【第二話】 ネフェル王国:希望の調べ 〜Όνειρα και ελπίδα, η χώρα ανθίζει!〜(オニラ カイ エルピーダ、イ ホーラ アンシーシ!)――
前作(第一話)を読んでくださった皆さんは、お気づきでしたか?
実は、この物語には「本当の続き」があります。そう――王国に掛けられた魔法は、まだ解けてはいなかったのです。
🦆全ての始まり第一話はコチラです
「王女様だけがこの国を救えるなんて……」
私たちは何も不自由を感じていないけれど、と口々に噂は広まりました。そんな中、一人のおじいさんが鍬を持つ手を休めて言いました。
「お前たちは、気づいていなかったのかい」
「普段通りだよ。国も平和だ。お腹いっぱい食事もできてるじゃないか」
「そうじゃな、しかし、わしは昔のわしは……何かが違っていたんじゃ。あれもしてみたい、これもやってみたい……何かそんな気持ちが起こって、ワクワクとした気がするんじゃ」
「おじいさん、何を言ってるの?充分なんだからこれ以上、わがままはいらないのよ」
「お前たち気づかないのか……わしらの口から言えなくなっている言葉がある事を……わしも出そうとしても言えないのじゃよ」
ナイルは、この国にかけられた魔法の謎を解くために、再び白馬にまたがり国中を巡りました。
何日も、何日も。ある村に入ると、村人はたくさん出会うのに、誰一人として笑っていないことに気がつきました。またある村では、どんよりとした曇り空のような、重い空気が流れていました。

「なぜなのかしら……」そう呟き、馬から降りたその時です。突然、物陰から怒鳴り声とともに数人の山賊が剣を向け、あっという間にナイルを囲んでしまいました。あまりにも不意な出来事で、鞍にかけていた剣を取ることすらできません。
「何をするのだ!」
「俺たちは知っている。お前の国にはもう、誰一人『希望』という生きるエネルギーがないことをな!」
「何を言っているのだ!」
「お前を殺せば、あの王国は俺たちの思い通りの国にできる。希望のない国民は、なんでも思いのままだからな。ここへ連れて来い!」
騎士の姿の王女ナイルは、心の中で何度も繰り返しました。
(ミティス・エト・フォルティス……ミティス・エト・フォルティス……)
それは、かつて古(いにしえ)のエジプトの地で、気高く美しい猫の神が唱えたとされる守護の呪文――。
凶刃が振り下ろされようとした、まさにその時。白いドラゴンが空から猛然と飛んできたのです。力強い爪で山賊たちを鮮やかに蹴散らし、その場に倒れ込むナイルを優しくその背中に乗せて、大空へと飛び去りました。

次に目を覚ましたとき、ナイルは「村娘の姿」に変わっていました。「いったい私に何が起きているの……?」
静かに呼吸を整えるナイルの胸の奥から、ふつふつと湧き上がるものがありました。国の人々の心を救うこと、それこそが私の役目なのだと。大空で助けてくれたあの白いドラゴンに、どこか懐かしい温もりを感じたことも、彼女はしっかりと覚えていました。
白馬はナイルの元に戻ってきました。彼女はまだ、村娘の姿のまま、国の果てを目指して進み続けます。ある夜、疲れ果てて白馬を休め、とある食堂に入ると、そこには隣の国の人々が輪になって楽しそうに踊る姿がありました。彼らは口々に、国のこれからを歌にして響かせていたのです。
「Όνειρα και ελπίδα,
η χώρα ανθίζει!」
(オニラ カイ エルピーダ、イ ホーラ アンシーシ!)
夢と希望よ、この国を豊かに花開かせよ!
「どこから来たの?」
「可愛い娘さん、一緒に踊ろう!」
踊っていた村人に手招きされ、ナイルが輪に加わって踊り始めた、その時でした。一瞬、胸に激しい痛みを感じたかと思うと、彼女の体がまばゆいオレンジ色の光に包まれたのです。踊っていた人々も動きを止め、驚きに目を見張っています。
不思議な光の渦の中で、村娘の姿だったナイルは、気品あるドレス姿の自分へと変わっていきました。そして、その傍らには、あの白い鴨が羽を大きく広げて叫んでいたのです。

「グワッグワッ!私は、あなたの国を救うため、国つくりの山にあるというこの『鍵』を取りに行っていました。そして帰ろうとした時、このオレンジ色の光の導きで、ここに辿り着いたのです。この光がある間だけ、私は言葉を話すことができます」
「なんと、ネフェル王国の王女ナイル様ではありませんか!」
「あなた達が歌う希望の歌……その温かいメロディが、私の国を救いたいという『希望の心』を呼び覚まし、私にかけられた魔法を解いてくれたのです」
「なんということだ……!」
「王女様、国の人々はきっとあなたを待っていることでしょう」
「ええ。明日、早く、ここを発つことにいたします」
王女ナイルと白い鴨は、白馬に乗って休むことなく走り続け、ついに王国の城へと辿り着きました。
父王と母君にこれまでの旅のすべてを話したあと、ナイルは城の奥深くにある、これまで誰も踏み入ったことのない、閉ざされた部屋へと向かいました。
父王が白い鴨の持ってきた鍵を受け取り、古びた鍵穴に差し込みます。――カチリ。驚くほどぴったりと合ったではありませんか。静かに扉を開けると、そこには、ぽつんと1枚の白い紙がテーブルに残されていました。

「レクム•ノクテス(夜の王たちの盟約)」――
『ナイル姫が19歳になる前に解かなくてはならない、約束をしたのだ。これは、過去からの呪いである。国の民が希望を失うことで、もたらされる悲劇というエネルギーを引き換えにしたのだ。喜びも悲しみも、心のいかなる働きも、生きる希望という【民の成長】があってこそ、生まれているのだ!』
全文を読み終えると、これまで薄暗く冷たい空気の漂っていた部屋に、柔らかな朝日が差し込んでくるのを感じました。父王と母君、そして王女ナイルが塔のベランダへと出ると、国中が忘れていた澄み切った光が、この地を再び包み込んでいたのです。
「Όνειρα και ελπίδα,
η χώρα ανθίζει!」
(オニラ カイ エルピーダ、イ ホーラ アンシーシ!)
夢と希望よ、この国に豊かな花を咲かせよ!
「幸せになってください、王女ナイル様」
その声を聞き届けた瞬間、白い鴨の姿は柔らかな光の粒子となり、朝日に溶けるように消えていきました。それは遥か二千年の時を超えて――。彼女がかつて命を賭して守り抜いた、遠い古(いにしえ)のエジプトの地へと還っていく旅立ちのようでもありました。――

グワッ、グワッ、グワッ。風に乗って届くその鳴き声に、今を生きる私の傍らにいるナイルも、優しく目を細めて応えたような気がしました。
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ありがとうございます💐
マガジンへ掲載して頂きました!
yukariyajp:まいか🐇:note集客共共同マガジンへ
🦆保護猫ナイル生ものがたり✨今年19歳になります。
こんな底まで来て頂いて
感謝グワッ、de.🦆
ドキドキ ワクワク …to be gone on.
