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【七峰】かくして、月の下で 〜宝塚歌劇『悪魔城ドラキュラ』感想

『チェンソーマン』観に行こうと思って映画館に行ったら、たまたま宝塚歌劇団花組による「『悪魔城ドラキュラ』 ~月下の覚醒~」の千秋楽ライブビューイングがあったので、そちらに行った。
 以前『新作歌舞伎 風の谷のナウシカ』をここで観たが、ポップカルチャーをどのように舞台演劇に翻案するのか、興味があるのだ。

『月下の夜想曲』再解釈の巧みさ

『悪魔城ドラキュラX 血の輪廻』と『月下の夜想曲』のストーリーについて自分はPSPの『悪魔城ドラキュラ Xクロニクル』でおおまかに体験済み。
 特にアルカードの母リサが魔女として火刑に処されるところなどは印象深く舞台がそのシーンに入ると「ああっ……!」と思ったし、その後のサキュバス戦も含めてシナリオの重要なポイントになっていたので、非常に楽しめた。

 祭りの日に死者の霊に会えるか否か、というのがアルカードと母の印象的な死別(とサキュバスの罠)にかかっていて、最後には逢えたので(アルカードが! リサと!)ぽろぽろ泣いてしまった。「もう会えない人に一目でも会える」っていうのに弱いんだな、俺……。

 そんなドラキュラ公とリサ、リヒターとアネットに対して、アルカードとマリア・ラーネッドとの愛のゆくえが三者三様に展開してゆき、驚いた。

 ゲームだけだとファンの間では「血の輪廻」から「月下」でのリヒターやマリアの変化はあまり好意的に受け止められずじまいだったように見受けられるのだが、今作のマリアは幼い頃に出会ったアルカードへの一目惚れを引きずりながらも大人に成長した一人の女性として描かれており、だいぶ好感が持てた。

「なぜドラキュラは悪魔城から一歩も出ないのか」「なぜリヒターはシャフトのいいように操られるのか」という点についてのエクスキューズは若干の力技のようにも感じられたが、モータルもイモータルも芯のところでは人間くさい「弱み」があり、それが良いようにも悪いようにもはたらくのだ、ということでまとめようとしているのはわかった。このへんは、ゲームでも消化不良なので仕方無し。

 そして観劇中、ずっと「この感じで『暁月の円舞曲』も観たいなあ」と思っていた。近未来の日本でドラキュラという不思議な世界観だし、ドラキュラとアルカードの物語が(一応)地続きなので、かなうなら本作の続編としてふさわしいように感じた。

 他に言えば、ドラキュラ公がゲームの絵や若本氏の口調によく似ていたので面白かった。マントを使った舞いやリヒターが鞭を振るう演技に惚れ惚れした。ゲームソングの使い方もゴシックとメタルの融合である「悪魔城」らしさが満点だった。

 レビューから終演まで見終わった頃にはDVDを買って擦り切れるまで家で観る意志を固め、売店に行った……それからの記憶はない。

(感想第2弾以降に続く)

追記

 某すきーで書いたものだがべつに隠す気もないので挙げる。

 なんだかんだ言っても悪魔城ドラキュラシリーズは10代にニコニコ動画でゲーム動画や曲のアレンジ動画見まくってたからそれなりの思い入れってやつはある。
 ただドラキュラ対ベルモンド家の物語としてはとうに完結していたし「メトロイドヴァニア」として精神的系譜は続いてるけど「悪魔城ドラキュラ」って作品はすっかり過去のものになって寂しいな……って思ってたけど、宝塚歌劇のは「吸血鬼ドラキュラと人間との悲劇の先にある、それぞれの男と女の愛と勇気の物語」に再解釈されていて、理想的なリメイクだったな(異論は認める)。
 今の現実がこんなだから、「人間は愚かで救いがたいばっかりじゃないよ」ってテーマを投げかける(同時に「人間はずっと愚かだよ」と突っついてもいる)ことが、ベタだけどそう信じたいよなって思うし……それを化け物呼ばわりされながらその人間を救う・愛するアルカードが主人公なのがいいんだよな。
 でも一番なのは血の輪廻のょぅΙ゛ょが好きな男性ファンから心ない声を浴び続けてた(ように思ってた)マリア・ラーネッドがあの姿で一人の女性としてたくましく舞台で生き生きと動いていたのが よくて……
 月下の夜想曲やっててもマリアはアルカードのこと好きなんだなーって最後わかっても「で?」って思うわけじゃん。ゲームとしてそんなに絡みがあるわけでもないし(重要アイテムは持ってるが)。
 だけどこんなに「悪魔城の外」でアルカードとの絡みがあって、月夜に空飛んでデートなんかしちゃったりしてて、そもそも幼い頃に出会った時から「一目惚れだった」ってことに舞台ではなってるから、ああそりゃずっと追いかけるほど好きですわ:oshiawaseni:って思うのよ。
 オタクがクソとは言わんけど、なんか今まで魅力が感じられなかった人物に光が当たって、「ああそういうことだったのか」って腑に落ちる感覚が忘れられないの(サカナクション)。こんなんなんぼあってもいいですからね。滋養がつく。
 noteのほうでも書いたんだけどアルカードの母リサは魔女狩りに遭って火炙りに処されて、その時の遺言がヴァンパイアハンター・アルカードのオリジンであり、サキュバスがそれを侮辱して彼がブチギレる引き金になるわけじゃん。
 一連のそれがしっかり再現されてて、しかもそのことが親父のドラキュラを改心させるラストピースになる。ここは凄かったね。そこまでやるとは思わなかった。
 しかも「満月の夜の聖霊祭に祖霊が帰ってくる(改めて聞くとお盆みてえだな)」日に、ちょっとだけ会えちゃうんだよね。
 泣くつもりなかったのにぽろぽろ泣いちゃった。おれがリサとアルカードの死別を知ってから何年越しの悲願なんだろう? ふたりがあんなに安らいだ顔で踊りを交わすなんてさ。
 しかも! ドラキュラもリサと和解できちゃうんだよね。あの二人に草葉の陰から見守ってもらえたらアルカードとマリアの赤い糸も切れないよね。:oshiawaseni:
 10月からNHKEテレでブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」の100分de名著をやるから個人的にいま吸血鬼ものがアツいんだけど、分けても和製ドラキュラものの王とも言える「悪魔城ドラキュラ」で今こそ見たいと思える舞台演劇でほんとうによかったね! おわり!

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