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特許法 マルチマルチクレームは’22/04/01から禁止☆

 特許法36条6項4号ので省令委任を受けた特許法施行規則24条の3第5号の新設等に伴って、いわゆるマルチマルチクレームが04/01から制限(実質的には禁止)されます。この件について、03/23に審査基準が改訂されました。

 この制限は、実際の出願日(優先日ではない)が4/1以降のものに適用されます。分割出願や変更出願は元の親出願日が基準になります。注意すべきなのは、国内優先やパリ優先を伴う出願の場合は、優先日ではなく実際の出願日基準になることです。このため、優先権を伴う出願であっても、実際の出願日が4/1以降の場合は、制限の対象になります。

 ここで、クレームというのは、特許法でいう請求項のことです。以下の記載では、基本的に、請求項とクレームとを同じ意味で用いています。

1.マルチマルチクレーム

 マルチマルチクレームというのは、マルチクレームに対するマルチクレームです。。。これだけではわかないと思いますので、具体例を使って説明します。以下の請求項1から4を見てください。

 【請求項1】Aを備えるX装置。
 【請求項2】さらにBを備える、請求項1に記載のX装置。
 【請求項3】さらにCを備える、請求項1又は2に記載のX装置。 (マルチクレーム)
 【請求項4】さらにDを備える、請求項1、2又は3に記載のX装置。 (マルチマルチクレーム)

請求項3は、請求項1、2を引用するクレームです。請求項3のような、他の二以上の請求項を択一的に引用する請求項をマルチクレームといいます。
 次に、請求項4は、請求項4は、請求項1、2、3を引用するクレームです。請求項3と同じように請求項4も、他の二以上の請求項を択一的に引用する請求項です。しかし、請求項3がマルチクレームなので、請求項4はマルチクレームではなく、マルチマルチクレームになります。より正確には、他の二以上の請求項を択一的に引用する請求項を引用する、他の二以上の請求項を択一的に引用する請求項が、マルチマルチクレームです。

 なお、上記請求項1~4における構成要素A~Dの組み合わせは以下の通りです。
 【請求項1】A
 【請求項2】A+B
 【請求項3】A+C, A+B+C
 【請求項4】A+D, A+B+D, A+B+C+D

2.マルチマルチクレームの解消

 このマルチマルチクレーム制限を回避するためには、マルチクレームに対するマルチでなければ(複数の請求項を引用するが、これらを択一的に引用するものでない)良いわけです。具体的には、上述の請求項1~4は、以下のようにすれば、マルチマルチクレーム制限を回避することができます。

 【請求項1】Aを備えるX装置。
 【請求項2】さらにBを備える、請求項1に記載のX装置。
 【請求項3】さらにCを備える、請求項1又は2に記載のX装置。 (マルチクレーム)
 【請求項4】さらにDを備える、請求項1又は2に記載のX装置。 (マルチクレーム)
 【請求項5】さらにDを備える、請求項3に記載のX装置。

請求項の数が1個増えますが、金銭的に問題が無いのであれば、マルチマルチクレーム制限を回避することは可能です。

 なお、上記請求項1~4における構成要素A~Dの組み合わせは以下の通りです。 
 【請求項1】A
 【請求項2】A+B
 【請求項3】A+C, A+B+C
 【請求項4】A+D, A+B+D
 【請求項5】A+C+D, A+B+C+D

なお、ツイッターでは、以下のような、EUで見られる手法を提案される方もおられました。

 これらの内容を考慮すると、ごく近い将来、マルチマルチではないけれど、実質的にマルチマルチと同じ内容になる書き方が定着すると思われます。

3.マルチマルチクレームを含む出願の審査

 マルチマルチクレーム制限に違反しない請求項は審査されますが、マルチマルチクレーム制限に違反する請求項、及び 同請求項を引用する請求項は、審査対象にならないようです。

 審査基準(04/01改訂)には以下のように記載されています。

2.2 特許法施行規則第 24 条の 3 第 5 号の違反について
 審査官は、特許法施行規則第 24 条の 3 第 5 号に違反する請求項に係る発明及び同請求項を引用する請求項に係る発明については、第 36 条第 6 項第 4 号及び特許法施行規則第 24 条の 3 第 5 号以外の要件についての審査対象としない

(説明)
特許法施行規則第 24 条の 3 第 5 号は、審査負担の軽減を目的の一つとして、請求項の記載形式を制限するものとして設けられたものである。同条第 5 号に違反する請求項に係る発明について第 36 条第 6 項第 4 号及び特許法施行規則第 24 条の 3 第 5 号以外の要件についての審査対象とすることは、特許法施行規則第 24 条の 3 第 5 号が設けられた趣旨に反することになるだけでなく、適切な請求項の記載形式によりした出願とそうでない出願との間の取扱いの公平性を損なう一因ともなる。よって、同条第 5 号に違反する請求項に係る発明については、第 36 条第 6 項第 4 号及び特許法施行規則第 24 条の 3 第 5 号以外の要件についての審査対象としない。また、同条第 5 号に違反しない請求項であっても、同条第 5 号に違反する請求項を引用する請求項(例えば、同条第 5 号に違反する請求項を引用する単項引用形式請求項)については、同条第 5 号に違反する請求項の記載を引用して請求項を記載するものであるから、当該請求項に係る発明についても、上記と同様の理由により第 36 条第6 項第 4 号及び特許法施行規則第 24 条の 3 第 5 号以外の要件についての審査対象としない

