【第6章】 第148話

【第6章】第148話 転生者は他にもいる

「ヨーヨーとな?」

「真琴ってばまた変な所に食いついている!」

クラリスが呆れるのも無理はない。ヨーヨーと聞けば、あのヨーヨーしか思い浮かばない。

「見せて?」と、ナオトに言った。

「いいですよ」

手渡されたそれは、手作りの木製のヨーヨーだった。

「年季入ってるわね?」

「父が残してくれたものなんです。父は、若い頃に遠い国から来たって言ってて、僕やマナミの名前も変わっているでしょう?」

真琴はリオを見る。
「さあ?」
リオは首を傾げた。

リオは、真琴が来てから、オルフェウスがよこした分身だから接点はないようだ。

真琴以外にも地球から召喚された人間がいたということなのだろうか。

「今では、形見になっちゃいました」

「大事なものね」

「はい。じゃ始めましょうか」

先を見据えて構えるナオト。

「蜘蛛ちゃんが小さな蜘蛛の巣を貼り付けたところが印よ。中心を叩く感じでお願い」

「わかりました。」言って、ヨーヨーが投げられた。

紐が伸び、回転する先端がガチンッとぶつかる。

初投は、スイッチの下をかすめた。

「惜しい!」みんなの声だ。

「無機質なものは、空間に影響されないのだな。」
ヴィクトルが冷静に判断する。

「そうだね。今は10メートル先くらいだけど、次辺りは、エルフの弓師ヒースさんの弓も試してみようか?」

後でヒースさんが頷いている。

ガツン…上手く、煉瓦に当たった。当たった煉瓦が動いて、壁の中に収まる。

蜘蛛ちゃんズがすかさず、進んで様子を確認して手を振っている。

また、次のスイッチ。次は、ヒースさんが試した。
でも、でも、矢では軽すぎたようだ。
煉瓦に当たると、そのまま床へ落ちた。

「このままヨーヨーで行きましょう」とナオトが言った。

「でも、木製だし、大事な形見なのだから割れるような事がないようにね」

煉瓦にぶつかる木製のヨーヨー、劣化はすぐに目に見えた。

右、左、上部、下部と同じ場所ではないが、スイッチの位置は概ね同じ距離にある。

蜘蛛ちゃんズも順番に印をつけて、傷を負ったものはフィオナが治療してくれた。

そうして、10ヶ所過ぎた所で、

ガツンと鳴っていたヨーヨーがガコ…と音を変えた。

「あっ」ナオトも気がついたのだろう。ヨーヨーを確認する。

「限界なようです。すみません」

「何が、すみませんだ、ここまで進んだだけ凄い事だよ」
エマさんがナオトに感謝を込めて慰めた。

「ヨーヨーの原理はわかっている。誰かさぁ、材料があれば、複製が出来ないかね?」

エマさんがみんなに向かって、そう声をかけた。

道具作成と言えば、クラリスが黙っていない。

「複製じゃないけど、ヨーヨーならここに持ってきている物でできると思う。後は〜」と言って、真琴を見る。

「魔改造ならば任せなさい」真琴は、クラリスの期待に満ちた眼差しにやれやれと頷いて言った。

隣でリオはワクワク顔している。

「多少、形が変わっても良いかな?」
真琴が言う。

「ヨーヨーならば、少し練習させてもらえれば大丈夫です」と、ナオトが答えた。

クラリスが手際よく木を削り、軸をはめ、紐を通していく。

真琴は魔法ログを開き、木材の強度や重量、回転速度を一つずつ調整していく。

硬く、それでいて重すぎない材質へ。
回転速度はさらに向上。
紐も耐久性の高いファイバー製へ置き換えた。

最後に蓋がパカッと開き、菊の花が見えるよう細工を施す。

特別ギミックは、付いてないのでリオはガッカリしていたが
ナオトに渡したら、使いやすいと喜んでいた。

「この菊の花は何ですか?」

「昔のお父さん世代って、こういう和柄好きそうだから。」
そう言う世代なんじゃないかなぁっていう真琴の言葉に、
マナミもナオトも首を傾げていた。

「連投になるけれど、大丈夫?」

「勿論!じゃ行きますね」

言って、投げるとヒュン!っと音が風を切るように変わった。

ガコンッと上手く当たり、煉瓦が引っ込む。
そのまま、数十メートル進み、そのトラップも終わりを迎えた。

そこは、廊下の突き当たりと言う感じでT字路となっていた。

「蜘蛛ちゃんズどっち?」と聞くと、右を示す。

「では、右に行きましょう」

「待て!」魔法庁調査隊を率いているグレアムが言った。

魔法庁の調査隊は、今人数を1/3にして来ている。残りは、ダンジョン入り口で馬車の監視も含めて待機させて来た。

そのグレアムが右に曲がろうとした真琴達に待ったを告げた。

「これを見ろ」グレアムが足元に光る石を見つけた。

小さな石である。拾ってみると、穴も空いている。

「マシューのブレスレットの石だ」

それが、左側通路に点々と落ちている。

「マシューは、こちらに連れて行かれた。我々はこちらこそ先に探索する必要があると思う」

「しかし」と、リオが静かに口を開いた。

「蜘蛛ちゃんズが示したのは右だ。黒狼も、あちらへ向かった」

その一言で場の空気が張り詰める。

つまり――。

助けを求めるマシュー長官は左。

そして、このダンジョンの最深部へ続く道は右。

「二手に分かれるか?」

ヴィクトルが呟く。

だが、その言葉にグレアムは首を横へ振った。

「今の戦力で分散は危険だ。敵の戦力もわからない」

「けれど、時間を掛ければマシューさんが危ないかもしれない」

フィオナの声にも焦りが混じる。

全員が答えを探すように黙り込む。

その時だった。

右の通路の奥から。

――ウォォォン……

黒狼の遠吠えが、静かに響いた。

まるでこちらを呼んでいるかのように。

一方、左の通路からは、かすかな風が吹き抜ける。

その風に乗って届いたのは、鉄錆にも似た、嫌な匂いだった。

真琴は左右の通路を見比べる。

「……これは、選択を間違えちゃいけないね」

誰も軽々しく答えを出せない。

ダンジョンは、彼らに最初の決断を迫っていた。

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