【幕間】黒曜石の城のうさぎ


幕間 黒曜石の城のうさぎ


——まだ誰も知らない場所で、ひとつの感情が芽生えていた。


黒曜石の城——妖気渦巻く人外の地

城の一室 ルナミナの部屋

部屋の中は、黒と紫、赤といった色が溢れる。

この城では、可愛らしいピンクや白のレースなどは

長女の逆鱗に触れる。

「お父様に相応しくないわ」ただそれだけ。

私の気持ちも、セルフィナお姉様の気持ちも——関係ない。



私の力は、汚染破壊。黒く濁って魔獣も人間も染める。

人間界に飛んで、仕事をして帰ってくるだけで

ふらふらになって部屋のベッドにダイブする。そんな生活

「私ってなんだろう?」

好きなものもない部屋。疲れる仕事そして…

暗い廊下をカツカツと音がする。

「ルナミナ居る?」

細身の長身、長い銀髪に冷ややかな眼差し、セラフィナ姉様だ。

「何?疲れてるんだけど」

「また、仕事が中途半端だって姉様がヒステリー起こしてたわ」

セラフィナは、ルナミナの部屋を見渡して言う。

「ヒステリーなんていつものことでしょ。私が何をしたって気に入らないんだからあの人は」

確かにそうだ。仕事が上手くいってお父様に褒められれば嫉妬して、失敗すれば役立たずと罵る。
セラフィナ姉様は、傍観者。聞いているようで聞いてないそう言う人。

「で、何の用なのよ一体」

「これ。私には似合わないから」

ルナミナにポーンと投げられた物

白いうさぎの縫いぐるみ。
ピンクの丸いお目目で
ピンクのワンピースで白襟

「どうしたのこれ?」

「……」肝心なことを言わないで部屋を去っていった。

(可愛い……)

いつもいつも嫌味しか言わないのに、一体全体なんだっていうのよ。

ルナミナは、胸の奥で暴れる何かを押さえ込むように、うさぎを抱きしめた。

それから先、ルナミナはこのうさぎを腕に抱えて行く。

「……これ、なくなったら……私……」

——小さな“呼吸”が、確かにそこにあった。

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