「古蓮町大運動会」第七話 激走!小中学生オールメンバーリレー
オニギリレーの熱気がまだ冷めない中、私たちは召集された。
"小中学生オールメンバーリレー、出場選手は入場門へ集まってください"
川林A 迫沼 美森:みーちゃん
走力 ◯
→特別速くもないし遅くもない。
私は川林Aチーム。
各地区がA、B、2チームに分かれて、計6チームでリレーをする。
小5女子がスタート。その後小5男子、小6女子、小6男子と半周ずつ走り、中学女子、中学男子が1周ずつ走る。
リューチン、やまにぃは半周先の向こうでスタンバイ。
「みーちゃん、頑張ってね!」
セッチーの声。
「秘密兵器、迫沼美森!がんばりま〜す!」
みんながドッと笑う。
なんで笑うの?秘密兵器だもん!
「だからそれは、き・の・せ・い!」
真生姉も爆笑してるぅ!
いいもん!
走りで見せてあげるもん!
「位置について、ヨーイ……」
パーン!
鋭いダッシュ!
みんなを引き離して、トップに立つ私!
……のはずだったのに。
"先頭に立ったのは稲見Aチーム。それを追いかけるのが稲見B!スピードの稲見、さすがだぁ!続いて本町B、川林A!"
4位〜?
フフフ。
でも、ここからが秘密兵器の見せ所!
いくよー!
「店番フラ〜ッシュ!」
"バックストレートの攻防!4位川林A迫沼美森、3位本町Bをなんとかかわして3位浮上!稲見Bが先頭でバトンタッチ!稲見A、川林Aと続く〜!"
はぁはぁ……
やまにぃが笑いを堪えながら声をかけてきた。
「みーちゃん、『店番フラッシュ』ってなに?」
「私、秘密兵器だから必殺技作ったの!」
「頑張ってムリヤリ1人抜いただけじゃん!」
やまにぃ大爆笑。
「いいの!必殺技なの!」
その時気づいた。
やまにぃ、セッチー、真生姉、みんな本町Aだ。
本町A、ヤバいかも……。
※
稲見B 小畑 琉:リューチン
走力 △
→おばさん直伝のバトンパスが武器。
うわー!先頭で来ちゃったよー!
『いいが?リレーはバトンパスが大切だよ』
落ち着け。
おばさんに言われた通り、前の人が近くまで来たら……走り出す!
手を出すだけ。バトンは見ない。
そして、バトンの感触を感じたら……
ギュッと握ってトップスピードだぁぁぁぁ!
"稲見B 華麗なバトンパス!後続を引き離した!稲見テントが盛り上がるぅぅ!」
「琉くん!それそれ!いけいけ〜!」
澄子おばさんの歓声が聞こえた。
ありがとう、おばさん。
この調子で一気に駆け抜けるから!
"ホームストレートの競り合い!トップを走る稲見A、2位は川林A!バトンパスは華麗だったが稲見Bは現在3位"
やっぱりね……
バトンパスだけが良くても……
勝てないよね……
なんとなくわかっていたよ……うん。
※
本町A 東條 雪那:セッチー
走力 ◯+α
→特別な速さはないものの、速い方の女子。
"本町両チームは苦戦気味!ここからの巻き返しになるかぁ?"
「雪那ちゃん、負けないよ」
なっちゃん、余裕の笑み。
稲見A なっちゃん
走力 ◎
→雪那の友達。本編でわずかに出てきたモブキャラ。ここでもモブに徹する。
なっちゃんは、今トップの稲見Aだ。
「私だって負けないよ!」
本町Aは……5位か。
さすがになっちゃんのところまでは辿り着けない。
でも、少なくとも1人は抜いて、谷東姉弟にかける!
それがこのチームの作戦!
なっちゃんにバトンが渡った!
わ!なっちゃん、速い!
だけど……私だってぇぇ!
バトンを受け取って前を見据えた。
"稲見A依然トップ! 稲見Bが2位に再浮上! おっ? 本町Aが本町Bを抜いて4位へ! 3位の川林Aをうかがう位置まで来たぁ!"
ヤバッ!私やるじゃん!
バックストレート!3位になって大和にバトンを〜!
ズルッ!
あ! 靴が脱げたぁぁぁ!
"本町A東條雪那、コント張りの靴脱げだぁ!"
場内の笑い声が聞こえる。
メッチャ恥ずかしいじゃん!
……でも、バトンは渡す!!
"東條雪那、意地のバトンパス!4位で谷東大和へ!そして転んだぁ!"
粉の次は、土なわけ?
また顔洗わなきゃないじゃ〜ん!!
※
雪那、その根性……無駄にはしないぜ!