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/kaitei2/document/multichecker_shinsa/02_0205.pdf

 この審査基準について、以下の請求項1~5を使って説明します。

 【請求項1】Aを備えるX装置。
 【請求項2】さらにBを備える、請求項1に記載のX装置。
 【請求項3】さらにCを備える、請求項1又は2に記載のX装置。 (マルチクレーム)
 【請求項4】さらにDを備える、請求項1、2又は3に記載のX装置。 (マルチマルチクレーム)
 【請求項5】さらにEを備える、請求項4に記載のX装置。 (マルチマルチクレームを引用)

 先ず、請求項1~3は、従来通り審査がなされます。次に、請求項4はマルチマルチクレームなので、進歩性等の実体的要件の審査はされません。また、請求項5は、マルチマルチクレームを引用する単項引用形式請求項なので、進歩性等の実体的要件の審査はされません

 つまり、マルチマルチクレームが引用する請求項は、従来通りの審査がなされます。このため、上述の請求項1~5に対する拒絶理由通知では、
 ①請求項4、5のマルチマルチクレーム違反の拒絶理由通知、
 ②請求項1~3の実体的要件違反の拒絶理由通知(無い場合もある)、
の2つが通知されると思われます。

 上述の請求項1~5では、請求項1~3の拒絶理由が無ければ、請求項4、5のマルチマルチを解消すれば、出願の拒絶理由は解消します。

 また、①請求項1~3に拒絶理由があり、最初の拒絶理由通知後の補正等で拒絶理由が解消した場合には、②請求項4、5のマルチマルチが解消されており、他の記載不備が無ければ、出願の拒絶理由は解消します。

 マルチマルチクレームの拒絶理由通知後に通知される拒絶理由通知は、「最後の拒絶理由通知」になります。このマルチマルチクレームの拒絶理由通知後に通知される拒絶理由通知は、①上述の請求項1~3の拒絶理由が解消していない場合、又は、②上述の請求項4、5にマルチマルチ以外の記載不備が残っている場合、に通知されるはずです。

 したがって、マルチマルチ禁止によって、1出願で取得できる権利範囲自体は狭くなりますが、権利化ポイントを絞って権利化して行くという方針であれば、特に大きな問題は生じないと思われます。

4.外国出願への対応

 4.1.外国出願への対応(日本出願を基礎としたパリ優先直接出願)

 日本出願を基礎として、パリ優先権を主張して直接外国に出願する場合を想定します(PCTを利用する場合は後述)。

 まず、USは、以前からマルチマルチクレームは禁止されていますので、今回のマルチマルチクレーム制限では新たな問題は生じません。そもそも、USではマルチクレームに対する追加料金が高額のため、マルチクレーム自体を使うことが少ないと言えます。

 EUですが、マルチクレーム、及び、マルチマルチクレームを使うことができます。

 中国では、マルチクレームは制限されていませんが、マルチマルチクレームは禁止されています。

 このような状況のため、日本出願では、明細書内に、請求項の内容をそのまま写しておく(マルチクレーム、マルチマルチクレームの両方を)ことが確実と思います。
 少なくとも、①出願時の請求項の内容と、②ベストモードの内容(出願時請求項ではない場合)と、③将来的に分割を考えているのであれば、その際の請求項の内容と、は、そのまま明細書に入れておくべきと思います。

 なお、請求項の内容を明細書内で分散して説明する(構成要素ごとに説明する)ことは普通に行われていると思いますが、出願時の請求項の内容をそのまま記載しないこともあるようです。請求項の内容をそのまま写しておくのは、後で補正等をする際に新規事項追加と指摘されないための処置です。

 4.2.外国出願への対応(日本出願を基礎としたPCT)

 オンダ国際特許事務所さんのHPに記載されている「マルチマルチクレームの制限について」という記事には以下のように記載されていました。

 この内容が正しければ、

マルチマルチクレームでPCT出願した後、国際調査報告を受け、各国移行時に請求項を補正する

という方法もありうると思います。

●情報元・参考にした情報
特許庁 マルチマルチクレームの制限について
佐藤総合特許事務所_日本の特許出願においてもマルチマルチクレームの制限が4月1日から施行される見通しです
浅村特許事務所_日本 マルチマルチクレームの取扱い変更
オンダ国際特許事務所_マルチマルチクレームの制限について

●加筆修正前の記事
特許法 マルチマルチクレームは’22/04/01から禁止

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