会社を守る「36協定」の基本と「特別条項」の正しい使い方
こんにちは、日本綜合社会保険労務士法人の山田です。
とうとう、大阪・関西万博が閉幕の日を迎えてしましました。
思い返せば、私は開幕初日と2日目に連続で足を運んだのをはじめ、5月が終わる頃には10回も会場を訪れるほど、すっかりその魅力に夢中になっていました。
しかし、5月末に思いがけず大けがを負ってしまい、今も左の顔や左上の歯には麻痺が残っています・・・
大好きだった万博へも、この怪我の影響で、閉幕までの間にあと一度しか足を運ぶことができませんでした。もっと何度も訪れたかった、という寂しさと、少しの心残りを抱えたまま、万博の終わりを見送ることになりました。
さて、万博のような大きなイベントも、私たちの日常の業務も、そこでは多くの人が働き、支えています。特に繁忙期には、労働時間について頭を悩ませることも少なくありません。
「36協定って毎年更新しなきゃいけないんだっけ?」
「繁忙期だけ、どうしても残業時間の上限を超えてしまいそうで心配……」
そう不安に感じている人事・総務担当者の方はいらっしゃいませんか?
時間外労働や休日労働に関するルールは、労働基準法で厳格に定められており、「36協定」の締結はコンプライアンス遵守のために欠かせません。
しかし、その手続きや内容に誤りがあると法律違反となり、罰則のリスクもあります。
そこで今回は、労使協定の中でも特に重要な36協定を中心に、その例外である「特別条項」まで含めて、正しい締結方法と注意点についてお話しします。
労使協定の役割と法律違反のリスク

労使協定は、企業と従業員の間で、労働条件の一部を法律の例外として認めてもらうための重要な書面です。
・36協定:法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて労働させる場合や、法定休日に労働させる場合に必須
・変形労働時間制に関する協定:1ヶ月単位や1年単位の変形労働時間制を導入する場合に必要
・年次有給休暇の計画的付与に関する協定:年5日の有給取得を円滑に進めるために有効
これらの協定を怠ると、労働基準監督署の調査で是正勧告を受けたり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、無効な協定で残業させた場合、未払い残業代請求訴訟に発展するリスクも高まります。
36協定など労使協定の正しい結び方と注意点
労使協定は、ただ作成すれば良いわけではありません。有効な協定として成立させるためには、重要なポイントがあります。

1. 「労働者の過半数代表者」の正しい選出
労使協定を締結する相手は、労働組合がない場合、「労働者の過半数代表者」である必要があります。この選出方法には厳格なルールがあります。
正しい選出方法
・管理監督者ではないこと。
・協定締結の目的を明らかにし、全従業員に周知した上で、投票や挙手といった民主的な方法で選出すること。
・会社が一方的に指名することは絶対にできません。
2. 36協定の内容を正しく定める
36協定には、必ず記載しなければならない項目があります。特に重要なのが、時間外労働の上限規制です。
原則の上限は、月45時間、年360時間。この原則の上限は、絶対に超えてはなりません。
3. 【繁忙期対策】「特別条項」の正しい理解と運用
「どうしても、突発的な大口案件や決算業務で、月45時間を超えてしまう月がある……」。そんな時のために設けられているのが「特別条項付き36協定」です。
特別条項を適用できる場合
「通常予見できない、臨時的・一時的な特別の事情」がある場合に限られます。「慢性的な人手不足で忙しい」といった恒常的な理由は認められません。
特別条項でも超えられない「絶対的な上限」
特別条項を適用したとしても、以下の上限は必ず守らなければなりません
・時間外労働は年720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満
・時間外労働と休日労働の合計について、「2~6ヶ月平均」がすべて80時間以内
・時間外労働が月45時間を超えられるのは、年6ヶ月が限度
特別条項で定めるべきこと
特別条項付きの協定では、臨時的に上限を超えなければならない具体的な理由や、上限を超える労働者に対する健康確保措置(医師による面接指導など)についても記載する必要があります。
4. 労働基準監督署への届出
締結した労使協定は、必ず事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に届け出る必要があります。協定は、届出がなされて初めて法的な効力が発生します。
そのため、協定の有効期間の開始期までに届けることを忘れないでくださいね。
また、複数の事業場あれば、事業場ごと労使で協定を行い、提出しなければなりません。有効期間は最大で1年間まで。毎年必ず更新して事業場ごと届出が必要です。
協定届の様式も毎年変更になることも多く、前年度の使いまわしでは、内容が不足してしまったり、法的要件をクリアしない場合もあるので、アップデートがないか確認を怠りなく。
トラブルを未然に防ぐために

労使協定の締結は、労働時間の適正な管理と、企業と従業員間の信頼関係を築くための重要なステップ。
単に形式を整えるだけでなく、その内容が実態に即しているか、従業員にとって納得できるものかを常に意識することが大切です。
自社の労働環境を見直し、適切な労使協定を締結することは、法令違反のリスクを回避し、健全な企業運営を行うための第一歩となるでしょう。
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