AI活用を阻む壁② ソフト面のハードル
この記事は、2025年2月に発行した「AIがひらく看護管理の未来〜人間にしかできない仕事をするために〜」の内容を投稿記事の形にしたものです。
とにかくAIを導入すればうまくいく
というわけではない
看護管理や教育の分野こそ、AIの導入に最も向いている分野だと前のページで述べました。ただし、対話型生成AIを看護管理に導入しさえすればすべて解決する、というわけではありません。対話型生成AIは、テキストデータであればどんな文章でも生成できてしまう汎用性の高いものだからこそ、「いかにうまくAIを使い、自分が望む答えを引き出すか」という使用する側の技術が求められるのです。
例えば、以下はChatGPTに、「新人の学習意欲が低いんだけど、どうしたらいいですか?」と尋ねたものです。

新人の学習意欲が低いんだけど、どうしたらいいですか?

新人の学習意欲が低い場合の対応策
新人の学習意欲が低いとのこと、お困りですね。具体的な状況やその方との関係性によって、効果的な対応策は異なりますが、一般的に有効な方法をいくつかご紹介します。
原因の究明と個別対応
まず、なぜ学習意欲が低いのか、その原因を特定することが重要です。
仕事への適性:現在の仕事内容が本人の適性に合っていない可能性があります。
目標の設定:目標が明確でなく、達成感を感じにくいのかもしれません。
職場環境:人間関係や職場環境に不満がある可能性も考えられます。
スキル不足:必要なスキルが不足しており、自信を持てないのかもしれません。
モチベーション:仕事に対するモチベーションが低い状態なのかもしれません。
原因を特定したら、その人に合った個別対応を行いましょう。
面談:一対一の面談で、本人の気持ちを聞き、悩みを共有しましょう。
目標設定:共に目標を設定し、達成するための具体的な計画を立てましょう。
サポート体制:必要なサポートを提供し、不安を解消しましょう。
成長機会の提供:新しいスキルを習得できる機会を提供し、成長を実感させましょう。
モチベーション向上策:褒め言葉や感謝の言葉などを使い、モチベーションを向上させましょう。

対話型生成AIの回答は、質問者の意図を汲んで最適な答えを考えてくれるわけではなく、どこまでも一般的な内容だよ

このように尋ねるだけでは、AIは通り一遍の回答しか示してこないため、あまり参考にはなりません。「その新人はどのように学習意欲が低いのか」「どのような状態になってほしいのか」といったことを具体化して尋ねれば、回答の質も上がってくるかもしれませんが、そのように自力で論理的に具体化できているのなら、AIに訊かずとも自力で解決策も見いだせるはずです。また、いくら具体化したところで、AIが質問者の意図を深く汲んで「その新人個人に最適なプラン」を自動で立ててくれるわけではなく、回答はどこまでも一般的な内容にとどまってしまうでしょう。AIの活用はあくまで手段であり、「AIを導入しさえすればすべて解決する」と考えてしまうのは、手段の目的化にすぎません。
肝心なのは、「何のためにAIを導入し、どのようにその目的を達成するのか」を設計することです。現在の看護管理業務や教育の仕組みのなかで、時間や手間を取られているのはどの部分なのかを詳細に分析し、「AIとどんなやりとりをして、どんなアウトプットを出せば、業務負担の軽減や効率化に繋がるのか」を考える必要があります。
しかし、ただでさえ忙しい管理者や教育担当者が、AI導入のための設計まで考えるのは非常に負担が重いことです。「AIを使えば絶対にいつか劇的に業務が楽になる」という保証もありません。まかり間違うと、「上から『AIを使え』と言われているから無理やり工程に盛り込み、人間の作業負担が前より増えた」といったことが生じかねません。
看護管理者のための
思考・作業のパートナーをAIで作る
私たちはこの10年間、看護管理者の方々のご協力を得ながら、問題解決支援のフレームワーク「PDP(Problem- Discovery Process)」や、新しい看護管理のメソッド「マネジメント・コンパス」を開発し、普及に努めてきました。管理業務上の困りごとをお聴きし、解決の支援をした件数はこれまでに1万件以上にのぼります。また、マネジメント・コンパスをWEB上で展開できるアプリの提供を行っていることで、看護管理者の方々が日々入力する、管理業務に関する様々な課題のデータを蓄積しています。私たちはこれらの膨大なデータや知見をもとに、「看護管理者の方が日々何に時間を取られており、どのような支援があれば負担を軽減できるのか」を分析し、そうした支援をAIに行わせるために最適なプロンプト(生成AIのシステムに与える命令・指示)を開発しています。2025年には「MC看護管理 AI plus」というサービスとして、皆さんが使えるようにしていきます。
私たちのAIサービスでは、現在のところ、以下のような業務支援ラインナップを開発し、ブラッシュアップしています。
メール作成支援
会議運営支援
研修計画作成支援
アンケート集計支援
レポート添削支援
このサービスの特徴は、「議事録作成」などの細かな作業一つひとつを代替させるのではなく、「会議運営」や「研修計画作成」という大きなひとまとまりの仕事全体の効率化を図っている点です。もちろん、議事録の作成には多くの時間がかかっており、そこを代替できるだけでもいくらかの業務負担は軽減できるかもしれません。しかし、そもそも会議が冗長で、決めるべきことがちゃんと決まらなかったりしたら、議事録の作成だけ短縮できても、業務の無駄がしっかり省けているとは言えません。忙しい看護管理者が真に時間を有効に使うためには、「この会議のテーマは何で、何を目的とするのか、会議終了後に何が決まっていればいいのか」を事前に設定し、議題や必要な情報を的確にまとめた資料を作成し、会議当日の時間配分や役割分担を決めておく必要があります。ここまでしっかり会議を設計できていれば、議事録も「とりあえず作らなければならないもの」から、「作成することによって業務が前に進むもの」に変化するでしょう。AIを使って、こうした質的な変化を積み重ねていくことこそが、真に「AIを使用した業務効率化」といえるのではないでしょうか。
私たちが開発しているAIサービスの「会議運営支援」は、会議設計~会議進行~議事録作成、という一連のプロセスを丸ごとAIがサポートします。AIが管理者に質問し、情報や考えを引き出しながら、その内容を的確に資料や議事録の形でまとめて出力してくれるのです。研修計画作成支援、メール作成支援なども同様に、AIと管理者が対話することで、管理者の頭の中にある漠然としたアイディアや情報を引き出していき、それをAIが適切な形にまとめてくれるという設計になっています。
※このマガジンは、AI技術の中でも、特に「対話型生成AI」の看護領域への活用について論じるものです。本記事では、「対話型生成AI」を、「生成AIのうち、人間と自然な言葉で会話ができ、文章生成を得意とする性質を持つAI」と定義します。
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