【第256回】 ドメインスロットリング・送信スロットリング・配信時間の関係性
今回の記事では、Salesforce Marketing Cloud Engagement における以下の 3 つの機能の関連性について整理したいと思います。
「ドメインスロットリング」
「送信スロットリング」
「配信時間(配信時間枠)」
まずは、それぞれの定義や特徴からまとめて行きましょう。
ドメインスロットリングとは
一部の ISP(インターネットサービスプロバイダー)は、メール受信に関して、それぞれ独自の制限を設けています。具体的には、特定の送信元から一定量を超えるメールが短時間に配信されると、それ以上のメール受け入れを一時的に停止する「上限」が設定 されています。
このような状況では Salesforce Marketing Cloud などのメール配信システムが、送信失敗したメールの再送(リトライ)を自動で行います。
しかし、リトライの頻度が高くなると、一部の ISP は特定の IP アドレスを「スパム発信源」と見なし、そのメールを受信拒否またはブロックするリスクがあります。
そこで、「ドメインスロットリング」という仕組みが用いられます。この仕組みでは、特定の ISP ドメイン宛てに送信するメールの数を調整し、例えば「1 時間あたり 1 IP アドレスからの配信数を○○件に制限する」ように設定します。これにより、リトライの発生を最小限に抑え、スパム判定リスクを軽減します。
ドメインスロットリングの注意点
送信タイミングの制御:ドメインスロットリングは バックエンドで処理されるため、個々の連絡先がどのタイミングで送信されるかを直接確認することはできません。また、この設定は「メール送信ジョブごと(=メールアクティビティごと)に適用」されるため、アカウント全体で一律に管理されるわけではありません。
ランダム分岐の影響:ランダム分岐を使い、同一時間帯に複数のメールアクティビティを並行して実行する場合、ドメインスロットリングの効果は限定的になります。この場合、スパム判定リスクが高まる可能性があるため注意が必要です。
追加 IP アドレスの有効性:スパム判定は「1 IP アドレスあたりの送信数」を基準とするため、IP アドレスを追加購入することでリスクを軽減できます。Salesforce の営業担当者が契約時に「追加 IP アドレス」の見積もりを提案するのは、こうした背景があります。「○○時までに配信を完了させる必要がある」という明確な基準がある場合は、事前に追加 IP アドレスを多く購入しておくことが推奨されます。
「特定の ISP ドメイン」とは?
Salesforce が公開している具体的な ISP ドメインは以下のとおりですが、これが最新版であるかは不明です。必要に応じてサポートへ確認が必要です。
ドメインスロットリングの対象ドメイン
- docomo.ne.jp
- ezweb.ne.jp
- au.com
- softbank.ne.jp
- i.softbank.jp
- d.vodafone.ne.jp
- h.vodafone.ne.jp
- t.vodafone.ne.jp
- c.vodafone.ne.jp
- k.vodafone.ne.jp
- r.vodafone.ne.jp
- n.vodafone.ne.jp
- s.vodafone.ne.jp
- q.vodafone.ne.jp
- disney.ne.jp
- Emnet.ne.jp
- emobile.ne.jp
- emobile-s.ne.jp
- ymobile1.ne.jp
- ymobile.ne.jp
- pdx.ne.jp
- willcom.com
- wcm.ne.jp
- y-mobile.ne.jp
- nifty.ne.jp
- nifty.com
ただし、各 ISP ドメインごとに「1 時間あたりの送信上限数」がどのように設定されているかについて、Salesforce は詳細を公開していません。これは、そもそも ISP 側がこうした情報を非公開としているためです。
その非公開の理由は、セキュリティ上のリスクを防ぐためです。もし基準が公開されてしまうと、悪意のあるユーザーがこれを利用してセキュリティ対策を回避する可能性があり、ISP が行っている保護対策の効果が失われてしまいます。
結果として、正確な配信数の調整については、Salesforce のドメインスロットリング機能を活用して対応することが求められます。
このドメインスロットリングは 日本限定の機能のため、Marketing Cloud セットアップで有効化するものではなく、有効化するにはテクニカルサポートへの申請が必要です。通常はインプリベンダーが有効化の申請をしているはずですので、有効化されているものと思って大丈夫です。有効化されているか確認したい場合はテクニカルサポートへの確認が必要です。
送信スロットリングとは
続いて、送信スロットリングとは、メール送信をするに当たり、購読者を分散する意図で使用されます。例えば、メール内のリンクから Web サイトへの流入量の制御など、一定時間の配信量を制限したい場合などに使用が想定されます。
送信スロットリングの表示は、Marketing Cloud のセットアップ画面で有効化が可能です。「送信の調整」のトグルを有効化してください。

