良い接客でもクレームが起きる?|個人の力に頼る現場のリスク
こんにちは、接客応援団のアールです。
私は顧客満足を専門とした研修講師を本業とし、様々な業界へお客様対応力の研修を行っています。
春は、新しいスタートの季節です。
サービスの現場でも、異動や退職、新人の配属などにより、ベテランからフレッシュなメンバーへと入れ替わる時期でもあります。
こうしたタイミングで、現場のサービスレベルが一気に落ちてしまうことがあります。
その背景には、お客様対応のスキルや気配りが、一部の人にだけ偏っている「属人化」が潜んでいる場合があります。
今日は、属人化が接客にどのような影響を与えるのかについて、クレーム事例をもとに振り返ります。
良かれと思った接客が、別のクレームを生むことがある
以前、ホテルの朝食会場で起きたクレームです。
その現場では、テーブルごとに担当者が決まっているオペレーションでした。
その中に、とても積極的に接客をするスタッフのAさんがいました。
Aさんは、お客様アンケートでも名指しされるほど満足度の高いスタッフです。
いつもお客様のお皿の進み具合を見ながら、細部にわたり気配りをされていました。
「お味はいかがですか?」
「軽くおかわりをお持ちしましょうか?」
「温かいお茶にお入れ替えしましょうか?」
ところが、あるときAさんに関係するクレームが入りました。
そのクレームは、Aさんが悪いわけでも、Aさんが担当していたテーブルのお客様からではありませんでした。
別のテーブルのお客様からのご指摘だったのです。
「隣のテーブルでは、おかわりまで聞いてくれて、あんなに丁寧に接客しているのに、自分たちにはそこまでしてくれなかった」
このクレームの正体
このケースは、クレームをおっしゃったお客様のテーブル担当者のサービスに不備があったというよりも、隣のテーブルとの比較によって生まれた不満でした。
人は、「得をしたか」よりも「損をしていないか」に強く反応すると言われています。
さらに、他者との比較の中で「不公平だ」と感じた瞬間、その不満は一気に大きくなります。
つまり、サービスそのものに大きな問題がなくても、
「隣のテーブルにはあったのに、自分にはなかった」という“差”が、
クレームにつながってしまったのです。
現場が陥りやすい“ズレ”
このようなケースがあると、「余計なことはしない方がいい」という方向に現場が傾くことがあります。
しかしそれでは、せっかくの気配りやホスピタリティまで失われ、接客は一気に消極的なものになってしまいます。
現場にとっては“余計なこと”に見える対応も、顧客満足の視点では、プラスアルファとして満足を生み出す重要な要素です。
だからこそ必要なのは、クレームが起きないようにというリスク回避の視点ではなく、個人の強みを“組織の力”に変えていく視点です。
「属人化」は組織を弱くする
時折、上層部と話していると、「最近の人は声が小さい」「今回の新人は笑顔が少ない」など、個々人の資質やタレント性だけで接客を語られることがあります。
しかし、特定の「できる人」のノウハウに依存し、それを組織の共通言語(仕組み)にできていない状態こそが、今回のような「サービスのムラ」やクレームを生む本当の原因です。
そして、個々人の資質やタレント性に頼る状態が続く組織では、
力のあるスタッフほど「もっと良い接客ができる環境で働きたい」と感じやすく、結果として離職につながりやすいです。
素晴らしい資質を持つ人を活かすためにも、組織を強くするためにも、
その個人の力を「あの人だからできること」で終わらせず、組織全体の「再現できるノウハウ」へと成長させることが重要ですね。
スタートの春だからこそ、個人の頑張りを組織の力に変えていくタイミングかもしれません。
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