「なぜ失敗は伝わらない?『歴史は繰り返す』×『温故知新』の失敗学」|社会人の学び|今寓話
「あ~疲れた・・」
「先輩、昨日ずいぶん遅かったですね?」
「ああ、例の書類やり直しの件、
やっと社内速報まで終わったわ」
「・・お疲れ様でした。大変でしたものね」
「お前は違う案件中だったもんな。俺はチェック側で責任者だし、あー・・我ながらなんでこんな凡ミス気づけなかったんかい」
「えっと、実はその件、
私も過去データ探してみたんです」
「おお『故きを温ねた』のか、助かる!」
「・・・」
「そしたらなんと、
ほぼ同じ失敗事例が見つかりました!」
「何!?『歴史は繰り返す』なのか?」
「まさに。
あと、無理に格言使わなくていいです」
先輩:歴史好き(自称)。部下さんの教育係。
部下:先輩イジリをいとわない。褒められるのは苦手。
前回:
"一を聞いて十を知る"人ってどんなやつ?
9割の失敗は過去に起きている
「それで・・こんなのを見かけまして」
● 重大損失事例集(平成16年).pdf
「なんだこれ?古文書のデータ?」
「ホント古いですよね、文字も全部手書きですし。でもこういう事例があったようです」
当局に提出した全書類において、〇〇の適用が反映されておらず、書類様式を全てやり直し、当局から是正するよう厳重注意を受けた。原因はシステムX(旧システム)の操作漏れだった。
「・・・これは!」
「そして今回は」
当局に提出予定の全書類において、〇〇の適用が反映されておらず、書類様式を全てやり直した。幸い提出前に気付けたが、期限ギリギリの送付となった。原因はシステムY(現システム)の操作漏れだった。
「とまあ、似てますよね」
「原因もシステムの新旧だけでほぼ一緒だな」
「操作ミスなんて、今でもやりがちですね」
「そうなんだ。やり方が変わっても、ミスが成立する流れは大して変わらない。そういう意味で、『9割の失敗は過去に起きている』とも言える」
「傍から見ると恥ずかしい失敗ですが、正直に資料残してくれてるのは有難いですね」
「『黒歴史』にしなかった先人に感謝だな」
「事前に知ってたらよかったのに」
「ハイ、面目ございません」
情報多すぎ問題|"故きを温ねよ"て言われても・・
「マニュアルに書かれてなかったんですか?」
「システムが何回も変わったし、どこかで漏れたんだろう。早速更新しておかないと」
「あれ?これって・・」
● マニュアル【新】改3.doc 202604更新
● マニュアル【最終】.doc 202512更新
「どっちが正解なんだ・・?」
「中身もほとんど同じですね」
「更新日に従うか、でも「最終」は気になるし・・」
「あ、こっちにもありましたよ」
● マニュアル【更新中】.doc 202607更新
「だぁーややこしい!」
「もうマニュアル作った本人に聞きます?」
「ヘンミだな。すまんがメールしてみてくれ」
「去年異動して以来ですね、元気かな~?」
「頭切れるし、いいやつなんだが・・」
「ちょいクセつよでしたもんね」
・
・
・
「ヘンミさんから連絡きましたよ」
「よし!正解はどれなんだ?」
「・・どれも古いそうです」
「はぁ??なんだそりゃ」
「なので、正解のマニュアルくれましたよ」
「おお!助かった!」
「皆が見れる場所に置いててほしいっすねー」
「全くだ・・どれどれ」
● シン☆マニュアル【他は黒歴史】.doc 202608更新
「・・・」
「・・・」
失敗はなぜ伝わらない?
