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ゲーム理論で考える防犯・続編

前回(前編)は
防犯におけるゲーム理論の考え方と、状況に応じて最適な行動を選ぶ力が「身を守る力」につながるということをお話ししました。前回のnoteはこちら

今回はその続きとして、より現実に近い訓練・試合方法である「ポジティブリスト vs ネガティブリスト」の試みについて紹介します。
この訓練・試合形式は、菊野克紀先生との対話の中でご提案いただいた実戦的なアイデアです。

菊野克紀先生とのご縁は、元静岡県警で格闘技の世界でも活躍されている関根秀樹先生に紹介いただいたことがきっかけでした。

関根秀樹先生

当時の僕は逮捕術の準指導員をしていて、県警の格闘技クラブチーム(格闘部)の副代表としても活動していました。警察内でも、実戦的な格闘技や護身技術の向上に力を入れていた時期で、実戦と理論の両面から教えられる講師を探していたところ、関根先生に指導を受け、相談する中で菊野先生をご紹介いただきました。

https://x.com/ap_kouhou/status/1105382131197308928?s=46

それ以来、菊野先生からは多くの学びを得てきました。

現実に近い非対称ルールとしての訓練・試合
僕は長年、武道・格闘技を学び、警察官としての経験も積んできました。その中で強く実感しているのは、「いかにして体力のある格闘技未経験者を無傷で制圧するか」が、護身や防犯において非常に重要な目標になる、ということです。

もちろん、より高いスキルを目指すことは素晴らしいことです。しかし、防犯教育や一般の方を対象とした護身術として考えるなら、この「無傷での制圧」が一つの“最大公約数”とも言える現実的な目標になるのではないかと思います。

もし相手が格闘技経験者であれば、その戦いはもはや“護身”ではなく、異種格闘技や総合格闘技(MMA)といった、競技としての戦いになります。これはルールや前提が変われば最適な戦略も変わるためで、ゲーム理論の観点から見ても当然のことです。

そのため、この訓練においては、あくまで“格闘技未経験者に対して、制限付きで対応する”という現実的な想定に基づいた試合形式となるのです。

このような考えに基づいて、僕が現在取り組んでいるのが「ポジティブリスト(やっていいことのみ許可)vs ネガティブリスト(やってはいけないこと以外OK)」という、左右非対称のハンディキャップマッチ形式の訓練・試合です。

守る側(市民・警備員・警察官など)は法的・倫理的な制約に縛られ、攻める側(加害者役)は自由に攻撃ができるこの構図は、現実の護身状況に極めて近いものです。

この訓練形式を通じて、「制限された中でどう動くか」「どのようにリスクを抑えるか」といった判断力と行動力を養うことができます。
さらにレベルを高めていきたいという人にとっては、訓練の中で総合格闘技そのものや各種競技大会・コンペティションの重要性も見えてくるでしょう。

僕自身は、この「ポジリス vs ネガリス」形式のハンディキャップマッチと、対等なルールで行うコンペティション形式の大会の両方を開催し、それぞれの目的に応じた学びや成長の場を提供していきたいと考えています。

菊野克紀先生からの提案:さらに実戦的なルールへ

この訓練・試合形式について、菊野克紀先生と意見交換を重ねる中で、さらに現実的かつ本質的なルールの提案をいただきました。

ひとつは「危険なポジションでの密着・膠着を許さない組み技ルール」です。

柔術や総合格闘技では、本来なら危険なポジションで組み合ったままお互いが動かなくなる「膠着」状態が生まれることがあります。

膠着

ゲーム理論の観点では

・ナッシュ均衡:お互いが戦略を変える理由がない安定状態
・パレート最適:どちらかが得をすると相手が損をするため、現状を維持する状態

として説明されますが、これはルールに守られているから成立する均衡です。

実戦では頭突き、噛みつき、武器の使用、第三者の介入など、静止状態に対して加えられる攻撃手段やイレギュラーは無数にあります。

現実の戦いでは、止まっていることそのものがリスクなのです。

そのため、「常に動き続けること」を求められるのは極めて実戦的だと感じています。僕自身もこのルールでの戦いに挑戦していきたいと考え、トレーニングを重ねています。

さらに、菊野先生の主宰する「誰ツヨDOJOy」では、急所攻撃ありの訓練も行われています。これもまた、実戦を見据えた非常に高いレベルの訓練です。僕もその前提に立ち、急所攻撃を想定した練習を日々積んでいます。

試合・競技形式の価値とその可能性

僕自身、これまでに柔道、総合格闘技(MMA)、ブラジリアン柔術、そして逮捕術などの大会に出場してきました。試合を通じて得られた学びは、日常の練習や座学では得られない、非常に貴重なものでした。

しかしながら、多くの人は武道や格闘技を学んでいても試合に出る機会がないままです。もしくは、試合に出るという選択肢そのものを持たない方も少なくありません。

僕は特に、法執行官や警備員といった“職業として戦う責任がある人たち”にこそ、このような試合形式の経験をしていただきたいと強く思っています。

そして、これは職業人に限った話ではありません。

誰もが参加できる「実戦的防犯訓練」の未来へ

「自分の身を守りたい」「家族や大切な人を守れる力をつけたい」
そうした気持ちを持っている一般の方にも、ぜひ参加してほしい。

このような試合形式の訓練を通じて、自分の限界や弱点、強みを“体験”として学ぶことができれば、護身や防犯の意識がよりリアルで強固なものになります。

ルールに守られない現実に対して、どう対応するか。
それを学ぶ場として、ポジティブリスト vs ネガティブリスト、膠着を許さない組み技、急所攻撃ありのルールは非常に有効な手段です。

終わりに

僕が伝えたいのは、理論だけではなく、「現実に近い状況下でどう動くか」という“選択と行動”の力です。

そして、ルールに守られない状況でも「戦わずに済む」には、「戦える力」があった方がいいということです。

株式会社MI8では、防犯や護身術、安全教育に関する講演・セミナー・ワークショップなどのご依頼も受け付けています。
学校や地域団体、企業・自治体での安全対策に関心がある方は、お気軽にご相談ください。

槌 大介(つち だいすけ)

株式会社MI8 代表取締役
名古屋市出身。
現在は「武道・格闘技を社会に役立てる」ことをテーマに活動中。
• パラエストラ東京/誰ツヨDOJOy 所属
• こどもヒーロー空手教室 指導員
• 赤坂中ノ町・新四町会・広報部・副部長

主な武道歴・段位
• 伝統派空手(三段・黒帯)
• 柔道(三段・講道館)
• 柔術茶帯(IBJJF)
• 杖道(二段・全日本剣道連盟)
• 武神館(黒帯初段)

戦績・主な実績
• JBJJF 全日本マスター柔術選手権 2022
 紫帯 無差別級 優勝
• JJFJ ヒクソン・グレイシー杯国際柔術大会 2014
 青帯 マスター1 体重別 優勝
• JBJJF 全日本マスター柔術選手権 2017
 青帯 体重別 優勝
• IBJJF ロンドンオープン 2015
 青帯 マスター1 体重別 準優勝(2位)
• IBJJF ワールドマスター(ラスベガス)
 青帯カテゴリで1勝
• 総合格闘技(MMA)5戦

今後の予定
• 2025年7月 敬天愛人練部大会 出場予定

https://ktaj.net

【株式会社MI8】
https://mi8.tokyo

【赤坂中ノ町・新四町会】
https://www.akasaka-naka4.com

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