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AI活用を阻む壁① ハード面のハードル

この記事は、2025年2月に発行した「AIがひらく看護管理の未来〜人間にしかできない仕事をするために〜」の内容を投稿記事の形にしたものです。


看護におけるAIの活用といったときによく例に挙げられるのは、看護記録や議事録の作成といったものです。しかし、本当にAIを用いれば負担軽減が可能なのかについては、よく検証する必要があると私たちは考えています。


看護記録のハードル

まずは看護記録を例に考えていきましょう。看護記録の作成をAIで支援するという場合、AIの使い方は主に二種類に分かれます。一つには、音声認識AIにより、タイピングではなく口頭でパソコンに入力すること。もう一つは、生成AIを用いて、パソコンに入力された内容を、看護記録としてふさわしい整った文章にすることです。

しかし、それにはいくつかの課題が立ちはだかります。例えば、患者情報をインターネット上のサービスに入力してもよいのかという情報管理や倫理的な問題が生じます。現在多くのAIシステムはインターネット上のサーバーで処理を行う仕組みになっており、データの漏洩や不正アクセスといったリスクが完全に排除されるわけではないからです。セキュリティレベルを保つためには、各病院が院内に独自のサーバーを構築し、インターネットに接続せずにAIを利用できる環境を用意しなければなりませんが、それにはかなりの初期投資や労力が必要になります。

また、音声入力をする際に、静かで、かつ他の人に内容を聴かれない環境を確保するために、別室に移動する必要が出てくるかもしれません。院内にそのような環境を確保することができるかといった問題に加えて、多忙な看護師が記録のためだけにいちいち別室に移動することが可能かという問題もあります。

入力した記録内容をAIに要約させるにしても、そのAIに作らせた要約内容が、正式な看護記録と見なせるレベルになっているかどうかは、人が判断しなければなりません。仮に記録にミスがあったことで治療やケアに影響があった場合、誰が責任を取るのかという問題が発生します。

問診業務のハードル

AIが看護師の代わりに患者の問診の一部を担い、表情や仕草から情報を読み取ったり、過去の記録を参照したりして情報を補完し、看護師に伝えてくれる…といったサポートも考えられます。しかし、これもセキュリティ面の課題や、患者の言葉や表情などを読み取る高精度のカメラやマイクなどの機器を用意しなければならないというコストの問題が生じてきます。また、AIによる問診に抵抗を感じる患者もいるかもしれませんし、患者の曖昧な発言や、表情・仕草をどこまでAIが正確に読み取れるのかという問題もあります。

チェック業務のハードル

薬剤確認や患者同定などのチェック業務においても、AIの誤作動により、薬剤や患者を誤って識別してしまう可能性をゼロにはできません。AIの誤作動に素早く気づける仕組みを構築できるのか、仮に誤作動を起こしたときに誰が責任を取るのか、という問題は常に生じます。また、ベッドサイドなどにスキャナーや端末を用意するコストやそれらの機器のメンテナンスコストもかかります。
このように現時点では、看護業務にすぐにAIを導入できる状況であるとは言い難いのです。

管理・教育からAI活用を始めよう

これらの課題を踏まえると、看護業務の中でも、看護管理や教育の領域こそ、最もAIを活用しやすい分野であると私たちは考えています。これらの領域は、患者情報を直接扱うことがないため、看護記録などのような厳格なセキュリティは求められません。また、患者の表情や動きを読み取るカメラや、薬剤チェック用のスキャナーなどの特別な機器も必要ありません。一般的なレベルのセキュリティが保たれたインターネット端末から対話型生成AIにアクセスすれば、すぐにでもAIを活用できるのです。

※このマガジンは、AI技術の中でも、特に「対話型生成AI」の看護領域への活用について論じるものです。本記事では、「対話型生成AI」を、「生成AIのうち、人間と自然な言葉で会話ができ、文章生成を得意とする性質を持つAI」と定義します。

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