【第5章】 第109話
【第5章】第109話 偽りの婚約と小箱の光
王宮ー王様の居城。第一王子も第一王女も住まう。
皇后のみ皇后宮に住んでいる。
昔は、王子も王女も皇后宮だった。
そういえば、王様には側室がもう何人かいたと思ったけどと
クラリスは、思った。
いつの間にかに、変わっていく世情。
クラリスは、今、王宮の本宮に来ていた。
仕事は、王宮図書館だった。だった過去形である。
「第一王子の婚約者様になられるからには…」
と、王宮の一室を居室せよと案内された。
明日からは、婚約者として相応しい教育だそうだ。
「まだ、書類にサインもしてないのに」
クラリスは、深くため息をついた。
居室は、豪奢に飾り付けられ、クラリスの趣味など全く解していない。
王位継承者連なるものに相応しくあれって建前が前面に出ている部屋だ。
服装も変えられた。
普段は、質素に図書館員としての制服だった。
今は、コルセットを閉めてのドレスだ。
「本に埋もれて、寝袋で過ごしたい」
切に願ってしまう。
窓から風が流れて来た。
もう、夜だ。夜風が肌に冷たい。
閉めようと窓に近づいたら声がした。
「誰か部屋にいる?」
リオの声だった。
慌てて、クラリスは部屋の鍵を閉めに行った。
まあ、何かあれば外側から強制的に開けられてしまうのでしょうけど
「大丈夫。今は1人よ」と、言った瞬間に
リオは、空間に浮かぶように出現した。
「便利ね。私も習得したいわ」
「ルナミナは出来るけど?人間は難しいか」
(存外に自分は人間じゃないって言ってる?)
「リオ、機嫌悪い?」
「まあ、君ほどじゃないよ。それよりもこれ」
と言って、エマから託された小物入れを渡した。
「エマからさ、中に真琴の手紙とか入ってるって。
その小物入れは、古代遺物だから君以外のものは中見れないからね」
「うん。知ってる。昔、お母様におねだりして…
大人になったらね言われたものよ」
「そっか。1人の時にこそっと見て」
「みんなは?」
「心配してないと思う?」
「まあ、神殿の地下牢に繋がれたセルディンよりマシって思おうよ。大丈夫!僕がいる限りは千人力だからね」
「クスっ、リオが千人いても頼りない〜」
「何を〜僕は、優秀な情報屋ですから!」
「はいはい。で、真琴達は、元気?」
心配してると聞いても聞いてしまう。
「それがさあ、聞いてよ僕に黙って出掛けちゃったんだよ!」
リオの不機嫌の理由これかぁと思った。
フィオナとレオンハルトも一緒に出かけたと言った。
リオにはちょうど第一王子の包囲網前に王都を抜けられたらしいとまでは情報が入っていたらしい。
「そっか」
そこでドアがノックされた。
「クラリス様、ドアをお開けください」
クラリス付きになったメイドの声だ。
「じゃ、行くね。また来るからさ」
言って、また来たように空間に消えた。
そこにメイドが入って来た。
「どなたかとお話を?」
「私は、一人よ。独り言じゃない?」
そうメイドは聞きながら、部屋の机の上の小物入れに
気がついた。
「こちらは、この王宮のものではございませんね?没収させていただきます」
言いながら小物入れに手を伸ばすメイド。
「いい加減にしなさい!私がいつまでも大人しく言うことを聞くと思わないで!」
言って、メイドの手がクラリスの水魔法で弾かれた。
尚も近づこうとするメイド。
クラリスの全身を水魔法の渦が周る。
「はいはい!その辺で」
パンパンと手を鳴らしながら、第一王子が入って来た。
「小物入れの一つくらい許してあげてよ。
僕の大事な人をこれ以上追い詰めないであげて?」
「追い詰めている本人に言われても嬉しくないわ」
クラリスは、水魔法を収めて言った。
「追い詰める?僕はちゃんと順序立てて、話を通しているよ。
昔から僕の気持ちは言ってきたし、両親が戻ってきて改めての婚約申し込みじゃないか、問題ある?」
はぁーーとクラリスは、深く息を吐き、
「私はお受け出来ませんと初めから断ってますよね?」
アレクシス王子は、クラリスの前で言った。
「それを問題だと捉えるか否かは攻略次第だよね」
一瞬、ゾッとする眼差しを感じたと思った。
だが直ぐに、いつもの飄々とした表情に変わり
「気持ちなんて曖昧なものいくらでも変えられるよね?」
そして、アレクシス王子は、メイドと共に部屋を出て行った。
ドアの外でメイドに耳打ちする。
「あの小物入れの中身を確認しろ」
メイドは黙って一礼した。
⸻
「はあ、やっぱり大嫌いな奴」
子供の頃から苦手だった。
同じ年頃の子供達は、よくお茶会に呼ばれた。
高位貴族のご子息、ご令嬢達。
私は、母がいれば母の影に。一人ならば壁の花に。
目立たず、ひとりで過ごせればそれでよかった。
なのに、アレクシス王子は、付き纏った。
「君は他の子達と違うね?」
最初の言葉はそんな事だった気がする。
別に親のためとか、将来のためとか打算を
全く考えていなかっただけ。
そのおかげで、社交デビューしても
他の令嬢達からは嫉妬の嵐。
この特異な髪色のせいで男性からは引かれてたしな。
「あの髪色は少々不気味だよね?優秀な遺伝子に繋がるなんて考えただけでもゾッとする」って面と向かって言われた事があった。
でも、それはお兄様の逆鱗に触れたし、アレクシス王子の耳にも入ったとかで彼は王都に居られなくなったって聞いたな。
クラリスは、昔の事を思い出しながら、
小物入れに手をかけた。
カチリッ
蓋がゆっくりと開く。
入っていたのは、無限付箋紙が2種類と
真琴からの手紙。そしてフィオナの魔石ペン。
私の魔石ペンは、取り上げられてしまったから
無限付箋紙は、無地のものと何やら描かれた物
描かれた無限付箋紙に指を当てると、
ハラハラハラハラと一枚一枚が飛び立った。
部屋の壁一面に次々と貼り合わさっていく。
貼り合わさった無限付箋紙は、エマが見た物
クラリスが古代遺跡に行った時の服装に
両親とヴィクトルが肩を抱きしめて、
周りには見知った顔が並んでいる。
後ろに立っている極悪片目グリズリーの店長には、
笑ってしまった。極悪なのになんて…なんて…
手紙には、絵が一つ『👍』真琴らしい。
色々書いては消した痕跡が残ってる。
でも、これが一番伝わると思ったのだろう。
魔石ペンには、フィオナとレオンハルトの励ましの言葉が入っていた。
無限付箋紙を回収し、手紙もペンも小物入れに戻した。
母からこの小物入れの事は聞いている。
心強い家族達。私は、負けない。
「やっぱり、王子様――貴方は前提が最悪なの!」
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