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【第310回】 The Future of Marketing Cloud Engagement セッション

Connections 2025(CNX 25)の中で、私個人のハイライトセッションでもあった「The Future of Marketing Cloud Engagement」セッションが、日本時間で 2025 年 6 月 12 日午後 11 時に開催されました。

On-Demand Video(英語)が公開されました


まず、すでにご存じの通り、Connections 2025(CNX 25)のメインキーノートにおいて「Marketing Cloud Next」がリリースされました。この件については、以下の記事でまとめていますので、ご確認ください。

そしてこの「The Future of Marketing Cloud Engagement」セッションでは、Marketing Cloud Engagement の目線に立って、顧客体験をさらに進化させる 3 つの新機能 が発表されました。これは、既存の Marketing Cloud Engagement ユーザーの目を見張る内容であり、とても刺激的でした。今回の記事では、最新の発表内容を私の目線からレビューします。

このセッションは以下の3つのテーマに分けて進行されました。

  1. Measure the impact journeys have on your business goals
    (ジャーニーがビジネス目標に与える影響を測定する)

  2. Orchestrate cohesive experiences across journeys
    (ジャーニー間で一貫性のある体験を構築する)

  3. Prioritize the most effective journey for each individual
    (各顧客に最適なジャーニーを優先的に提供する)

一見すると、これらのテーマと発表された新機能の関連性が少し分かりづらい印象もあります。しかし、各テーマは以下の従来の機能と密接に関連した新たな拡張や改善を示しています。

  1. キャンペーン

  2. フロー

  3. Agentforce

それでは、各テーマごとに詳しく見ていきましょう。


① ジャーニーがビジネス目標に与える影響を測定する

このテーマでは、主に Marketing Cloud Next における「キャンペーン」機能の重要性に焦点が当てられました。発表内容の中心には、以下の点がありました。

皆さん、現在の Marketing Cloud Engagement のキャンペーン機能をどの程度活用していますでしょうか。ご存じのとおり、このキャンペーン機能はレガシーの位置づけにあり、特に Journey Builder の送信と連携する際にはその操作性に課題が多いと感じられる方も多いでしょう。

今回発表された Marketing Cloud Next の登場により、Marketing Cloud Engagement と Marketing Cloud Next が統合されることになります。この統合によって、Journey Builder で構築されたジャーニーを Marketing Cloud Next のキャンペーンに組み込む ことで、ジャーニーがビジネス目標に与える影響をより効果的に分析できるようになります。

Marketing Cloud Next のキャンペーンページ

以下の数枚のデモ画面のスライドは、Marketing Cloud Next のキャンペーンページのものですが、至るところに、Journey の文字が表示されていることに注目してください。さらに、3 枚目のスライドには、Open Journey の文字も確認できます。これは、ジャーニーが Marketing Cloud Next 側でシームレスに統合されていることを示しています。

Tableau Next を活用したマーケティングパフォーマンス分析

Marketing Cloud Next のキャンペーンには、Tableau Next を基盤とした高度な分析機能が標準で搭載されています。これにより、以下のようなデータを用いてキャンペーンレベルのパフォーマンスを詳細に計測することが可能になります。

  • Marketing Cloud Engagement のジャーニー施策

  • Marketing Cloud Next でのフローベースのキャンペーン施策

以下は、マーケティングパフォーマンスの分析画面例です。

ジャーニーをキャンペーンに組み込むアクション

ジャーニーをキャンペーンに組み込む方法についてもデモンストレーションがありました。「ジャーニーの検証時」に直接 Marketing Cloud Next のキャンペーンに追加できる新しい方法が提供されています。この流れにより、キャンペーンへの追加作業を忘れることなく、ジャーニーをキャンペーンの一部として紐づけることが可能になります。

既存のキャンペーンとの関係性

ここで一つの疑問が浮かびます。既存の Marketing Cloud Engagement のキャンペーンを活用している場合、この新しい統合との関係はどうなるのでしょう。またその逆で、一切キャンペーンを使用していない既存のジャーニーの立ち位置はどうなるのでしょうか。残念ながら、このような細かい点については、セッション内での説明はありませんでした。


