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【読者連動】アトラと虹色の本③薄紫 虹色創作部

休み時間の教室は、私でない誰かの笑い声だけが響いていた。アトラは教室の扉付近に陣取り、誰かが一人になるたびに声をかけようと構える。しかし、制服の襟がひょこひょこ揺れるばかりでどうしても声が出てこない。

入学して2ヶ月。女子はみんなグループに分かれてしまっていて、私が入り込む隙を見つけられなかった。興味のない授業が始まっては終わり、あっというまに放課後になった。アトラは重い足取りで廊下へ出た。胸の奥がきりきりと痛む。明日はもっと話しかけづらくなっているに違いない。

ホームルームが終わった瞬間、真っ先に教室を飛び出した。バス停はまだ誰もいない。ああ、新学期、いや人生をやり直したい。
そうじゃなかったら脳に電極を刺して、ずっと映画を見ながら生きていきたい。
しばらく忘れていたあの本を思い出した。銀青に輝くあの本は未来について書かれているんじゃないか。陰鬱な未来を覗きたい気持ちだった。アトラは背を丸め、食い入るようにページをめくった。

あーー多分わたしその時まず死んでる

死という言葉に悲しいストーリーを連想した。でも、飛び出してきたのはキラキラ光る未来だった。世界樹が生えていて、スタバもあって、アトラはクスッと笑った。

次の頁をめくる。

きっと60年経ってもキミを愛してる

温かい未来が続いていく。ネットに意識を残すという愛の約束。どれだけ技術が進化しても、人のつながりは消えないという確信がその作品にはあった。「私もサイバーパンク好きな彼氏欲しいんだけど」。アトラは口先を尖らせた。

さらに指先を滑らせる。

焼きたてをふたつに分ける瞬間だけ、人はほんの少し温度を感じるの

アトラは遠い昔におばあちゃんが焼いてくれたバナナケーキを思い出していた。一緒に食事をとるということは時間を共有すること。アトラはユナのように理解した。温かい食事を作ったら、文芸部やクラスのみんな、家族とも一緒にいられるだろうか。

最後のページ。

かつては
芽が出ることを夢見て掘った
今は
夢すら見ずに掘る

これは今の私のための詩だとアトラは思った。色々頑張っているけれど、あまりうまくいかない。それでも努力し続けていることそれ自体が今の私を作っているのだ。

気がつくとバスのエンジン音が近づいていた。
雨で制服はびしょびしょになっていたが、心はポカポカと暖かかった。表紙は、銀青から柔らかな薄紫の色へと変化していた。梅雨の空気を思わせる、淡い紫と深い藍が混ざり合う色合い。雨粒が花びらを濡らすように、アトラの心にも静かな潤いが広がる。

背後で、かすかな足音。振り返ると、一人のクラスメートの男の子が傘をたたみながらバス停を通り過ぎていった。彼の横目がアトラの本を捉えていたような気がした。
「すごい雨だね」。本に背中を押されたからだろうか、アトラはにっこりしながら声をかけた。

これは読者と一緒に作る物語
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「梅雨」をテーマに作品募集中です。

みんなも一緒にやってみよ!イラストつけるよ!
さらに、メンバーシップに入ると、応募作が「アトラと虹色の本」に登場します!物語に影響を与える、かも。

先週メンバーシップを始めました。
最初の一ヶ月くらいは参加者0人だと思っていたので、4人も入っていただけて本当に感動しております。
SKY様、御堂様、naru様、sta.様、ありがとうございます。


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