「なあ?そもそも俺たちって、
何で過去の失敗をよく知らないと思う?」
「(無視した・・)さあ?」
「俺が思うには・・
<過去側>
1. そもそも失敗を伝えるのはイヤ
2. 当人は忙しくて伝えるどころじゃない
3. 未来の参考になる失敗なのかわからない
<現在・未来側>
1. そもそも過去をじっくり調べるのは面倒
2. 情報が多すぎる|ストーリーがわからない
3. 今の失敗が「以前あったかも」と思わない
ってな感じか」
「1. はモチベーションてか気持ち、
2. はしくみ、3. は考え方の問題ですかね」
「そんなとこかな。
3. は『9割の失敗は過去に起きている』の心掛けが大事だ」
「初見の失敗に思えても、細かい原因まで掘れば既出だったりしますもんね。知識不足とか、サボりとか、思い込みとか、傲慢とか、組織の圧とか、結論は割としょうもないミスになっちゃう」
「だな。『99%の失敗は~』まで言っていいかもしれん。まさに『歴史は繰り返す』だ」
「そんなに歴史って、繰り返してます?」
「そらあ、もう。ずっと聖地奪い合うし、革命後は内ゲバするし、おんなじパターンで冬将軍に負けるし、早期講和頼みで先制攻撃するし、もう何度目の石油危機か忘れたし、やたらコロニーとか落とすし、これだから人類は・・」
「しれっと創作混ぜないでください」
失敗中の当人は「今、それどころじゃない」
「2.(しくみ)は難しいですね・・」
「そう。未来側は技術が進んだからまだマシだが、過去側・”失敗中”の人間は応急処置が最優先だ。
『マニュアル?記録? 知るか!!
今それどころじゃねえ!!
誰か偉い奴がやれ!!』てな状態」
「時間がたてば原因究明と説明をしなきゃなので、ある程度はまとまるんでしょうが・・」
「察しの通り、渦中の資料は状況・目的・正誤が刻々と変わり、それらが膨大な量になる。デカい失敗ほど、なおさらクソミソカオスな情報量だ」
「連日解決と資料作りに追われていますもんね。同じ人物たちが」
「その通り。
『あれは結局こうだった』と分かるには、
・冷静に客観的に見れる視点(人物)
・分析に十分な時間
が必要なんだ。現在進行形の当人には厳しい」
「コロナ禍とか、思い出しますね~」
「リアルタイムの記録はもちろん大事だが、それだけだとストーリーになってないから伝わらない」
「当事者まわりの働きがカギですね」
「リアルタイム記録も、ストーリー作りも、説明も、解決も、『当事者が全部責任をもってやれ』は、無茶だ」
「地獄ですね、想像したくない・・」
「だな。でも残念ながら、あるあるだ。
『当時の本人たちが辛くて辞めたから、
失敗原因・解決策は、もう迷宮入り』
という話は後を絶たん」
「ああ・・後で『あの失敗は大したことなかった』とか上層部に言われたら、たまらんですね」
「『担当の当事者全任せ』は戦場に通じるな。
最前線でボロボロの隊長本人に、
『連日の損害報告お願いね。
あと損害の原因と相手陣地の弱点と、
攻略法を分かりやすくまとめておいて。
終わったら戦闘に戻って陣地占領よろしく。
病院行きたい?あなた責任者でしょ』
と上司が言うようなもん」
「鬼ですか・・」
技術に頼るのは?|失敗対策は地道・・
「大量情報こそ、技術で処理できません?」
「AIとかでな。それは俺も期待してる」
「めんどい情報処理、なんなら原因究明・解決案作成までやってくれたら、ラクですね」
「なんとかそういう風に持っていきたいな」
「ただ、判断と行動は人の役割、ですが」
「わかってるじゃあないか。
緊急の失敗時こそ、人が考えて動かないと何も解決しない」
「なおさら平時に技術改革進めたいですね」
「それこそ地道な努力だな。あと失敗対策は、効果が目に見えにくいから、評価も難しいんだ」
「そうですね、
『今日も失敗起きませんでした!