② ジャーニー間で一貫性のある体験を構築する

次のテーマは、フロージャーニーオーケストレーションについてです。

この最新機能により、Journey Builder から Flow をトリガー したり、逆に Flow から Journey Builder をトリガー することが可能になります。これにより、マーケティングや顧客体験のシナリオ構築が一段と柔軟になります。

Journey Event トリガー

以下の図をご覧ください。新たに登場した Journey Event というイベントトリガーが示されています。ここでは、以下の 3 種類のトリガーが用意されています。

  1. Entry Journey

    • 連絡先がジャーニーにエントリーした際にフローをトリガーします。

  2. Exit Journey

    • 連絡先がジャーニーを終了した際にフローをトリガーします。

  3. Goal Met

    • 連絡先が目標を達成した際にフローをトリガーします。

これらにより、ジャーニー内で特定のアクションが発生した場合、Flow を自動的に起動できるようになり、マーケティングの一連の流れをスムーズに連携させることが可能になります。

デモでの応用例

セッション内のデモでは、目標を達成した連絡先をフローでトリガーし、フロー内で処理を実行した後、新しいジャーニーに連絡先を送り、エントリートリガーを起動するという流れが紹介されました。

1. イベントトリガーフローの設定
フローを作成し、新しい Journey Event トリガーを設定します。

2. ジャーニー目標の選択
対象とするジャーニーの目標条件を設定します。

3. 判断分岐の配置
決定要素を利用して、連絡先の属性や状態に基づき処理を分岐させます。

4. レイティングに基づく分岐
レイティング(評価)に応じて受信者を異なるパスに振り分けます。

5. ジャーニーへの送信
各分岐パスから、「Send to Journey」要素を使って、対応する別のジャーニーに連絡先を送信します。

新機能の活用価値

このような流れは、既存の Journey Builder では実装が難しいケースが多かったものです。例えば、連絡先の状態変化に応じて次のアクションをフローや新たなジャーニーで連携させるといったシナリオは、これまでは手動や複雑な設定が必要でした。

今回の新機能により、現在の Marketing Cloud Engagement を拡張 し、より複雑でシームレスな顧客体験を構築する手段として大きな可能性を秘めています。


③ 各顧客に最適なジャーニーを優先的に提供する

最後のテーマでは、Agentforce と Marketing Cloud Engagement の連携が強調されました。新たに登場した Marketing Cloud オーケストレーションエージェント により、マーケティングシナリオ作成の時間短縮や複雑さの軽減が可能になります。

Marketing Cloud オーケストレーションエージェントの機能

このエージェントは、マーケティングオートメーションにおける選択とコンテンツ作成を効率化するための以下のアクションを提供します。

  1. Evaluation Journey

    • 顧客の現在のジャーニーステータスを分析し、エンゲージメントやコンバージョン率を向上させるための調整や最適化が必要かどうかをエージェントがガイドします。

  2. Trigger Journey Entry Event

    • 顧客の行動データやキャンペーンロジックを基に、適切なジャーニーへのエントリーをエージェントがトリガーします。

  3. Create Content

    • GenAI を活用して、ブランドトーンや顧客データ、キャンペーン目標に基づいたメールや SMS のカスタマイズコンテンツを作成します。

  4. Send Copy to Data Extension

    • 作成されたコンテンツを適切な Data Extension に送信し、選択したチャネルでのパーソナライズと配信が行えるようにします。

これにより、顧客体験のさらなる個別化が可能となり、エージェントの役割が大幅に拡張されます。

以下のデモ画面で、Agentforce の具体的な設定例が示されています。

設定手順

1. エージェントテンプレートの選択
エージェントビルダーを開き、新たに追加されたテンプレートの中から「Marketing Cloud オーケストレーションエージェント」を選択します。

