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【仕事】諦めの早い医者といつまでも粘る医者

先日カンファレンスでザワザワしたことがありました。


あんまり詳しくは書けないので超ざっくり言うと
80代男性が肺炎で入院して
治療していったん良くなったけどまた悪くなる、を繰り返しており、かれこれ1ヶ月以上入院してるけど、退院の目処が立たないという趣旨のプレゼン。


元々は認知症もなく現役でお仕事されている方だったが、肺癌治療後、肺気腫で在宅酸素使用中。

CT見ると肺はスカスカで
これは確かに良くならなくても全然おかしくないよな、とみんなが思う症例です。



ある疾患に対して
治療が効いて良くなって退院する人と
治療が効かなくて悪くなって亡くなる人は
どんな医者が診ても多分予後はほとんど変わりませんが、


その狭間に
最初のプロブレムに対しては治療が効いて良くなったんだけど、別の悪いイベントが変わるがわる起きて、一つ一つは致死的ではないので、その度に医療が加えられて良くなるんだけど、本人はちょっとずつ弱っていって月単位で退院出来ない人、がいて


こういう患者さんたちって
主治医によって少し方向性に違いが出ることがあるかもしれません。


極端なことを言うと主治医が「早めに撤退ドクター」なら予後が若干短くなり、「死ぬまでフルファイトドクター」だと、寿命が延びる可能性があるのかなと思っています。


カンファレンスがざわついたのは、
主治医が、もうこの方はBest Supportive Care(BSC:痛みや症状を和らげる治療やケアに専念する)をメインにしていくのがいいんじゃないかと言ったことに対して、周囲の医師達が「こいつ諦めるの早くない?」と感じたことが原因でした


主治医のプレゼンを要約すると
「ご本人がもう苦しいことはしたくないと言っていますので、症状緩和をメインにしていこうと思います。」


まぁそれ自体はいいんですけど、
問題はどの治療をやめて、どの治療は続けるのかという点において「おいおいそれ止めるのってどうなの?」となったことです。


悪性腫瘍の場合は分かりやすいから医者によってそれほど判断はかわりません。
手術や抗がん剤は終了、症状緩和のための投薬や処置は行う、でたぶん満場一致です。


ただ癌じゃない場合はそうもいかない。


肺炎で言うと抗菌薬が根本的な治療ですが、もしこれを止めると症状も悪化するので苦痛につながります。ただ投与するからには点滴を取り続けなければならないし、効果があるのかないのか逐一検査もすることになるし、人によっては下痢が出たり皮疹が出たりすることもある。
痰が多くて苦しいなら、鼻や口から吸引すると一時的に楽になりますが、そもそもその吸引がきつい。
あとは気胸になったりドレーン入れれば楽になるけど、当然入れるときは痛いわけだし数日、体から管が出てる状態になる、などなど。


治すために当然やるべきものとして継続してきたことを止めるのに、参考とすべき教科書や明確な基準はありません。


やっとガイドラインに、高齢者の誤嚥性肺炎に対して抗菌薬投与を行わないことを検討する趣旨のことが記載されましたが、それ以外にはなんの指標もありません。


個々の患者の状況に応じて、経験に基づいて判断しなければならないのです。


実際には、撤退早い医師〜死ぬまでフルファイト医師の二極化ではなく、細かいグラデーションがあります。


今回の主治医は、割と撤退早め寄りの人だったので、みんなが敏感にそれを感じとって反応したんだと思います。


ただ、たとえこの患者さんの意思を無視して死ぬまでフルファイトしたとしても
実際に予後はどのくらい延びるだろうか、と私は考えてしまいました。


頑張った先に何がある?


もしかしたら今回のイベントは乗り越えるかもしれないけれど、また同じようなことがすぐに起きそうな背景ではあります。
さらに言うと、改善してもすぐに自宅には帰れないでしょうし、仕事復帰も厳しそうです。


そういう意味では症状緩和をメインにするのは悪いことではないような気もしますが、
良くなる可能性がある段階で、良くするための治療をやめることにはやはり抵抗もあります


ただ日々の診療で感じるのは
医師の予測って結構希望的観測じゃないか?ということです。


当然ですけど、良くなってほしい、良くしたい、と思ってやってるわけなので
無意識のうちに上乗せして予後を推定してしまっているのではないかと感じることはあります


患者さんは苦しいことはしないでほしいと言いますが、
もし良くなる見込みが80-90%あるなら、我慢して頑張ってくれるでしょうし、10%もないならもう何もしたくはないでしょう。


それを数字で正しく見積り出来ないからこそ
医者によって意見が割れることはあるわけです


患者に厳しいことが伝わっていない罪もある


やっぱり嫌な話をするのは嫌なので
実際に厳しい経過だと思ってても
それが確定したものでなければ
はっきりビシッと言いづらいこともあります


「良くなる可能性は低いです」
と医者に言われたら
患者さんは実際何%くらいだと思うのでしょうか



私がこれ言うときは
良くなる可能性は10%以下だと思っていますが
そのあとの患者さんとの会話や雰囲気からは
多分五分五分くらいに思っているんじゃないかと感じます


だから10%以下だと思ってるなら、そう言うべきなんでしょうね



とはいえやっぱり難しい

無理だと思ってたけどなんとかなった人もいるし
散々頑張った結果亡くなった人もいます

こちらが厳しいと思って伝えても絶対に諦めない人もいるし
これやれば良くなるのにと思ってももう何もしてくれるなと頑なな人もいます


結局は経験を積んで
予後予測の精度を上げて
可能性は探りつつも
厳しいと判断した場合はそれを患者本人に伝わるように共有して
どこまでやってくか決めていくしかないんですよね


難しいし大変だし精神的に削られます

でもそれが臨床医の泥臭いお仕事なんでしょうね

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