Esco vs Jigga : Final Round
はい。クソ長シリーズの最終回。
Jay-zが仕掛け、Nasのターン後、この戦いで最後のDiss音源となったNas/Got Yourself A GunとKnoc-Turn’al/Bad Intentionsの2曲を使ったフリースタイル"Supa Ugly"で「Nasがそう来るなら」と言わんばかりにプライベートに踏み込んだ内容をスピットしております。

ジャブとして
This nigga never sold Aspirin. How you Escobar ?
(コイツはアスピリンすら売った事ないのに「エスコバー(有名な麻薬王の名前)」だなんて名乗ってんだ?)
と、シニカルで笑えるラインもありますがこのフリースタイルの肝はTakeoverにて歌われた
Y'all niggas gon' learn to respect the king
(オマエらキングを敬う事を学んだな)
Don't be the next contestant on that Summer Jam screen
(次のサマージャムのスクリーンでネタにされたくないよな)
Because you-know-who (Who)
(だって、誰の事かオマエも知ってる)
Did you-know-what (What?), with you-know-who (Yeah)
(オマエも俺がヤツと何をヤッたか解ってるよな?)
But just keep that between me and you for now.
(まあ、でも今は俺とオマエだけの秘密にしといてやるわ)
という意味深なラインに対しての生々しい暴露になります。
それがこちら。
Me and the boy A.I. got more in common Than
(オレとアレン・アイバーソン(バスケ選手)には共通点がある)
just balling and rhyming, get it ? More in Carmen
(大儲けしてるってライム*をしてるの解るだろ?更にカーメンについてだが)
I came in your Bentley backseat (Damn) Skeeted in your Jeep (Woo)
(俺はオマエのベントレーの後部座席で彼女とヤってやった)
Left condoms on your baby-seat (Woo)
(で、コンドームをベイビーシートに置いてきてやったぜ)
* 「バスケをする」という意味を成す動詞としての「balling」と「大儲け」の意味を指すスラング「ballin」を掛けている
それはNasの愛娘であるDestineyちゃん(近頃Daughtersという曲で成長を歌われた子)の母親であるCarmen Bryanという女性との不倫関係にあった事やその情事をぶっちゃけって
(実際にCarmenもJay-zとは9年間不倫関係だったことを認めている)
And since you infatuated with saying that gay shit (Faggot)
(で。オマエもゲイネタを熱心に言ってたけど)
Bitch, you was kissing my dick when you was kissing that bitch (Oh), Nasty Shit.
(オマエがあのビッチとキスする時、オレのXXXとキスしてるようなもんだぜ、気色悪ぃ)
・・・と散々言われたゲイネタに対して、中々に下品なラインで返したりしてました。
実は以前からこの不倫話はウワサされてはおりましたが事実であり意外なトコロでNasとJay-zは根が深かったのも驚きです。
が、内容はある意味でハードコアなモノだったもののリスナー側の反応はEtherの内容の衝撃さ、ライミング等と比較されては「あまりリリカルじゃない」とか「Beefに関係ない人物を出すとかダセエ」と微妙。というか若干滑った感が強くて、Jay-zはお母さんから「女性軽視が過ぎる!」とこっぴどく怒られたようでこのフリースタイルを発表した翌日にはラジオで謝罪までした位のやらかしです。
そこからお互い冷静になったのか以降は派手なDissの応酬はすっかり鳴りを潜め、世間では「どっちがバトルを制したか?」という論争の的になり、実際にラジオ局Hot97が取ったアンケートでは「Nas52%、Jay-z48%」と僅差でNasの方に軍配が上がった形になりました。
ただ今でもこの議論には結論がついておらず、勝者は明確ではない印象です。
個人的にも当時を振り返るにお互いにアルバムの発売が控えていたタイミングであったのである意味プロモーションの一環で仕掛けたバトルとも見える部分もあるせいか血が流れるようなヒリついたテンションは感じず、むしろ「次はどんな曲やアクションで返すのか?」くらいにエンタメとして楽しみにしていた部分もあり、蓋を開けたら単にニューヨークを代表する怪物達がスキルとスキルでぶつかった、さながらゴジラ映画のような戦いだったな~。という感想です。
ただ上記で「派手なDissの応酬は鳴りを潜めた」と書いたもののまた以前のように明言を避けつつもお互い楽曲やフリースタイルでまた小言を打ち合っているのは終わってはいませんでした。
具体的なアクションとしてはJay-zが「スポーツとしてNasとボクシングでケリ付けてもいいよ~笑」なんて提案があったり
それに対してNasは"Made You Look"にて
yo, my mood is real rude. I lay you out.
show you what steel do,Mobsters don't box
(ヨォ、マジでイラつくぜ。オマエをブッ倒してやりてえ。本当の銃の使い方ってヤツを見せてやるよ、本物のワルってのはボクシングなんざしねえんだよ。)
と言及したり
そしてBETの人気プログラムだったRap CityにJay-zが出演した際に番組内の名物企画であるゲストによるフリースタイルセッションにて
they shootin' nobody dying, somebody better put somebody's body on somebody's iron somewhere soon or somebody's lying
(「撃った」とか抜かしてるけど誰も死んじゃいない。誰かが誰かの死体をどこかに積み上げない限り誰かが嘘をついてるって事だな)
と、前後もNasに当てたDissラインもありますがMade You Lookのフックを引用したアンサーっぽい皮肉を言ってみたり等々の小さなアクションはありましたがTakeoverやEtherの時のような盛り上がりが嘘だったように話題自体が落ち着いていました。
ところがそれから2、3年ほどの時が流れて2005年10月にJay-zが「I Declare War」というタイトルのコンサートにて途中、Jay-zがNasをステージに呼び出し突然仲直りをしました。

二人でDead Presidents pt.2を歌っていますがフックはNas本人、2バース目はビートそのままにNasは自身の楽曲であり、声をサンプリングされた元ネタであるThe World Is Yoursをキックする豪華さでJay-zがNasのバースも歌ってるのも何となく感慨深いですね。
当時はまだYouTubeなんて無くて、ポータルサイトにアップされたこの動画をリアルタイムで見た時の衝撃は忘れらないです。
ところでコンサートタイトルが「I Declare War(宣戦布告)」と銘打っているのに蓋を開けてみたら歪み合っていた2人の仲直りという真逆の現象が起こったのには裏話があります。
それは当時Roc-A-Fellaでの内部分裂でJay-zとレーベルメイトなのにバチバチに対立していたCam'ron、Jim JonesらDipset勢に対して2001年のSummer Jam時のMobb Deepと同様に恥ずかしい写真等々をまた面前で晒上げて評判を落としつつ、タイトル回収とばかりに本格的なBeefの口火を切ろうと画策。
探偵を雇ってネタを探していたようですが思ったより身辺がクリーンであのレベルのネタが出てこなかった為に諦めてNasと仲直りする事にした。との事です。
そして元々、移籍話自体がショー以前から水面下で進んでいたのかこの和解から約3か月後の2006年1月にNasはデビューから契約していたColumbiaを離れ、当時はJay-zが社長を務めていたDef Jamへと移籍する事になります。
まるで少年漫画のように敵キャラやライバルキャラが仲間になるようなアツい展開でこの長いBeefは幕を閉じました。
実はこのColumbiaからDef Jam移籍期くらいの時期にポコポコと出てきたお蔵入りになった数曲の事を書く流れの一環として起こったBeefの件は外せないなと思って書いていたら、主題よりも遥かに長くなってしまったのがこのシリーズの生い立ちです。
いやはや、長い事お付き合いありがとうございました。
