「古蓮町大運動会」第八話 各地区の思惑
午前中の競技が終了して、僕、みーちゃん、やまにぃ、セッチーの4人は、得点ボードを確認に行った。
稲見、本町が36点で並び、川林が27点だった。
「午後は団体競技が中心だ。本町の優勝が見えたな」
やまにぃがフッと笑う。
『団結の本町』
確かに団体競技は強そう。
でも僕は、得点ボードの下にある注意書きに目を止めた。
年代別ベストメンバーリレーは得点が2倍になります。
「やまにぃ、スピードの稲見を侮らないでよ」
その注意書きを指差して、僕はニヤッ笑った。
「じゃあ、カケルくんがいる川林にも逆転のチャンスがあるかも!」
みーちゃんは飛び跳ねながら笑う。
「なにっ?」
僕とやまにぃはみーちゃんを鋭く見た。
確かに、あの走力は侮れない。
まさか……
「大和、忘れてない?私のおばあちゃんちの隣に引っ越してきた、ともりさんのことを」
セッチーが不敵な笑みを浮かべる。
「バカ!雪那!それは秘密だろ!」
やまにぃがセッチーに言うと、セッチーは「あっ!」と声を上げて、自分の手で口を塞いだ。
ともりさん……?
八郎おじさん達が言っていた『なんとかモリ』という速い人の話を思い出した。
「もしかして……『なんとかモリ』って人は川林じゃなくて本町の人……?」
僕の言葉に、やまにぃとセッチーは顔を歪めたけど、それ以上何も言わなかった。
「何言ってんの、リューチン。それは私のこと!」
みーちゃんが自分を指差して、得意げに言う。
「だからそれはないって!」
僕たちの笑いが周囲にこだました。
※
お昼休みの時間から古蓮町音頭の間、各地区テントでは作戦会議が開かれていた。
川林地区:美森目線
「点数なんか気にすんな。楽しくやっぺ」
チアおじさんのリーダー、服屋のおじさんが笑って言った。
そう!楽しいのが一番!
お父さんの作ったお弁当も楽しかった!
ウサギさんサンドイッチ。
可愛い〜♪
「年代別ベストメンバーリレーは誰が走る?」
「カケルは決定な。あとは……」
みんな拳を構えて、フフッと笑う。
「せーの!」
「ジャンケンポーン!」
その結果……
「とうとう俺たちがヴェールを脱ぐときがきた!」
チアおじさん達が息を巻いていた。
私も……勝っちゃった。
出場決定みたい!
さすが川林の秘密兵器ね!
本町地区:真生目線
「玉入れは小学校低学年のやるやつだがらどうなっかわがんね。んでも綱引きは絶対勝つ!」
じいちゃん、気合バリバリだ。
「綱引きで勝ったとして6点。玉入れで負けて2点しか取れなかったとしても8点ね」
とこねえが推測をする。
私はうなずき、ペンを出して計算と考察をしてみた。
稲見は綱引きが弱い。
仮に玉入れで勝っても、ウチと同点だろう。
最終の年代別ベストメンバーリレーは各地区2チーム、計6チームで争われる。
稲見の走力を考えれば、ウチがAチームに速い人を集中させて勝ったとしても、Bチームが最低でも4位にならないと優勝は持っていかれる可能性が高い。
だけど、川林の三千里カケルくんのことを考えるとそれは難しい。
これは賭けるしかない!
「じいちゃん、速い人を2チームに分散しよう」
私はそう提案した。
「んだな。それでいぐべ。ともりさんもいいな?」
じいちゃんの言葉に、ともりさんはうなずいた。
「わかりました。私は走りから遠ざかっているので、私の代わりに彼を使ってください」
そこには、短髪で日焼けした筋肉か光る高校生が立っていた。
周りの高校生たちがメチャクチャ盛り上がっていた。
ガヤトリオ?と言われている人達を中心に。
ん?
この人たちのジャージ……
風野高校?
全国にも出ている陸上の名門校じゃない!
ガチ中のガチが来たぁ!
これは……イケる!
こちらの作品とコラボさせて頂いております!
私が大好きな作品です。是非ご覧ください!
ともりさん、ご快諾ありがとうございます😊
稲見地区:琉目線
「ここで本町に並ばれているのは計算外だな」
「さっきのリレーで川林に持っていかれたのが大きい」
八郎おじさんを中心に、みんなが真剣に会議しているのを、出番が終わった僕は気楽な気持ちで聞いていた。
「大人はスピードスター満載だが、問題は小学生だな。大和や雪那に対抗できる人……」
そのとき、おじさんと目が合った。
……なんか……嫌な予感。
「琉、バトン上手かったな。お前、行ってみるか?」
「ええええ!」
僕の目はギャグ漫画張りに飛び出した。
冗談でしょ??
こんなガチに作戦会議まで開く競技に僕が出る?
絶対ヤバいって!!
「いや、バ……バトンがうまくいったって、ぼ……僕走るの速くないし……」
真剣なおじさんの目。
僕の手はガクガク震えだした。
「いや、この運動会はリレーゾーンが曖昧なんだ。それを最大限に使って……」
おじさんはニヤッと笑った。
えっ……
そんなことしていいの?
※
「1ヵ月の努力!目にもの見せてくれるわぁ!」
谷じぃの絶叫が鳴り響いた綱引きは、谷じぃ率いる本町が圧勝し、川林が2位、稲見が3位だった。
玉入れは川林が1点差で稲見との決戦に勝利。
1位川林、2位稲見、3位本町となり、各地区の得点は次のようになった。
稲見 42点
本町 44点
川林 37点
これから、三つ巴の決戦は最終種目へと移る。
年代別ベストメンバーリレーは、次のようにリレーを行うらしい。
①〜⑧は半周ずつバトンをつなぐ
①60代以上女子
②60代以上男子
③40代以上女子
④40代以上男子
⑤小学生女子
⑥小学生男子
⑦ 20代以上女子
⑧ 20代以上男子
※⑨⑩は一周ずつ走る。
⑨ 1番速い女子
⑩ 1番速い男子
稲見のスピードスターぶりはどこで生きるのか?
本町の谷東家、東條家、特にまだ出場していないセッチーのパパの出場は?新戦力の高校生は?
川林、三千里カケルくんの爆走を止める人は現れるのか?
期待と不安の入り混じった最終種目。
どの地区が栄冠を手に入れるのか?
……って、この戦いに僕も走るの〜??
緊張しすぎて、手と足が一緒に出ちゃってるし!
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