【ちょっと昔の世界一周】 #45 《運命の人》
カッパドキア
海外に興味が無い人でも、一度は聞いたことがあるであろう観光地。
たくさんの岩が長い年月をかけて、独特の形になっている光景を見たことがある人も多いであろう。
世界遺産にもなっている、トルコでは最も有名と言ってもいい場所である。
そんなカッパドキア観光の拠点となる〝ギョレメ〟という街に向け、私とシオリさんを乗せたバスは出発した。
今回はヤン君のようなアジア系の旅行者もいなく、旅行者よりもむしろ現地のトルコ人の方が多いのではないかと思える人たちを乗せ、進んでいく。
チケット売り場で聞いたことによると、サフランボル〜ギョレメの移動なのだが、一度バスを乗り換えるらしい。
名前を聞いたがわからない街で改めてギョレメ行きのバスに乗る。
バスの乗り換えと聞いてふと、カンボジアでの出来事を思い出したのだが、今回はシオリさんもいる。
当時と比べれば、私も成長したはずだし一人でもない。
なるようになる
旅の始めから大事にしている考え方で、特に不安になることもなく、私は眠りについた。
*****
今回もシオリさんの頭が肩にのっていて、若干の肩こりを感じながらの眠りだったが、そのおかげで乗り換え場所に着いてすぐに動くことができた。
一度バスを降り、荷物を持って次のバスを探す。
が、バスが見当たらない…
同じバスに乗っていた数人のバックパッカーも困っている。
バスに乗っていた現地の人たちはというと、観光地のギョレメではなく、別の街へと移動するようで各々動いている。
バックパッカーの一人が、乗ってきたバスの運転手に聞いてくれて、どうやらギョレメ行きのバスはまだ来ていないとのことが分かった。
この辺りに来るから待ってて欲しいと言われたらしい。
時刻は朝5時前…
本来ならすぐに乗り換えてもう一眠りできるはずだったが、そうはいかない様子だ。
そして乗ってきたバスは去っていきバスターミナル、というよりは広場には数人の外国人バックパッカー(私たち含む)と、こんな早朝に理由は分からないがウロウロしていたり、おしゃべりをしている地元の人たち…
本当にバスはやってくるのか疑問になりながらも、行く当てもない旅行者たちはそこに座り込んだ。
トイレやまだ人は来ていないが売店らしき場所もあるので、バスターミナルに間違いはないのであろうが、ひらけた場所ということもあり遠くまでよく見えるにもかかわらず、バスの姿は一向に見えない。
「バス、来るのかな…」
珍しく、不安げな雰囲気でシオリさんが呟く。
他の旅行者たちからもなんとなくそんな雰囲気を感じられる。
来るはずのバスがないのだ。
そう思うのは当然のことなのだが、不思議なことに私に不安はほぼなかった。
乗るはずの船に乗れず小舟でメコン川を渡ったことや、見知らぬ街での迷子。
さらに思い出していたカンボジアでの乗り換えトラブル。
それに比べれば、同じ境遇の人たちに囲まれている。
さらに言えばまだ時間も早い。
バスが来なければ次のバスが来るまで待てばいい。
最悪、今日じゃなくてもそれはそれでどこかに泊まればいいだけの話。
そんな考えをシオリさんに話してみると
「確かにそうだけど…ノブ君メンタル強いわ〜。でも、そうだよね!」
と納得(諦め?)してくれたようで、少し不安が和らいだようだった。
それにしても、いつやってくるのだろう…
特にやることもないので、一度トイレに向かう。
用を済ませ皆のいる場所に戻ろうとしたが、そうだ!と思いつき近くでおしゃべり中のおじさんに話しかけてみた。
「ギョレメ行きのバスって来るの?」
簡単な英単語を並べただけだが、意外となんとかなるものである。
おじさんたちが教えてくれた話では
「いつもはだいたいあんた達のいる場所に来るんだけど、多分寝坊してるんだわ!よくあるからね〜。一、二時間遅れることもあるよ!」
要約するとこんな感じ。
イスタンブールで教えてもらったトルコ語の〝ありがとう〟を伝え、皆のところへ戻る。
シオリさんにも伝え、待つしかないと覚悟を決めた。
