【第508回】 Marketing Cloud Next : 共有 IP アドレス と 専用 IP アドレス
Marketing Cloud Next Growth & Advanced Editions の Spring '26 新機能リリース では、待望の「専用 IP アドレス」機能が登場 しました。これまでは「共有 IP アドレス」からのみメール送信が行われていました。
現在利用されている IP アドレスの種別や、どの IP プールに所属しているかは、以下の画面から確認できます。
設定 > Unified Messaging > Email > Settings > Sending IP Addresses

仕組み
Marketing Cloud Next における専用 IP アドレスは、追加オプションとして Salesforce から別途購入するものではありません。
Marketing Cloud Next からの 月間配信数が一定の閾値(目安として月 500 万通)を超えると、システムが自動的に検知し、専用 IP アドレスへの移行プロセスが開始される仕組み になっています。
その後、月間 1,000 万通規模になると、2 つ目の専用 IP アドレスが割り当てられます。さらにボリュームが増えると、順次割り当てられます。
また、一定期間にわたり配信ボリュームが閾値を下回る状態が続くと、割り当てられていた専用 IP アドレスは順次回収 され、最終的には共有 IP アドレスでの送信へ戻されます。
Marketing Cloud Engagement を利用している方からすると、ユニークなアプローチに感じるかもしれません。
その他、以下のような仕組みがあります。
IP ウォームアップについて
専用 IP への移行が開始されると、IP ウォームアップは Salesforce 側で自動的に実施されます。
ウォームアップ期間は、移行開始後 0 日〜35 日程度で行われます。
また、ウォームアップ期間中に上限を超える配信が発生した場合、その超過分については、引き続き共有 IP から送信されるため、ユーザー側で細かく配信量をコントロールする必要はありません。
これにより、従来のような「手動での IP ウォームアップ作業」は基本的に不要となります。ただし、これはあくまで「IP の評価」に関する話です。ドメイン評価(ドメインウォームアップ)の観点では、引き続き段階的な送信計画を意識し、安定した配信品質を維持していく必要があります。
専用 IP アドレスの回収について
直近 45 日間の平均送信数が、閾値(目安として月 500 万通)を下回った場合、割り当てられている専用 IP アドレスは順次回収されます。
さらに、最後の 1 IP のみが残った状態で、月 500 万通未満の配信が 90 日間継続した場合、自動的に共有 IP アドレスへ戻されます。
なお、回収された専用 IP アドレスは一定期間のクールダウン後、再利用されます。
グレー IP アドレスプールの登場
共有 IP 利用者のうち、バウンス率が高いアカウント(目安として 5% 程度)は、一時的に「グレープール」と呼ばれる専用の IP プールへ移動されます。
これは通常の共有 IP プールや専用 IP プールとは分離された領域であり、バウンス率が改善されるまで、そのプールからメール送信が行われます。
この仕組みにより、共有 IP プールおよび専用 IP プール全体の健全性が維持されるようになっています。
SLA(サービス・レベル・アグリーメント)の対象外
なお、ここまで紹介した数値は、あくまで「目安」です。
これらは SLA(サービス・レベル・アグリーメント)の対象外 とされているため、「月 500 万通を超えているのに、なかなか専用 IP に移行されない」といったケースがあったとしても、Salesforce 側の制御・判断に委ねる必要があります。
いかがでしたでしょうか。
Marketing Cloud Engagement を長く利用されている方にとっては、かなり興味深い仕組みに見えるかもしれません。
「今後は IP ウォームアップが不要になる」という点は非常に魅力的ですが、一方で、配信品質そのものが重要 である点はこれまでと変わりません。
特に Google などは、近年ますます「ドメイン評価」を重視する傾向があります。
そのため、
無効なメールアドレスへ送信しない
開封・クリックされやすい優良顧客へ優先的に送信する
購読停止や苦情を最小限に抑える
といった基本的な配信品質の維持は、共有 IP・専用 IP を問わず、引き続き非常に重要です。
今回は以上です。
