【第4章】 第99話

【第4章】第99話 バニラアイスの時間

「そんな事が…」
クラリスが、今回のセラフィナたちの発言を
ヴィクトルたちと共有した。

レオンハルトは、潮騒の魔女の家で療養中なので
論外である。

リオは、少し離れた位置で
聞いているのかいないのか

真琴は、再びくらの計らいで別部屋に寝ている。

「実際、真琴さんの素性とは?」

クラリスたちの両親であるグレアムそしてエマが
その質問を投げかけてきた。

今現在、ヴィクトルが当主代行とは言え、彼らの邸宅に
居候しているのである。
素性気になるよねぇ?

「ここは、異父母兄弟であるリオが説明だな」
ヴィクトルがリオへ話を振った。

リオは、思案する。
全てを話すべきか否か。
まあ、本人が居ないからなあっと言葉濁す形で話し始めた。

「真琴は……ここから遠く離れた
地方の町で育った子だよ
貧しくて…
ご両親の理不尽な
迫害の中から僕が救ってあげたの!

弟って嘘はついたけどさー

真琴は…真琴は大変だったんよ!」

っと、嘘とほんとを織り交ぜての僕天才演技力!

「まあ、真偽は後で確認するとして、
森での探索中に研究対象としてうちに来てもらったんだ」
と、ヴィクトルがグレアムに説明する。

「確かに、真琴さんって一言では終わらないわね」

「勿論ですお母様!私の研究にも
必要不可欠な人材なんです。理解してください」

「あなた達二人がそこまで懐くのも凄い事だわ」

両親は、子供達(そう言うにはいい歳だが)が
認めている真琴という存在に納得はした。

「私たちにとっては、命の恩人だものね」

「そーそー、僕も真琴も命の恩人!」

胡乱な瞳を浴びるリオだった。



「ところでこれからどうするんだ?」
ヴィクトルが聞く。

「まずは、王都に戻りましょう」

「戻るべきだろうな。流石に」

身体の問題もひとまず落ち着いたので、
両親は王様に経過報告を行うらしい。
15年ぶりの帰還だ、色々と疲れそうだなと皆思う。

黒曜城の件は、セラフィナとルナミナが引き続き
監視を勝手出てくれた。と言うより他に適任いない。

後の流れは…とリオを見たが

「僕も真琴もみんなと一緒に王都に戻るよ。
レオンハルトの容体がまだ心配だから、
彼はここに残す形かな?」

「そうね。私が看病します。テレシアさんも面倒を引き受けてくれましたし、私も彼女の家で治療法学びます」
とフィオナが言った。

では、王都に戻るのは
グレアム、エマ
ヴィクトルとクラリス
真琴とリオの6人となった。



大きな問題は特に解決したわけではない。
ないが、ひとまず置いといて〜な感じ。

そしてそんな中である。
レオンハルトとフィオナと少しの間離れることを
聞いた真琴は、町へと出ていた。

出来ること。それは、バニラアイス!

必要な材料を買い求める。
リオをお供につけたら、いつの間にかに
フルーツたくさん増えてました。

「卵とかも買ったからね。
僕はフルーツ・アラ・モードのアイス乗せ!」

なんてちゃっかり注文してくる。

「氷は、リオが作ってくれる?」

何言ってるの?的な目で

「氷と言ったら、セラフィナいるじゃん」

「…バニラアイスは、何人前?」

「パーティー前!」
言って、リオは走り出した。

潮騒の魔女の館でバニラアイスパーティになりそう。



潮騒の魔女の館に戻る頃には、空はすでに薄い橙色に染まり始めていた。

「……で、これ本当に全部使うの?」

クラリスが、山のように並べられた果物と卵を見て眉をひそめる。

「使うよ?だってパーティーだし」

リオは当然のように言い切った。

「パーティーって何人規模の話をしてるのよ」

「全員」

即答だった。

真琴は小さくため息をつきながら、買ってきた牛乳を鍋に注ぐ。
火を使わない代わりに、別の“調整”が必要になる。

「セラフィナ、氷お願いできる?」

館の奥から、ひとつ返事が返ってきた。

『了解しました』

空気が一瞬だけ静まり、次の瞬間、庭先の水桶が薄く白く染まり始める。
自然な冷却ではない、“状態の固定”に近い静けさだった。

「やっぱり便利だなあ……」

リオが感心したように呟くと、ヴィクトルが横目で睨む。

「その言い方はやめろ」

「だって便利じゃん」

悪びれない。

エマは少し笑って、キッチンの様子を見渡した。

「こんなふうに賑やかになるなんて、久しぶりね」

「この家がこんなに楽しそうな声で満ちるのも
何年ぶりじゃろうて」

テレシアが眩しそうに眺めた。

その言葉に、誰もすぐには返事をしなかった。

ただ、鍋の中だけが静かに熱を帯びていく。

真琴は砂糖を入れる手を止めずに言った。

「……こういうの、嫌いじゃないでしょ?」

「誰に聞いてるの?」

リオが即座に返す。

「全員」

一瞬の沈黙のあと、クラリスが小さく肩をすくめた。

「嫌いではないわね」

ヴィクトルも短く頷く。

「同意だ」

エマは少しだけ目を細めて、鍋の中を見つめた。

「不思議ね。こんな状況なのに」

その言葉に重なるように、外から風が吹いた。

黒曜城の件は終わっていない。
王都も、これから向かう先も、安定しているとは言い難い。

それでも。

鍋の中の甘い香りだけは、確かに“今ここ”にあった。

「できたら、アイスの上に全部乗せていい?」

リオの声で、現実に引き戻される。

「ダメ」

真琴の即答に、リオは少しだけ不満そうな顔をした。

そのやり取りを見て、クラリスが小さく笑う。

「……平和ね」

誰かが返事をする前に、セラフィナの声が静かに落ちた。

『冷却完了しました』

その一言で、館の中に小さな“宴の準備”が整った。

ルナミナがセラフィナの横で
姉の分の器を持って待機している。

まだ何も終わっていない世界の中で。

それでも、バニラの甘さだけは、確かに始まろうとしていた。

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