褒めてください!』って言いにくい・・」
「子ども感出ちゃうな」
『誰もが失敗する』
「てか、1.(気持ち)がすごく根深いかと」
「やっぱそう感じるか」
「失敗晒すのイヤですもん」
「わかる。うん、わかる」
「ただ、いざ失敗したときは『事前に教えといてよ!』てなりますね。それも自分が言われる側になりたくないっす。だから、自分のやらかしは普段からメモ共有するようにしてますが」
「素晴らしい。頭が下がるわ」
「・・あざっす」
「(まだ褒められ慣れてないのな)」
「そうだな、誰もが失敗を晒すのはイヤ。同時に失敗を食らいたくないし、食らわしたくない。ならば冷静にみんなで共有した方が、後々良いワケだ。もちろん未来の自分自身のためにもなる」
「失敗も、意外と責められないですしね」
「何でだと思う?」
「?」
「『誰もが失敗する』からだ。
どんなエリート集団でも、超ベテランでも。なんなら優秀な人ほど、しこたま失敗して今がある」
「ふむふむ」
「"みんな失敗してるから怖くない"じゃないが、『誰もが失敗する』という入口から入らないと、全ての対策は無意味。すでに反省している人への叱責・怒号など不毛。だから・・」
「『失敗した人責め』は省かれてるんですね」
「そういうことだ
(真っ当な人間かつ組織なら、な・・)」
「まあ、NO反省の人は怒られるでしょうが」
「それな」
未来・過去への思いやりが"温故知新"を生む
「『誰もが失敗する』
『歴史は繰り返す』という頭があって、
『失敗を繰り返えさないでほしい』という願いがあれば、自ずと後々のために教訓を伝えようとするワケだ」
「・・そんな生マジメな」
「まあ仰々しく思わんでいいぞ。
『後の人(自分含む)が困らんように』と意識するだけでも十分違う。あと、普段から失敗を共有しやすい雰囲気にするのも大事だ」
「過去の失敗を調べる側も、当時の教訓をなるべく拾ってあげたいですね」
「そうだな。資料からだけじゃ分からない、当事者がぜひ伝えたかった事があるはず。『温故知新』と簡単に言うが、過去の教訓を今に活かすには相当な努力と思いやりが必要だな」
「ところで先輩。エラそーに語ってますけど、共有とマニュアルの更新はお願いしますよ?」
「了解・・皆に周知させなきゃな。更新するのは・・」
「はい、"シン☆マニュアル"どうぞ~」
「・・名前、変えていいか?」
おまけ1|『失敗した人責め』の賛否
「信賞必罰」の姿勢は、トップ層ほど相応の責任を負うという"公平感"から強組織を支えます。『泣いて馬謖を斬る』然り。
しかし、トップ層と組織全体がこれを履き違えて、最前線の担当を責めまくり・斬りまくりだと、人材もノウハウも消え失せます。大粛清後のソ連軍然り。(それでも勝つのがソ連の不思議)

熊本市南区の学習塾・日進塾では、「自ら考える」仲間たちを募集中!塾内で県オープン模試を受験可能です。はじめての方も優しく指導いたします。進路相談・体験入塾はHPの「お問い合わせ」あるいは「お電話」にて常時受付中です。いつでもお気軽に、お問い合わせください♬

おまけ2|書物は本質の残りカスにすぎない?
<後日>
「prrr・・ヘンミ久しぶり、俺だが」
《あー先輩!お久しぶりです!》
「元気そうだな、マニュアルの件ありがとな」
《いえいえ!こちらこそ共有できてなくて申し訳なかったですし、ていうか今日日Wordでマニュアル作り&各々管理ってどうなんです?最初っから親システムにマニュアルとアラート組み込めないんですか?そもそもそういうのはトップダウンでやんないと水平展開進まないし、管理者権限がry》
「・・その辺でいいか?上には言っとくから」
《あっ、すみませんね》
「とにかく助かったよ」
《実は先輩・・》
「?」
《あのシステムはクセが強いんで、まだまだマニュアルに書ききれない事が一杯なんですよ》
「何っ??」
《そもそもアレ、業務傍らで全言語化なんて無理ですし、それ読んだところで実際に触らないと使えるようにはなりませんよ。泳ぎの教本だけで泳げるようにならないのと同じで》
「う・・確かに」
《本質は、言語化できないところにあるんです。高尚な書物だろうが、それが世に出た時点で、ホントっぽい残りカスにすぎません。マニュアルなんて真のノウハウの残りカスですよ》
「言い過ぎでは?まあそうかもしれんが・・」
《まあ、今は比較的ヒマですので、"シン☆マニュアル【REBOOT】"でも作りましょうか?》
「もうそれやめろ」