2. トピックとアクションのレビュー
デフォルトで追加されているトピックとアクションを確認します。

3. 基本設定の構成
エージェントの定義やその他の基本設定を行います。

4. データライブラリーの選択
エージェントで使用するデータライブラリーを指定します。

5. ジャーニーの選択
最大 5 つのジャーニーを選択し、エージェントがそれらを活用できるよう設定します。また、エージェントに生成してもらいたいコンテンツエリアを含む詳細を入力します。これにより、Marketing Cloud オーケストレーションエージェントの設定が完了します。

6. イベントトリガーフローの開始
次に、フローを立ち上げてイベントトリガーフローを構築します。

7. アクションの選択
イベントトリガーフロー内でアクションを設定し、先ほど作成した Marketing Cloud オーケストレーションエージェントを選択します。

8. エージェントの配置
選択したエージェントがフロー内に配置され、設定が完了します。

これらの Agentforce による新機能を使うことで、例えば、以下のようなフローを構築できるものと思います。

  • 分岐条件:顧客が購入完了後、フォローアップキャンペーンに参加するか、別のプロモーションジャーニーに進むべきかを決定。

  • 最適化された配信:分岐ごとに適切なジャーニーを選択し、個別のアクションを実行。

この連携がもたらすメリット

  • シナリオ構築の効率化:エージェントが複雑な判断や設定を自動化。

  • 顧客体験の向上:リアルタイムのデータ活用で、個々の顧客に最適なエクスペリエンスを提供。

  • チームの生産性向上:マーケティング担当者がコンテンツ作成やシナリオ構築にかける時間を大幅に削減。

これらの新機能により、Marketing Cloud Engagement の可能性がさらに広がり、より高度な顧客エンゲージメントが実現しますね。


いかがでしたでしょうか。

少し厳しい言い方をすれば、確かに、今回の発表は「統合」という方向性を打ち出しているものの、ツール間での明確な連携は Journey Builder に限定され、まだ発展途上の印象を受けます。完全に統一されたエコシステムと呼ぶにはもう少し進化が必要と感じました。

① ② ③ それぞれの課題

  • ① ジャーニーがビジネス目標に与える影響を測定する
    これまでの Marketing Cloud Engagement の既存のジャーニーはどのような立ち位置になるのかが現時点では不明です。また、Journey Builder 以外のツールの統合が、どの程度のものになるかが気になります。

  • ② ジャーニー間で一貫性のある体験を構築する
    この機能は特定のユースケースに依存する可能性が高く、全企業が利用価値を見いだせるとは限りません。特に複雑なジャーニー設計が必要ないケースでは、実装コストを上回る効果が得られないかもしれません。

  • ③ 各顧客に最適なジャーニーを優先的に提供する
    Agentforce を活用するには、その導入と運用のための十分なリソースと成熟したマーケティング体制が必要です。そのため、現時点でMarketing Cloud Engagementを単体で運用している企業にとっては、必須ではない機能と映るかもしれません。

Marketing Cloud Engagement の未来

とはいえ、今回 Connections 2025(CNX 25)の発表で「Marketing Cloud Engagement が廃止され、Marketing Cloud Next に完全移行するのではないか」という懸念が払拭された点は、大きな前進と言えるでしょう。

Marketing Cloud Next は、Marketing Cloud Engagement のユーザーから見た場合に、Marketing Cloud Engagement の拡張機能 として位置付けてみてはいかがでしょうか。これにより、段階的なアップグレードや拡張が可能となり、さまざまな企業のニーズに柔軟に対応できる基盤が整っていると感じます。これが現時点では一番しっくりときます。

今回のセッションは、Marketing Cloud の未来の方向性を示す重要な一歩でしたが、すべての企業にとって即時的に活用できるソリューションではない部分もあるのは事実です。それでも、拡張性や連携性を重視した今後の進化に期待が持てる内容でした。

次回のアップデートや具体的なリリース情報が待ち遠しいですね。

今回は以上です。


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