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【七峰】逆さ城で乾杯(チアーズ) 〜宝塚歌劇『悪魔城ドラキュラ』『愛, Love Revue!』感想(DEEP編)

 前回までの感想はこちら。

 宝塚観劇初見の感想はいくらあってもよいと聞いたので、味を占めた第2弾はDVDによる再視聴を含めつつその魅力を深く掘り下げてゆく。

『悪魔城ドラキュラ』小ネタへのツッコミ

・村のシーンでは最初「フランス革命のそばで平和ボケの村? 妙だな……」って思ったけど、神父に化けたオルロックが悪だくみをしているだけで本当に聖霊祭で浮かれているだけだった。ドラキュラ復活を企む邪教の村かと思ってごめん。
 因習村の見すぎだった。いや「悪魔城」って本当にドラキュラ復活を目論む悪魔崇拝者だらけなんだよ……「血の輪廻」もそうやって始まるし……。

・ル・サンクによると渡守はドラキュラの使い魔であることが言及されていた。
 つまり死者の世界に足を踏み入れた時点でサキュバスの術中であり、ドラキュラ側の罠ではあるのだが、いわばあれが「カロン」とか「三途の川の渡守」であることは原作再現だから知っていたし、初見では妖精たちの舞い(業界用語で「群舞ぐんぶ」と言うらしい?)が月夜に柔らかく美しかったので、なんというか母に会えると見せかけてロベスピエールにしか会えないところも含めて、そんなに危険だと身構えた気分で見るものでもないと思った。

・ル・サンク初読でなにより驚いたのはマグヌス戦にかかる曲「魔性の宴 ドゥエリストリミックス(ル・サンクでは「デュエリスト」表記)」のこと。いやたしかに「ドゥエドゥエドゥエドゥエ……」って言っとるわ!!
 でも月下の夜想曲はドゥエじゃなくて高速バックステップでは……? というところに違和感があったが、関係者のインタビューで「(おそらくTASやRTA動画などをふまえて)強いプレイヤーがアルカードに乗り移ったかのような戦いぶりの時にかかる曲(大意)」と言われると、毒気を抜かれる。
「悪魔城はゲームである」というところに真摯に向き合っているところが面白いし、やはりニコニコ動画世代としてはそのスーパープレイ動画こそが「悪魔城だなー!」って思ってしまうのだった。あれをみんなで「ゴキカード」と呼んでいたことは忘れてください

・マリアがどうやって飛んでいるのか映像モニタではよくわからなかったから、最初は「アルカード(コウモリ化)が抱えていたのに落としたのか?」などと思った。ル・サンクによると聖獣につかまって飛んでいたのがつい手を離してしまって落ちてしまい、アルカードがそれを咄嗟に助けるという筋書きであった。

 このアルカードに対するマリアの、運命の人とせっかく再会できたのに理想と現実は違っていて、途中で仲違いもするけどやっぱり好きで、最後にはこころが通じて結ばれるというのはまさに女性向けラブロマンスの王道という感じがして、わかつきひかる著「文章を仕事にするなら、まずはポルノ小説を書きなさい」で読んだところだ! と違った意味で得心がいった。

「幼い頃からの一目惚れ」「勝ち気なヒロインは彼氏の弱腰な態度に自分の見込み違いを疑うが、彼氏はわだかまりが解けないだけでヒロインの期待通りの男ぶりを見せる」「ヒロインのおかげで彼氏はわだかまりが解け、彼氏のおかげでヒロインは安定な地盤を取り戻し幸せになる、WIN-WIN関係」これなのである。

・公演の内容がDVD収録のタイミングと千穐楽まででいくつかブラッシュアップされている。

「子どもを嘘の優しさで騙すなんて……酷い仕打ちよ」とマリアが自身の感情を吐露するセリフのニュアンスの違い、リヒターが無表情でアルカードを痛めつけていく洗脳されし猛者らしい戦いぶり、ロベスピエールの処刑に死神として立ち会い鎌を振るうデス、足元から崩れ去るように消えてゆく印象的なオルロックの退場シーン、最後にはけていくアルカードの満足げな「ニヤリ」などなど千穐楽ライブビューイングでしか見られなかった部分はまた別の円盤が出るのを待たねばならず、しかしもしも発売されるのなら嬉しい悲鳴をあげたいところだ(編注:例年通りなら1年後か2年後に宝塚専門CSチャンネルスカイステージで放送されます)。

 こうして名場面を振り返ってみると、剣を振るい古風なセリフ回しを使って弱きものの危機にさっそうと現れるアルカードはいかにも時代劇や昭和ヒーロー番組のなかから飛び出してきたかのような感じで、西洋の世界観と日本人ごのみのする演出とのマリアージュがおもしろいな、と思う。はたして月組の「侍タイ」はいかに?

『愛, Love Revue!』は〝宝塚歌劇らしさ〟の宝石箱か

 ある種のオムニバス形式で場面ごとに曲の雰囲気も世界観も変わる『愛, Love Revue!』は記憶をたどるだけではひとつひとつの感想がつけられず、前回の記事にはあぶれてしまった。

 このレヴューはだんだんと「もうお色直ししたのか……」という凄みがまさってくる。
 目と耳をすませると男役は勇ましく、女役は柔らかく舞う性格づけが伴奏においても徹底されているのがよくわかった。そう考えてみると『悪魔城ドラキュラ』ファンをも唸らせる「ドラキュラ城」「Bloody Tears」「Vampire Killer」の選曲は、どれも男役のテストステロン的な効果演出にマッチしていた。

「追憶の唄」や「初恋」といったサイレント劇のようなものももちろん良かったが、あの妖艶な「Another Day in Paradise」から始まる、とてもアメリカンなギラギラとした「Bad Power」「Gigolo」のディスコ・サウンドに自分はうっとりと身を委ねて座席で小さく縦ノリしていた。
 だんだんとスピードを増してゆく群舞には男衆が囃し立てながらダンスの腕前を競う「男比べ」というイメージがぴったりで、RRRの「ナートゥ」を連想した。
 そういえばRRRも宝塚でやってるんだよな……話題作とのコラボが手厚い。

 全体的に往年の公演から抜粋した内容であって「今っぽさ」はないのも至極当然なのだが、「こういう宝塚の歴史があって今に至るのだ」ということが新参者にも理解でき、クライマックスのスター羽根と花組の勢揃いで「これぞ宝塚」というものが見られるつくりになっている。

 ゲームファンを自称する自分としては往時の「サクラ大戦」リアルイベントの熱狂を文面でしか知らず、寂しさを感じていたがこうしてその「原典」にやっと会えた気分だ。

「宝塚の本気度」。各所で言われていることだが、こうももてなしが手厚いと、自分も宝塚が好きになってしまう。

 この魅力をなんとしてもそのままで家に持ち帰りたい……という気持ちがDVDを買いに走らせたのであった。

 なんというか血の通わぬデジタル化社会、容易には手も触れられぬコロナ禍以後の世界にあって、あらためて肉体芸術(総合芸術)のあたたかみと凄まじい情熱の気にあてられたようで、夢の世界からなかなか帰れない。

「在るべき所に帰れ!」

『ミュージカル・ロマン:悪魔城ドラキュラ 〜月下の覚醒〜』より

(第3弾に続く)

#ネタバレ

#アートを楽しむ

#宝塚歌劇団

#悪魔城ドラキュラ

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