品原価で見てますから

えっ? 原価計算の概念が、ソフト開発会社に存在してない??

しかも、この担当者は「CPA(公認会計士)」の資格持ち。いやもう、笑っていいのか泣いていいのか。頭を抱えつつ、本当の課題が見えてきた。

本当に必要なのは、財務システムじゃなかった

開発部門に話を聞いてみると、「工数管理はしてますよ」とのこと。でも、プロジェクト単位の収支管理は大雑把。開発部門長のひと言が印象に残っている。「プロジェクトごとの損益がキチンと見えたら、だいぶ違うと思うんです

このとき、私は方針を大きく転換する。

──この会社に必要なのは、「個別原価計算」だ。財務会計ではなく、もっと泥臭い現場に根ざしたコスト管理。これを中心にやろう。
本社役員にも説明し、ようやく方向性が固まった

個別原価計算

最大の障害は「人」だった

とはいえ、問題はシステムや仕組み以前に“”だった。特に、現地経理課長のやる気がゼロ。

インタビューに出てくるのはいつも部下だけ。
他の人に理由を聞いてみると──「実力は無いのに、総経理の一声で課長になった人」とのこと。社内でも浮いており、実質的には部下たちが業務を回しているという。

そこで決めた。「今後のインタビューには必ず本人を同席させる」。逃げ道を塞いだわけだ。

システム導入、そして「CPA」フェーズ

To-Beモデルに基づいて、必要な全社の業務フローを再設計。
世界標準のパッケージを導入し、足りない機能はアドオン開発。
そして、「CRP(ユーザーによるシステム検証)」フェーズへ。

各部門のユーザー主体で作ったシナリオを使ってシステムを使い倒してもらい、課題を吸い上げる。全体を数回繰り返すことで、徐々に“現場に根づく”仕組みに仕上げていく。

最後は、データ移行・並行運用。責任者会議で最終レビューと承認をもらい本番切替。プロジェクトは無事に完了。期間は約1年。ちょうど終わりかけのタイミングで──

君、現地に赴任してくれないか?
ああ、ここからが本番だった。

会計システム

赴任後いきなり、経理崩壊

赴任してすぐ、複数の経理スタッフが退職。前総経理が辞めたあとなので、まさか何かやましいことが?と勘繰りたくもなる中、なぜか経理課長だけは残留。おそらく、次の仕事が見つからなかったのだろう。

仕方なく、新たに2名を採用。経理課長からは1ヶ月かけて丁寧に業務のヒアリング。
そしてこう伝えた。「今後、経理に関する指示と確認は、すべてあなたを通じて行います」

すると……人が変わったように真面目に対応するようになった。能力は期待できなくても、長年の経験だけはある。フォローさえすれば、なんとかなると判断した。

新体制スタート

新システムのもと、原価計算の仕組みを丁寧に説明。月次決算のスケジュールも経理部門から社内に周知し、締め日を厳守させた。

そして、過去の「手書き伝票文化」も一掃。承認ルールを明文化し、すべてシステム上で見える化した。総務の伝票不正もこれで防止。

会社として必要な分析資料も明確に指示し、経理部門に作成させる体制が整った。

最終的にはここまでできた

・事業計画の立案(個別原価計算を前提)
・決算の正確性確保と早期化
・部門別損益の作成と分析
・予実管理の徹底
・資産管理の徹底
・原価分析
・税務対応
・会計監査の応対
・移転価格対応
・会計基準の旧準則→新基準への切り替え
 ……………

経理部門がようやく「機能する」組織へと変わっていった。

経理業務

まとめ:システムを変えるだけじゃダメだった

振り返れば、ただのシステム導入のはずが、最終的には経理部門の構造改革へと発展した。

ITを入れ替えるだけじゃダメなんだ。本当に必要なのは「仕組み」以上に「」の意識を変えることだった。

赴任直後のドタバタも含めて、あれは貴重な経験だったと思う。このプロジェクトがあったからこそ、私は中国ビジネスの“現場の泥臭さ”を少しだけ理解できたのだと思う。

赴任の経緯や、なぜこの会社に行くことになったのかは別記事で詳しく語っている↓

▶︎ 「中国赴任のきっかけは『会社の〇〇』だった――『あなた、行ってくれないか?』それがすべての始まり」

また、併せて現地での年間の業務は、以下の記事で記載↓

▶︎「ある中国駐在員の業務⇒1月〜12月【ビジネス講義付き】ー異文化と経営の狭間で」

現地でよく使った本です。使い勝手が良い。


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「仕掛品が「存在しない」会社の衝撃 —— それ、制度のせいじゃありません」と題して、中国の会計制度を解説しています。興味があれば是非ご覧ください。

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