【心の居場所最終話】「陽だまりの場所」中
誰もいない一人だけの狭い空間。
僕が悩んでいたことを打ち込んでみる。
"学校でクサイって言われます。絶対変なにおいなんて出してないのに。クサイって言われます"
エンターキーを押すと文字は消えた。
……何の変化もない。
なんだ。何も起きないじゃん。
パソコンの前を去ろうとした時、画面に文字が踊り始めた。
"俺も言われたことあるわ"
"いるよな。そういうやつ"
"断じて言う。君はクサくないぞ"
"でもそれはどうすればいいか?難しいなぁ"
"だいたい、そういう奴らの方がクサかったりするんだよ"
"そうそう。使い方もわからない香水を大量に使ってさぁ、10メートル先からプンプンに匂うやつとか"
"それに引き換え、君は無臭なんだろう。逆に君がその周りの臭気を吸い取っているとさえ言える"
"おならの中にいる人には、おならのにおいが普通なんだ。だから無臭をクサく感じるんだ"
……おならの中の人?
"よし、君を消臭効果がある”銀イオン君”と名付けよう"
……銀イオン君?
思わず吹き出してしまった。
この人たち面白い!
心にしまっていたことをもっと書きたくなった。
僕にとって辛い悩み。
誰にも言えない悩み。
でも今、ここの人たちは真剣に寄り添ってくれて、考えてくれて、僕に味方してくれて……。
言葉に思いやりが溢れていた。
"ありがとう。なんかスッキリしました"
"また何かあったらいつでも来いよ"
"私たちは銀イオンくんの味方だ"

解決にならなくても話せる場所。
大切ですよね。
紫吹はるさん、ありがとうございます!

僕は個室を出て、お母さんと乃亜先生のところへ戻った。
「どうだったの?」
すかさず話しかけてくるお母さん。
「すごく…嬉しかった」
僕はありのままを伝えた。
それを受け入れてくれた。
黙って聞いてくれた。
解決にはならなかったかもしれない。
でも……嬉しかった。
みんなの優しい言葉。
『ありのままでいていいんだよ』
そう言ってもらったように思えた。

そんな場所、大事にしたいと思います。
RaMさん、ありがとうございます!

違う空間にいるネット上の人たち。
図書の交流ノート。
別の時空間から届く言葉の温もり。
誰もいない空間。
でも実在する本当の『声』。
『0対1』ってそういうことなんだ。
僕の顔を見たお母さんは、さっきまで寄っていた眉間のシワが消えて、肩の力が抜けた柔らかい顔になっていた。
僕が大好きなお母さんの顔に。
「やっぱりここだったのね……」
そう言うお母さんは笑顔だった。
「『やっぱりここ』って、どういうこと?」
不思議に思ってお母さんに訊いたけど、笑顔で返すだけで返事はなかった。
それから僕たちは、フリースクールのスペースに案内してもらった。
みんな一人ひとりが自分の調べたい事を調べて勉強していた。
岩井先生という男の先生がいて、その勉強を補助する感じに見えた。
黒板に書いて何かを教える学校みたいな感じではなかった。
「一人で学べる方法を見出して欲しいんです。そういう機会が多くなると思うので……私の経験上ですが」
乃亜先生も昔、一人で勉強していたのかな?
お母さんは乃亜先生の言葉にうなずいていた。
フリースクールの生徒は基本2時間勉強することになっているらしい。
ただそれも人によって違う。
自分を受け入れる心。
ここにいていいんだ、と思える心。
未来へ向かって進もうと思える心。
勉強よりもそういう心を大切にしている、と乃亜先生が説明していた。
少しずつ興味があることから始めてみる。
最初は5分でも10分でもいい。
ちょっとずつでいい。
気が向いたら、また5分10分と勉強してみればいい。
そんなところから始める人もいるし、もっとしたいと思う人は、3時間でも4時間でもやってもいい。
でも基本は2時間。
2時間続けてやるか、1時間ずつに区切るかは本人の自由。
2時間できるかどうかは、先生たちやカウンセラーの人たちが相談して決めるらしい。
それ以外は185ハウス内のどこにいてもOK。
もっと勉強してもよし。
畑仕事を手伝ってもよし。
喫茶店のお手伝いをしてもよし。
1人でいるもよし。
外で遊ぶもよし。

自分を認めて。自分のペースで。
こんな感じもいいかな?
なんて思っています

「子供に労働させているんですか?」
「いえいえ。家のお手伝い感覚でしてもいいよ、という感じです。だから一切強制はないんです」
「でも、さっきも皿洗いしていた子がいましたよ」
「ええ。忙しいとき率先して手伝ってくれるんですよ。優しい子なんです」
だからさっきお皿を洗っている中学生くらいの人がいたんだ。
人とコミュニケーションをとるのが抵抗あるなら、ネット185と交流してもOK。
本を読んでノートでの交流もOK。
心理カウンセラーさんや喫茶店マスターの万尋さんと1対1で話すのもOK。
畑の人たちと話すのだってもちろんOK。
自分の意見を言うもよし。
他の人の意見を聞くもよし。
コミュニケーションにはたくさんの形がある。
そんな感じみたいだ。

それをする勇気。大切さ。
改めて納得しました。
reinaさんありがとうございます!


改めて気付けました。
yumiパンダさんありがとうございます!

畑で採れたものは、直売所で売ったり、ネットで売ったり、喫茶店の料理の材料になったりするらしい。
喫茶店の売り上げを含めて、それがフリースクールの運営資金になっているそうだ。

こんな感じの売り上げ還元システムにしてみました。
実用的な案をありがとうございます!

「あの、不登校生の保護者フォーラムは私も参加できるんですか?」
僕はお母さんの発言に驚いた。
『あなたは不登校じゃない。ただちょっと学校休んでいるだけ』
いつもそう言っていたのに。
「もちろんです。参加されますか?」
「はい。ぜひ」
お母さんは複雑な笑顔を見せて続けた。
「姪がこちらでお世話になったことがあると思うんです。先程の詩を見て、姪の言葉を思い出して…」
乃亜先生はちょっと驚いた顔をした。
「もしかして……夏希ちゃんの…?」
「あ、そうです!なんでわかったんですか?」
「目元がそっくりなので。夏希ちゃん、大学元気で行ってますか?」
「最近彼氏ができたそうですよ。とても楽しそうで」
「良かった。夏希ちゃんが……」
乃亜先生、すごく嬉しそう。
「先生方のおかげです。ありがとうございます」
お母さんの顔は穏やかな笑顔だった。
いとこの夏希ちゃんがここに通っていたのは中学生のときらしい。
もう5年も前のことなのに、乃亜先生はすぐに思い出して、大学に行ってることも知っていた。
僕もここに通ったら、覚えていてもらえるのかな……?

心を感じました。
紫陽花さん。ありがとうございます。

お母さんはここを気に入ったみたい。
表情を見れば分かる。
僕もそうだ。
だからかな?
普段なら絶対思わないようなことをしたくなってきた。
「お母さんがお話している間、僕、畑のお手伝いしてもいいかな?」
お母さんと乃亜先生は目を合わせて、笑顔で僕にうなずいた。
「じゃあ農場のみなさんにも紹介しないとね」

畑や喫茶店で色々な年齢層と繋がりつつ役割がある。
こんなのを考えてみました!
ありがとうございます。

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