送信スロットリング(時間単位のしきい値)の表示を有効化したら、各メールアクティビティごとに、ユーザーが設定ができるようになります。

上の図の通り、1 時間当たりの送信数 を 500 ~ 500,000 の間で設定ができますが、実は 1,000,000 であっても、値を手入力すれば設定できます。範囲としては 500 ~ 10,000,000 まで設定可能です。
配信時間(配信時間枠)とは
最後に、配信時間の説明です。これはメールが配信される時間の枠のことで、ここで設定した時間帯にだけ送信が行われます。
この機能の表示の有効化は、送信スロットリングと同じです。送信スロットリングを有効化すると、配信時間(配信時間枠)も同時に有効化されます。
この配信時間(配信時間枠)に関しては、30 分単位でのみ設定が可能です。値の手入力はできません。

注意点としては、例えば、9:00 ~ 18:00 と設定した場合に、18 時にスケジュールされた Journey Builder のメールは配信できません。なぜなら、配信時間(配信時間枠)が 9:00 ~ 18:00 となっている場合は、17:59 までに送信処理が完了している必要があるからです。
そのため、もし Journey Builder が 18 時でスケジュールされている場合は、配信時間(配信時間枠)を 9:00 ~ 18:30 に広げておく必要があります。
まとめ
それでは、定義や特徴をまとめることができたので、「ドメインスロットリング」「送信スロットリング」「配信時間」の関連性について、以下にまとめます。
<関連性まとめ>
①「配信時間」と「送信スロットリング」:併用可能
②「ドメインスロットリング」と「送信スロットリング」:併用可能
③「ドメインスロットリング」と「配信時間」:併用可能
まず ① に関しては、以前は、必ず併用しないと送信できない仕様でした。しかし、Summer '23 のアップデートで「配信時間」と「送信スロットリング」を分離して利用できるようになりました ので押さえておきましょう。
次に ② に関してですが、これも Summer '23 のアップデートで機能改善され、併用が可能になりました。
⇒ Summer '23 以前は、併用した場合は「送信スロットリング」だけが機能し、「ドメインスロットリング」は無効となっていました。
併用可能になったことは、以下のヘルプドキュメントでも示されています。
〜〜 抜粋 〜〜
メール配信で "送信の調整" 機能(別名:送信スロットル)も利用した場合、"送信の調整" で抑制処理が入った後に、さらに追加で特定ドメインに対するドメイン スロットリングの処理が行われます。そのため、"送信の調整" とドメインスロットリングを組み合わせた場合、MTA 側でのバウンスリトライも組み合わさることで、想定よりも配信が長引き、結果的に夜間帯での配信となる可能性がでてきます。これを避けるために、"送信の調整" は早めの終了時間ににしておくことを強くおすすめします。
〜〜〜〜〜〜
最後に ③ に関しては、Summer '23 のアップデートで「配信時間」と「送信スロットリング」が分離して利用できることになったことで、「配信時間」は単独でも利用できるようになりました。その結果、「ドメインスロットリング」と「配信時間」に関しても併用可能になったわけですね。
いかがでしたでしょうか。
結果的には、Summer '23 のアップデート後は、どのような組み合わせでも送信が可能になったということです。但し、「ドメインスロットリング」と「送信スロットリング」を併用した場合は、ダブルの効き目が働き、想定よりも送信が長引く場合があるということですね。気を付けてください。
今回は以上です。
