【人事担当者必見】月給者の最低賃金、正しく計算できていますか?見落としがちな3つのポイント
こんにちは、日本綜合社会保険労務士法人の山田抄織です。
前回の記事では、最低賃金の引き上げがパート・アルバイトの方々の「年収の壁」にどう影響するか、という視点でお話ししました。
時給で働く方々の賃金チェックはもちろん重要ですが、実は「月給者」の最低賃金にも、見落としがちな大きな落とし穴があることをご存知でしょうか?
「うちは月給制の正社員だから、最低賃金なんて余裕で超えているはず」
本当に、そうでしょうか? 実は、月給者の最低賃金チェックには、時給者とは異なる特殊な計算ルールがあり、意図せず法律違反を犯してしまっているケースが少なくありません。
労働基準監督署の調査でも厳しくチェックされるこの項目、もし違反となれば、差額の支払いはもちろん、罰金の対象となる可能性もあります。
そこで今回は、意外と知らない「月給者」の最低賃金を正しく計算するための、絶対に押さえておくべき3つのポイントを、具体的な計算例を交えて解説します。大事なのは以下の3点です。

ポイント1:基本の計算式を理解する
まず、月給者を時間額に換算するための基本の計算式は、以下の通りです。
(月給) ÷ (1ヶ月の平均所定労働時間) ≧ (最低賃金額)
「月給を月の労働時間で割るだけでしょ?」と思った方、そこに最初の落とし穴があります。
ポイントは「1ヶ月の平均所定労働時間」の正しい計算方法です。これは、毎月の変動をならすため、年間で計算するのが基本です。
計算式:(365日 - 年間所定休日) × 1日の所定労働時間 ÷ 12ヶ月
例えば、年間休日120日、1日8時間勤務の場合、
(365日 - 120日) × 8時間 ÷ 12ヶ月 = 163.33時間
これが、貴社の「1ヶ月の平均所定労働時間」となります。
ポイント2:【最重要】計算から「除外」する手当を知る
ここが、月給者の最低賃金計算で最も間違いが多いポイントです。
計算式の分子となる「月給」には、含めてはいけない手当が法律で明確に定められています。
【最低賃金の計算に含めない手当】
時間外労働手当(残業代)
休日労働手当
深夜労働手当
通勤手当
家族手当
精皆勤手当
臨時の賃金(結婚手当など)、賞与
よくある間違いが、通勤手当や家族手当、そして固定残業代を「月給」に含めて計算してしまうケースです。
これらの手当は、たとえ毎月固定で支払っていても、最低賃金の計算からは除外しなければなりません。
ポイント3:実際に計算してみる
では、具体的な例で計算してみましょう。
【モデルケース】
・勤務地:大阪府(最低賃金 1,177円)
・労働条件:年間休日120日、1日8時間勤務
・給与:月給21万円(内訳:基本給17万円、家族手当1万円、通勤手当1万円、固定残業代2万円)
① 計算対象となる月給を算出する
月給21万円から、除外すべき手当を引きます。
21万円 - 家族手当1万円 - 通勤手当1万円 - 固定残業代2万円 = 17万円
② 1ヶ月の平均所定労働時間を算出する
(365日 - 120日) × 8時間 ÷ 12ヶ月 = 163.33時間
③ 時間額を算出し、判定する
170,000円 ÷ 163.33時間 = 1,040.8円
【判定結果】
1,040.8円 < 1,177円(大阪府の最低賃金)→ 最低賃金法違反
このケースでは、月給21万円と一見高く見えても、法律に基づき計算すると最低賃金を下回ってしまっているのです。
もし最低賃金を下回っていたら…
万が一、自社の賃金が最低賃金を下回っていた場合は、速やかに以下の対応が必要です。
最低賃金額以上の水準まで賃金を引き上げる。
差額を過去に遡って従業員に支払う(賃金の時効は3年)。
年に一度の「健康診断」を忘れずに

最低賃金のチェックは、企業のコンプライアンスにおける「年に一度の健康診断」のようなものです。
「うちは大丈夫」という思い込みが、気づかぬうちに大きな経営リスクとなっているかもしれません。
毎年の最低賃金改定のタイミングで、必ず月給者を含む全従業員の賃金チェックを行う習慣をつけましょう。
もし、自社の計算方法に少しでも不安を感じたり、就業規則や賃金規程の見直しが必要だと感じた場合は、ぜひ私たち社会保険労務士にご相談ください。
貴社の健全な労務管理を、専門家としてサポートさせていただきます。
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