【第4章】 第86話
【第4章】第86話 城に出口はない
黒曜城ーー相変わらずの真琴囚われの部屋
「サムズアップに気を取られたけど、
何このメモは?」
一枚一枚外して、順番に並べてみる。
「戻ったらバニラアイス作れって?」
バニラアイスのレシピに疑問符を浮かべて
蜘蛛ちゃんズをみる。
頑張った、頑張っよって一列に並んでる。
「えらいねー。自由にしていいよ」
ピッと一礼して、姿を消した。
「王都の騎士さんより礼儀正しいわ」
城の見取り図を頭に叩き込む。
外と繋がりもできた。
彼らもじっとしてはいないだろう。
「何か動きがあるなら今夜かな?」
いつでも動けるように。
「あの首無し男の巡回時間でもわかればなぁ」
あれから姿を見ていない。
城の隅々まで、
棺桶を引きずるように歩いているのか?
「次に来たら、外だな」
男が通れば、扉が開く。
ルクレツィアよりも先に通り過ぎるのを祈るばかりだ。
⸻
「道繋がります」セラフィナの言葉が合図だった。
「待って!私が先に行くわ」
ルナミナが斥候を申し出る。
「中が変わってたら、
入りました全滅ですってなりやすいでしょ?」
「ルナミナの言う通りよ。
ルナミナが先に行って、他は私と一緒に行きましょう」
セラフィナにもそう言われて、
ヴィクトル達は納得した。
慌てても敵の本拠地。
ルクレツィアにもお父様にも
太刀打ちの目処は立っていない今は、
隙を見つけての隠密行動しかないのだから。
⸻
黒曜城ーー今は、何処かわからない場所
ルナミナが辺りを見渡しながら
繋がった道を広げた。
「私の魔法でカモフラージュしといた方がいいわね」
入り口に影を重ねる。
それは、忍者が姿を消す布を覆ったような?
真琴ならそんな表現が出そうだ。
「さてさて、お姫様はどこに囚われの身かしら?」
ルナミナは、自身がいる階層に気配察知の魔法を流した。
「うーん。微かにルクレツィアの気配があるけど、
古い気配ね。この階層にはいなさそう」
だが、静かだからこそみんなを呼んでも大丈夫そうだ。
「セラフィナお姉様、城に入れます」
ルナミナは、みんなを呼んだ。
静かに、セラフィナを先頭に入ってくる。
「静かね」
「この城のメイドは、『労働まがい』
心のない動く道具と思って。言われた事しかしないから」
ルナミナがそう言った。
お父様が身の回り世話用に作った人形だと言う事だ。
だが、監視役でもあるから不用意に見つかるなと
「あと厄介なのが…デュラガー」
「デュラガー?初めて聞いた」
レオンハルトがルナミナに言った。
「デュラハンは知ってる?」
ルナミナがこそっと小さい声で囁く。
「確か、馬に乗って走る首無し騎士だな。
神殿が放置した廃墟の墓地などから発生するって
教わっている」
神殿の護衛騎士をこなして来たレオンハルト
騎士として遭遇しそうな魔物情報は、入っているらしい。
「城にいるデュラガーは、首無し男
鎖で繋がれた棺桶を引きずって、廊下を歩くの。
各部屋の監視が目的だから、鍵開けのひつじって呼んでる。
執事をもじってひつじね。からかった言い方よ。
黙っていれば、鍵を開けて通り過ぎるだけ。
扉は自動で閉まるから。
でも、音や声には敏感で、反応速度は恐ろしく速いわ
魔法は、使わないけど、腕力と頑丈さは類を見ないわ」
「やり過ごすのがセオリーてか?」
レオンハルトの呟きにルナミナが頷いた。
「あとは、静かなものよ。ルクレツィアやお父様に見つからなければいいんだから」
ルナミナが一通りの説明を終えた時には、
全員が城に入っていた。
今回のメンバーは、
ヴィクトル、クラリスにフィオナ
レオンハルトにリオ
そしてセラフィナだ。
グレアムとエマは病み上がりなのと向こう側入り口の監視をしてくれている。
⸻
「ちょっと待って」
最初に気がついたのは、クラリスだった。
城に入ってすぐに見慣れた色が視線の端に感じたのである。
「あれ付箋紙じゃない?」
クラリスが示した先に細く切られながら、先っぽが三角に折られている。
「方向になってる」
「城の出口に向かって?」リオが言う。
「城の出口はないの。まず異界へと魔法で出るから」
セラフィナがそう説明する。
「じゃ、真琴の部屋へと向かえると思っていいかな」
「わかった。じゃ私が行ってくるから待ってて」
「ルナミナ、これを持っていけ」
リオがルナミナに通信機を渡す。
「城内での連絡用だ」
「わかったわ。行ってくる」
ダンジョン化しているとはいえ、幼い頃より
住み慣れた我が家である。
ルナミナは、慣れた足取りで走って行った。
勿論、足音はさせていない。
矢印を確認して
角では、労働まがいにデュラガーを
気にしながら進んでいく。
「便利だけど、よく貼ったわね〜」
廊下天井の角という角に貼られた付箋紙
真琴の部屋まで楽に辿り着けた。
ガチャ…最小限の音で周りを確認しながら
ドアを静かに開ける。
滑り込むように体を入れたルナミナ
ルナミナの目には、しっかりと
昼食を食べている真琴の姿があった。
「緊張感ない奴ーー」
心配していたのが馬鹿馬鹿しく感じた一瞬である。
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