対話型生成AIは何が画期的なのか
この記事は、冊子「AIがひらく看護管理の未来〜人間にしかできない仕事をするために〜」(2025年2月発行)の内容を投稿記事の形にしたものです。
私たちの身の回りには、カメラの顔認証、画像検索、ターゲッティング広告、音声アシスタントなど、すでに様々なAIにあふれていますが、その用途や性質、用いられている技術、学習させているデータ、活用方法などはそれぞれ異なります。AIとは、「人間の知的活動や知的な振る舞いを、コンピューターを用いて人工的に再現したもの」の総称に過ぎず、「知的活動」の統一的な定義も存在しません。そのため、一口にAIを活用するといっても、「どのようなAIをどのように活用することについて考えているのか」をはっきりさせておかないと、適切な議論はできません。

本マガジンは、ChatGPTに代表される「対話型生成AI」の看護管理領域への活用可能性を検討することを目的としています。そこで、まずは「対話型生成AI」とはどのような性質を持ち、どのような仕組みで動くAIなのか、また、従来のAIとどのように違い、どこが画期的なのかということについて整理することにしましょう。
「生成AI」とは?
生成AIとは、文字通り「新たなコンテンツを生成するAI」のことを指します。文章や画像、音声、動画など、それまでこの世に存在していなかった新たなコンテンツを生成することができるのです。たとえば、このページ記事に使用しているイラストは、すべて画像生成AIに「~~な画像を作って」と指示して作らせたものです。
従来のAIと生成AIの違いを人に例えてわかりやすく表現するなら、従来のAIは「教えられたことの範囲内で、言われたことだけやる人」、生成AIは「1を聞いて10を知り、自分の学ぶべきことやすべきことを自力で考えてくれる人」だと言えるでしょう。
従来のAIは、データの整理や分類の仕方を学習し、その結果をもとに情報を特定したり、予測したりします。私たちの身の回りでも、「膨大な『人の顔』の画像データをもとに、写真の中から『これは人の顔だ』『これは〇〇さんだ』と判定する(顔認証)」、「ユーザーのWEBサイト閲覧履歴や属性情報、位置情報などのデータをもとに、その人の関心の高そうな広告を選び出して表示する(ターゲッティング広告)」、「ある飲食店のこれまでの来客数や注文履歴などのデータをもとに、その店の今後の売上を予測する」といったことにAIが活用されています。これらの行為は、あらかじめ人間が詳細に「このデータを使ってこのような計算をしてこんな結果を出しなさい」とルールを与えてプログラムしたものです。AIはそれに則って自動で計算などの処理を行うだけであり、AI自身が創造的な成果物を生み出したりすることはありません。
それに対して生成AIは、与えられたデータの中の共通点や構造を理解し、それらを組み合わせて新しいものを生み出すことに長けています。具体的には、「数百万冊の本の文章データをインプットし、そこから『この単語とこの単語は一緒に出てくることが多い』『文章はこのように展開されることが多い』といったデータ同士のパターンを理解し、それに則って新しい小説のような文章を書く」などの学習やアウトプットを行うことができます。人間が事前に詳細なプログラミングを行ったりしなくても、AI自身が既存のデータやルールの範囲を超えて幅広いタスクに対応し、新たなコンテンツを柔軟に創り出すことができる点が、大きな違いだといえるでしょう。
従来のAI
目的:既存のルールやデータにもとづいて情報の特定や予測を行う
何を学習するか:情報の整理・分類・検索の仕方
どのように動くか:決まった目的や範囲の中で動く。作業を自動化する
生成AI
目的:新しいコンテンツやアイディアを作り出す
何を学習するか:データ同士のパターンや関係
どのように動くか:幅広い質問や命令に柔軟に対応する
人の言葉でやり取りができる
ChatGPTやGoogle geminiなどは、生成AIの中でも、文章の生成に長けた対話型の生成AIです。人間が文章で話しかけると、その内容を受けて当意即妙な回答を生成してくれます。「改まった口調で」といった文体の指示や「ビジネス文書の体裁で」「メール文面で」といった書式の指示にも従いますし、文章を提示して「これを要約して」「〇〇語に翻訳して」ということもできます。さらには、「こういったプログラムを作りたいからソースコードを書いて」と言えば、一瞬で生成してくれます。現時点では、そのソースコードを用いてプログラムを実際に動かそうとするとエラーが発生することも多いですが、「こんなエラーが出たから直して」と何度か命令していけば、専門知識がない人でも、簡単なプログラムを作ることができてしまいます。
これまでは、「AIにこんなことを実行させたい」と思ったら、人間側がプログラミング言語を学んで理解し、プログラムを用意しなければなりませんでした。しかし、対話型生成AIの登場により、私たちが普段使っている言葉(自然言語)でAIに指示を出し、非常に幅広いタスクを実行させることが可能になりました。


このようなことが可能になったのは、「自然言語処理」という技術が向上したからです。そもそも人間の言葉は曖昧さをはらんでおり、機械には理解することが難しいものでした。例えば、同じ単語やフレーズが複数の意味を持っていたり、よく似た意味の言葉でも微妙にニュアンスが異なったりします。「良い/悪い」「暑い/寒い」といった、はっきりした基準の存在しない語彙も多いですし、文法や語順も複雑です。同じ文章でも、「誰が言ったか」などの文脈によって、解釈が大きく異なってきてしまいます。しかし、コンピューターの処理能力が向上したことや、AI技術の向上により、AI自身が世界中の本やWebページなどの大量の文章データを読み込み、言葉の意味や使い方を独力で学び取っていくことが可能になったのです。
対話型生成AIのインパクト
ChatGPTは2022年11月にリリースされました。そのインパクトはすさまじく、公開からわずか5日でユーザー数が100万人、2か月後には1億人を突破するという、驚異的なユーザー獲得スピードを見せました。また、ChatGPT以外にも世界的な大手企業からスタートアップ企業まで、多くの企業が生成AIの開発に参入し、競争が過熱しています。この生成AIのブームは今後も続き、生成AIの性能や精度が向上するスパンもどんどん短くなっていくことが予想されます。
サービス開発や仕事の生産性向上のために生成AIを導入する企業も増えています。総務省が2024年に各国の企業を対象に行った調査では、生成AIを「活用する方針を定めている」(「積極的に活用する方針である」、「活用する領域を限定して利用する方針である」の合計)と回答した企業の割合は42.7%でした。8割以上が「活用する方針を定めている」と回答したアメリカ・ドイツ・中国と比べれば低い割合ですが、それでも半数近くの企業が、生成AIを活用していく意向であることがわかります。
ヘルスケア/病院/医薬/医療機器業界(以下、「ヘルスケア業界」)を対象に行った調査では、ヘルスケア業界の生成AIの活用推進度は全業界平均と比べてほぼ同等程度であり、生成AI活用への関心度も、自社・他社ともに「関心がある」と答えた層が70%超を占めていました。ヘルスケア業界においても、生成AIに高い関心が集まっている状況がうかがえます。

参考
総務省(2024)「国内外における最新の情報通信技術の研究開発
及びデジタル活用の動向に関する調査研究」
PwC(2024)「生成AI に関する実態調査2024 春 ―ヘルスケア
/病院/医薬/医療機器業界における活用動向―」
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