【ちょっと昔の世界一周】 #56 《信じる者は...》
ドライバーも必死に探してくれてはいるものの、全く宿が見つからない…
困ったことのはずなのだが、当事者である私はどこか楽しんでいる。
エジプトの首都〝カイロ〟
窓から見えるこの喧騒は私に合っているのかもしれない...
*****
ペトラ観光も終わり、宿へと戻りシャワーを浴びる。
さっぱりとした気分になり、外の空気でも吸おうかと部屋を出るとマエダさんもちょうど出てきた。
どうやら私と同じで、横になるとそのまま朝まで寝れそうだからシャワーを浴び、外に出たきたとのこと。
そのまま食事に出かける。
観光地だけあり、旅行者向けのレストランはすぐに目がつく。
適当な店に決めいつもの私よりは少し豪華な夕食を済ます。
宿への帰り道、疲れたけど良かったですね〜と話しながら帰っていると、その会話が聞こえたのか一人の青年に声をかけられる。
「二人とも日本人ですか!?」
彼は日本人旅行者。
見るからにバックパッカーであろう。
立ち止まり話を聞くと、どうやら明日ペトラに行くらしく、どんな感じでした?と聞いてくる。
私たちもこの感動をもっと話したく、どこかで話そうということになる。
彼の宿の屋上が見晴らしがいいらしく、せっかくだからそこがいいかなと付いていく。
確かに、街中から外れてはいるものの、逆に街の明かりを一望できるいい眺め。
そこで私たちはペトラ情報を伝える。
まだ見ぬペトラという遺跡への期待に胸を膨らませる状態で、その遺跡の感動を熱く聞くのである。
なかなか熱い(暑い?)語り合いになった。
彼は彼で私の次の目的地であるエジプトから来たらしく、色々と情報を教えてくれる。
その中でオススメされた宿が【ペンションさくら】
ツリーでも聞いていた宿だったが、やはりいい宿らしい。
日本語の話せるオーナーがいる宿なので、日本人が多いとのこと。
以前の私とは違い、いまや日本人宿好きになった私からしたら最高の宿だ。
その他にも色々な情報を聞き、偶然の出会いに感謝しつつ、楽しい夜を過ごした。
翌日、マエダさんと共にアンマンまで戻る。
僅か一日、いやそこまでもいかない時間しか一緒にいなかったのだが、ペトラという感動的な体験を共にしたことで、お互いに信頼し合える仲になった。
これぞ旅の醍醐味だろう。
お互いに旅の無事を祈りつつ、宿へと戻る。
今までも何度かあったものの、こうやって戻るということの安心感はいいものだ。
旅の中で戻るということをすることは、あまりないであろう。
そんな素敵な体験を楽しみながら、少ない時間だが街歩きをしたり、リョウタ君や他の旅人たちと話たりしたながら、私の短いヨルダン滞在は終わりを告げた。
*****
ヨルダンからエジプトまでは飛行機に乗ればあっという間。
搭乗手続きや出国審査等の時間はあるものの、実際のフライト時間は一時間ほど。
世界一周航空券のこともあったが、その気になればヨルダンからイスラエルへ入り、そこからエジプト入りも比較的簡単にできる距離だ。
だが、情勢は落ち着いているとはいえ、やはり色々と考えてしまう。
(2008年当時、グルジア紛争はあったもののシリアにも渡航できたりと中東は比較的旅をしやすい環境)
しかし、本当にあっという間に私を乗せた飛行機はエジプトへ到着した。
入国手続きも終え、荷物を待っているとアジア系のバックパッカーの姿が見える。
男女の二人組だが、むこうもこちらに気がついた様子。
なんとなく距離を詰める私たち。
すると、二人が日本語で会話しているのが聞こえた。
想像ではあるが、二人の頭の中は
『あっ、日本人っぽい人いる。多分そうだなぁ〜...でも違ったら恥ずかしいなぁ...そうだ、さりげなく会話を聞かせて反応をみよう!』
多分こんな感じであろう。
同じ立場なら私もこうする。
「あっ、日本人ですか!?俺もなんですよ!」
見事に二人の期待に応えてみたら、想像通り「ですよね〜」という反応。
二人は新婚旅行で世界を周っているとのこと。
それなりに旅をしているが、そこそこお金があるということで、飛行機でどんどん移動してるから旅慣れしてないんですよ...と言っている。
その時の私の見た目から、結構な期間旅をしている人だと思ったらしい。
旅を始めてまだ二ヶ月も経ってないことを伝えると、慣れすぎだよ〜。と言った感じで話してくれて意気投合、一緒に街を目指すことになった。
新婚旅行ということもあり、二人はそれなりの宿には泊まっているらしい。
なので、今回もすでに予約をしてある。
(ネット予約対応の宿は、当時はそこそこのグレードがあった時代)
カイロの中心【タハリール広場】の近くなので、そこまで行きたいとのこと。
私の目的の〝ペンションさくら〟も広場から歩いて十分もかからずに行けるようなので、目的地は同じ。
そして、、、
空港からはバスで簡単に行ける!
