【駐在員の本音】任せると言いながら、最後は僕に戻ってくる
第57話
「ローカルに任せる」と言われた日
新しいプロジェクトが始まる朝。
上層部のメールに「ローカル主導で進める」という一文があった。
パソコンの前でその文字を見つめながら、僕は小さく息を吐いた。
——また、同じことの繰り返しだ。
ローカルスタッフは優秀だ。
彼らのほうが現地市場にも、人脈にも詳しい。
それでもトラブルが起きると、本社から最初に届くのは僕宛てのメール。
“念のため、状況を確認してほしい”という定型文。
会議室の沈黙の温度
週に一度の定例会。
ローカルのマネージャーが、少し緊張した声で進捗を説明する。
その英語の後、画面越しの本社担当者が日本語で僕に尋ねる。
「結局、彼らはどこまで理解してるんだろう?」
——わずかに沈黙が落ちる。
マイクのノイズだけが響く中で、僕は通訳し、補足し、空気を整える。
信頼とは、言葉の壁を越える前に、立場の壁に遮られている気がした。
「任せる」という言葉ほど、空虚なものはない。
結局、最後に責任を負うのは僕だ。
進捗が滞れば「サポートが足りない」、
成功すれば「現地が頑張った」。
どちらの言葉にも、僕の名前は残らない。
夕暮れのオフィスで
窓の外、夕陽がガラスに反射している。
誰もいないデスクに残されたローカルスタッフのノート。
そこには、慣れない日本語で書かれたメモ——「まかせてください」。
僕はその文字を指でなぞり、静かに息を吐いた。
任せる勇気を覚えなきゃいけないのは、たぶん僕らのほうだ。
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