待つならとことん待ってやる!と地面に腰を下ろし、バックパックを背もたれ代わりにして、私は仮眠をとることにした…
*****
結果として、バスは九時ごろにやってきた。
四時間遅れだったが、シオリさんと交代して荷物を見張りながらウトウトしていたり話していたこともあり、意外と快適な待ち時間だった。
こういうことがあると改めて、誰かと旅するといいなぁ〜という気持ちになる。
荷物の心配も減るし、話し相手もいる。
さらに不安や喜びも共有できる。
一人旅には一人旅の、二人旅には二人旅の良さがある。
そんなことを感じながら、ようやくギョレメへと到着した。
文句を言いながら去っていく他のバックパッカー達の姿を見ながら、私たちもそれぞれの宿へと向かうために地図を見ていた。
そんな私たちの所へバイタク(バイクタクシー)の人たちが声をかけてくる。
ギョレメは坂が多く、宿はその上の方にあることが多いので、荷物がある時はバイタクがいい!とツリーで聞いていたこともあり、珍しくお金を惜しまないことにした。
それぞれの宿の名前を伝えると、なぜか驚かれる。
どうしたのか聞いてみると
「Are you a Couple ?? NO ???」
どうやらカップルだと思われていたようで、別の宿を言われ驚いたようだ。
サフランボルのバスターミナルでも、早朝のバス待ちの時間でも何度か言われたのだが、それもそうである。
男女で行動していたら、そう見られても仕方がない。
しかし面白いもので、当の本人達はそんな意識がないものである。
これが旅の面白さなのだろう。
同じ場所にいて同じ場所へ向かう。
これだけで仲間になれる。
困ったときは助け合い、楽しむときは共に楽しむ
ある意味、当然の考え。
しかし、意外と難しいもの…
それが考えなしにできてしまう〝旅〟という環境。
これが旅の魅力かもしれない。
二人とも料金交渉を終え、それぞれのバイクにまたがる。
「シオリさん、バギー楽しんでくださいね!それじゃ、いい旅を!」
「ありがと!じゃあね、ノブ君、バイバ〜イ!」
実際の時間にしてみれば、二日とちょっと。
これまでも多くの旅人と出会ってきた。
その中でもシオリさんとは、今までにないほどの充実した時間を過ごすことができた。
そんな感慨に浸っていたかったが、急な登り坂を走っていくバイクから振り落とされないにようにすぐに私は考えを切り替えた。
*****
イスタンブールのツリーで話題になっていた〝洞窟ホテル〟という愛称の宿は坂のだいぶ上の方にあった。
宣言通りの金額をバイタクの運転手へと渡し、敷地内へと入っていく。
フロント、というかテーブルが置いてある所にいた女性、多分宿の女将さんが出迎えてくれる。
話に聞いていた通り、自然に出来上がっているであろう洞窟を加工し部屋がいくつかある。
部屋の空きを確認すると、個室は埋まっているがドミトリーなら空いているとのこと。
値段も聞いていた通りの値段だったので、一応部屋を確認させてもらう。
フロントから見えるドアを開けると、そこにはベットがいくつか並んでいる。
その中の一つを女将さんが指を差す。
ドミトリーはツリー以来だったが、比べものにならないほど綺麗に整っている。
文句は何もなく、OKと伝え荷物を下ろす。
女将さんが、もしも観光に行くならツアーも申し込めるから言ってね!と教えてくれて、部屋から出ていく。
ひとまず、ベットに腰かけ荷物を整理する。
荷物はあるが誰もいない部屋。
久しぶりに一人の時間である。
『せっかくなら、シオリさんと一緒に行ってもよかったのかな...』
そんな考えも多少は出てきた。
しかし、私はこちらを選んだ。
一人だと大変なことも多いだろう。
でも、その分〝人〟の大切さを感じれる。
私の旅はまだまだ続いていく。
これからはどんな人と出会い、どんな関わりを持っていくのだろう。
少なくとも、シオリさんやヤン君達は私にとっての運命の人だったと思える。
そんな出会いの為に動きだそう。
いつもの街歩きの準備を済ませ、私は立ち上がった。
新たな一人旅のスタートだ。
