「ノーワーク・ノーペイの原則」と賃金トラブルを防ぐための例外ケース
こんにちは、日本綜合社会保険労務士法人の山田です。
賃金計算や勤怠管理を行う人事労務担当者の皆様は、「ノーワーク・ノーペイの原則」という言葉を日常的に意識されていることと思います。
これは、「労働者が働いていない時間に対しては、会社は賃金を支払う義務がない」という労働契約における大原則です。
シンプルに見えますが、実はさまざまな例外や関連制度があり、その理解が曖昧だと、思わぬ賃金未払いトラブルに発展するリスクがあります。
そこで今回は、ノーワーク・ノーペイの原則の基本と、特に人事担当者が注意すべき例外ケースについて、今すぐ実務に活かせるポイントを解説します。
ノーワーク・ノーペイの原則とは?

「ノーワーク・ノーペイの原則」とは、労働契約が「労働力の提供」とその対価である「賃金の支払い」という関係で成り立っているため、労働の提供がなかった時間については、賃金を支払う義務も発生しないという考え方です。
従業員が個人的な理由で遅刻や早退、欠勤をした場合に、その時間分の賃金を控除(カット)することは、この原則に基づいています。
しかし、この原則が全ての「働いていない時間」に適用されるわけではありません。企業が知っておくべき重要な例外が存在します。
ノーワーク・ノーペイの原則が適用されない例外と注意点
「働いていないのに賃金の支払い義務があるケース」や、「賃金の支払いはないが、別の形で生活が保障されるケース」など、人事担当者が押さえておくべき代表的なパターンを見ていきましょう。主な例外は以下の通り。

ケース①年次有給休暇
労働基準法で定められている年次有給休暇は、労働者が休んだ日であっても、賃金を支払わなければならないとされています。
これは、労働者の心身のリフレッシュを目的とした、法律で保障された労働者の権利であり、ノーワーク・ノーペイの原則の最も代表的な例外です。
ケース②会社の都合による休業
天災による事業所の被災や、機械の故障、原材料の不足など、会社の都合(使用者の責めに帰すべき事由)によって従業員を休業させた場合、会社は労働者に対して平均賃金の60%以上を休業手当として支払う義務があります(労働基準法第26条)。
これもノーワーク・ノーペイの原則は適用されません。
ケース③従業員の私傷病による休職
業務外の病気やケガ(私傷病)で長期間休む「休職」は、従業員側の事情による休みなので「ノーワーク・ノーペイの原則」が適用され、会社に賃金支払い義務はありません(就業規則に有給の定めがある場合を除く)。
しかし、ここで重要なのが「傷病手当金」の制度です。
賃金の支払いがない代わりに、従業員の生活を保障するため、本人が加入する健康保険から、一定の条件を満たせば給与のおおむね3分の2に相当する額が支給されます。
これは会社の賃金支払いとは別の公的な制度ですが、人事担当者としては、この制度を従業員に正しく案内し、申請書への事業主証明など、申請手続きに協力することが求められます。
ケース④就業規則の定めによる休暇(慶弔・子の看護・介護休暇など)
慶弔休暇、病気休暇、子の看護休暇、介護休暇といった休暇は、法律で取得が保障されているものもありますが、それらを有給にするか無給にするかは、法律上の定めがありません。
つまり、これらの休暇の扱いは、すべて会社の就業規則の定めによります。
もし、就業規則に「慶弔休暇は有給とする」と定めているにもかかわらず無給としてしまうと、明確な賃金未払いとなりますので、注意が必要です。
賃金トラブルを避けるために

ノーワーク・ノーペイの原則は賃金計算の基本ですが、見てきたように多くの例外や関連制度が存在します。
トラブルを未然に防ぐためには、以下の点を就業規則で明確に定め、従業員に周知しておくことが不可欠です。
・休職規定:私傷病による休職期間中は無給であること、および傷病手当金制度が利用できることを明記する
・特別休暇:慶弔休暇や子の看護休暇などを有給とするのか、無給とするのかを明確にする
従業員が「この場合は賃金が出ると思っていた」という認識のズレが、多くのトラブルの火種となります。
これを機に、いま一度、貴社の就業規則が実態に即して明確に定められているか、確認してみてはいかがでしょうか。
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