本町A 谷東 大和:やまにぃ
走力 ◎
→走るだけなら他の追随を許さない。
"本町A谷東大和、速いっ!あっという間に1人追い越した!稲見両チームも射程圏内か?"
遅い!遅いぞ、みんな!
全部追い越してやる!
トップで真生姉にバトンパスするんだ!
"本町A、一気に稲見2チームを追い越しトップに立ったぁ!"
「いいぞぉ!やまとぉぉぉぉ!!」
じいちゃんと、とこねえの声援が聞こえる。
真生姉が待っているところまであと少し!
勝った……
スポッ!
あ……
バトンが手から抜けて浮き上がった!
"本町A谷東大和、バトンでお手玉をし始めたぞぉ!"
あっ……あっ……
パシッ!
あっぶねー。
"何とか捕まえた!曲芸を見せたのは余裕の現れかぁ?だが今ので追いつかれた!本町A、稲見A、B、並ぶようにバトンパス!"
走り終えて気づくと、みんなに笑われていた。
「やまにぃ、曲芸上手だったよ」
リューチン、笑いながら言いやがってぇぇ!
「曲芸じゃねーっつーの!必死だったの!」
「……面白かったよ。やまにぃ、ありがとう」
……ププッ。
お笑い好きのリューチン。
絶対これからも話題される〜!!
※
本町A 谷東 真生:真生姉
走力 ◎
→本町の最終兵器降臨
"スタートした直後、すでに頭一つ抜け出たぁ!本町Aの闘将、谷東家の最終兵器、谷東真生!"
川林Aは現在4位……。
アンカーは国体選手、三千里カケル。
侮れない。
あの位置からでも持っていかれる可能性がある。
私が少しでも差を広げなければ。
"本町A独走!後ろを引き離しにかかったぁ!"
でも違和感がある。
あのしなやかな細身の体……。
もしかしたら、短距離選手では……ない?
私の予想が確かならば、まだチャンスはあるかもしれない。
"本町A 独走のまま、アンカーにバトンが渡ったぁ!"
「こりゃ本町Aが優勝だな!」
「この差は追いつけないよ」
走り終えたみんなは本部前で応援をしていた。
「さすが真生姉!」
セッチーとハイタッチ。そしてみーちゃんの元へ。
「ね、みーちゃん。三千里カケルって人、短距離選手?」
「違うよ。3000mの選手だって」
なんだ。やっぱりそうか。
長距離選手ならいけるかも……
"おおお? 川林A、怒涛の追い上げぇぇぇ!"
えっ!!
川林A 三千里 カケル
走力 ◎×3
→爆発力には欠けるものの、長距離が速い人は当然短距離も速い。
(自著『ツッコミ神様見聞録』の登場キャラ。友情出演)
なんで運動会に出てるんだろう?
まぁいっか。この運動会、楽しいし。
あれ? いつの間にか造宮さんがいる。
※造宮都胡弥
『ツッコミ神様見聞録』キャラ。
カケルの追っかけ。
まさか、神様も来てるのかな?
そういえば川林地区に神社があったっけ……。
ま、どっちでもいっか。
"川林A 三千里カケル、稲見両チームを抜き去り、本町Aに迫るぅぅ〜!"
※
「カケルくんすごい!ね!リューチン!」
興奮するみーちゃん。
僕はうなずくしかなかった。
「ヤバッ!川林A速すぎ!なんなの?あの人!」
セッチーが驚くのも無理はない。
今、場内はカケルくんの走りに心を奪われているのだから。
上下動の少ない無駄のない走り。
短距離選手の躍動感はないが、グングン前に進む推進力。
まるで、マラソンのスパートを見ているようだった。
"第4コーナー!ついに川林Aが本町Aを捉えたぁぁ!"
「ちっ!やられた。さすが国体レベル」
真生姉が悔しそうに顔をしかめた。
"1位、川林Aチーム!三千里カケル、国体選手の面目躍如ぉぉぉ!!"
うぉぉぉぉぉぉぉ!
川林テント、大興奮!
「かわばやし!かわばやし!」
「ゴーゴーレッツゴーか・わ・ば・や!……し」
「かーわーばーやーしー!」
みんなの応援が自由すきて、もうめちゃくちゃ。何言ってるかもわからない。
興奮したチアおじさんたちが、グラウンドに入り込もうとして、係の人に止められていた。
チアおじさんたち……暴徒化してる……。
真生姉が、走り終えたカケルくんに歩み寄っていった。
「三千里カケルくん、年代別ベストメンバーリレーはこうはいかないからね」
真生姉の宣戦布告。
その姿はまさに闘将そのものだった。
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