私たちはその情報は持っていたが、
数字が読めない…
バスの行き先は番号で決まっていることも、タハリール広場行きの番号も知っていた。
しかし、肝心の数字がアラビア語で書かれている。
さて、、、
一同、いったん停止。
しかし、ここで私のヨルダンの経験がいきた。
何となく数字を覚えていた。
その記憶を頼りに、タハリール広場行きの番号を発見。
バスに乗り込みつつ、運転手に確認するとタハリール!と返してくれた。
一安心したが、念には念を入れる。
なにせ、移動では一苦労した経験がある。
有名なタハリールだよ!とか、観光客も行く場所で合ってる?などの質問をして間違いないことを確認する。
二人は、大丈夫じゃない?と言うが、私の移動一苦労話を聞いて、それは確認したくなるわ!と納得する。
そして、バスは無事にタハリール広場へと到着する。
二人はそのまま予約した宿へ向かう。
いい旅を!
一体、何回目であろう。
それだけ多くの旅人に出会ったのだろう。
さぁ、ここからは宿探し。
しかし、情報ではすぐそこ。
というわけで私も歩き始める。
・・・・・
のだが、宿が見つからない。
広場から伸びる、大通りを行けば看板がある。
そう聞いていたが、どこにも無い。
道が違うか?と思い、別の道を行くが見当たらない。
広場から歩いて行っては戻るを繰り返す。
さすがに何度も同じ場所に戻ってくるので、近くで客待ちをしていたタクシーの運転手たちも気になったのだろう。
一人が声をかけてきた。
「Where are you going ???」
私でも理解できる簡単な英語で助かった。
この人たちなら知っているだろうと宿の名前を伝え、だいたいの場所の地図を書いてみる。
が、皆知らないという。
何となく日本人がよく行く宿ということを知っている人はいたが、場所は知らないという。
そうしていると一人の男性が、一緒に探してやるから車に乗れ!と言ってくる。
歩いて行ける場所なのにタクシーを使うとは…
そう思い、お金が…と言うと
「Money NO !!!」
と語気を強める。
【エジプト人は結構ぼったくってくるよ】
失礼だが、こんな話をよく聞いていた。
なので、簡単には信じられない。
が、周りの運転手たちも驚いているぐらいだったので、予想外の言葉だったのであろう。
悩んでいると、改めてその男性が口を開く。
話を要約すると
「アラーの教えで旅人は大切に扱う。お前は何度も行ったり来たりしていて困っている。なので困っている旅人を助けることは神の教えだ。お金なんていらない」
ということらしい。
ムスリムは旅人に優しい。
そのことも聞いていた。
が、こんなことがあるだろうか。
正直、疑いの気持ちはまだある。
しかし、どこかこの人を信じたい気持ちもある。
私の旅人の勘は、この人は信じていい!と言っている。
その時はその時だ!
そんな気持ちで、私は彼のタクシーへと乗り込んだ。
