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【漫画】無色の牢獄|第5話中編|エッセイ

私は姉たちとは違い、勉強机を買ってもらえませんでした。
しかし、ランドセルは新しく買ってもらえることになりました。

長女と私は5歳差。
私が小学1年生になる時、長女は6年生。
お下がりが使えないから。
だから、新しく買うしかなかったのでしょう。

当時のランドセルは、男の子は黒か青、女の子は赤。
それが当たり前で、今のようにカラフルな選択肢はありませんでした。

それでも私にとっては、
『自分で好きなものを選べる』貴重な機会です。

絶対に後悔しないものを選びたい。
普段行くスーパーより大きな量販店へランドセルを選びに行きました。

どれにしようかな。
ワクワクしながら見ていると、母があるランドセルを手に取って言いました。

「これがいいんじゃない?」

それは、オレンジと赤を混ぜたような、まるでカニの甲羅みたいな色。
表面は少しザラザラしていて、オブラートを貼り付けたような…
なんだか濁った感じのランドセルでした。

『え…なんかやだ』

そう思って店内を見渡すと、青いランドセルが目に入りました。
深い海のような青。
しっとりとした手触りのそのランドセルは、他のどれよりも魅力的に見えました。

だから私は迷わず言いました。

「これがいい!」

でも、母は
何言ってるの、青は男の子の色なのよ。ダメに決まってるでしょ!」と言って聞く耳を持ちません。

反対したのは、母だけではありませんでした。
ゆり、わがまま言わないの
母の言葉に、姉たちも一緒になって口を出してきます。

私が「これがいい」とどれだけ頼んでも、3対1で反対され、誰ひとり、聞く耳を持ってはくれませんでした。

結局、何度頼んでも一番欲しかったランドセルは買ってもらえず、赤の中で一番好きだと思えた深い紅色のランドセルを買ってもらいました。

少し成長して気づいたことがあります。
ランドセル売り場を通りかかると、あの時私が欲しかった『しっとりとした深い色』のランドセルを見かけることがあります。
共通しているのは、『本革』であること。

そして、母が勧めた『オブラートを貼り付けたような』ランドセルに似たものもありました。
それは、本革の半額以下で売られていたのです。

当時のランドセルが本当にそうだったのか、今となっては確かめようがありません。
でも、その後のこの家での扱いを考えると、
『安かったから、私に勧めたんだ』と、どうしても思えてしまうのです。

家計に余裕がなかったなら仕方ないと思います。
新しいランドセルを買ってもらえるだけでも、贅沢なことだと思います。

でも、そうだとしても。
お姉ちゃんたちが、楽しそうに自分の机を選んだ時のように、私も「これがいい」と、
自分のためのものを自分で選びたかったのです。

姉たちは、一番欲しい机を買ってもらえました。
私は、一番欲しいランドセルを諦めました。

選んだ紅色のランドセルが、嫌いだったわけではありません。
でも、私が一番欲しいランドセルを母に伝えた時、「青なんてダメに決まってる」と迷わず否定されました。

姉たちが机を選ぶ時は、あんなに笑顔で一緒に悩んでいたのに‥

きっと、私が一番欲しかったのは、ランドセルそのものではなかったのです。

「どれがいい?」と私の話を聞いてほしかった。
私のために、一緒に悩んでほしかった。
私はただお母さんのことが大好きで、お母さんに、私を見てほしかっただけなのです。

今、街でカラフルなランドセルをかるっている子どもたちを見かけます。
水色、紫、ピンク、茶色。 自分の好きな色を、誇らしげに背負って歩く小さな後ろ姿。

その姿を見るたび私は立ち止まってしまいます。
あの日の私には絶対に選べなかった自由が、そこにあって。

ただただ、眩しくて仕方がないのです。

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