業務改善、やればやるほど仕事が増える。「効率化が得意な人」ほど社畜になる会社の仕組みと、その抜け出し方(模索中)。
「じゃ、それ全部よろしくね」
業務改善を提案した打ち合わせで、この一言をもらったことはありませんか。
私はあります。
私は20代の事務職です。この仕事は4年目になります。
会社にIT担当や社内SEのような専門部署はなく、私自身、ITの専門教育を受けたこともありません。ただの「ちょっとPCに詳しい事務の人」です。
そんな私は、定例業務や非効率な作業がとにかく苦手でした。毎月同じ作業を、毎月同じように手でやる。
それが嫌で嫌で、「これ、効率化しましょう」「AI入れましょう」と自分から言ってしまったんです。
その結果、どうなったか。
業務改善、全部私に来ました。 業務改善以外のAI活用の相談も、全部私に来ました。 なぜか、AIを使った新規プロジェクトまで私に来ました。
そのくせ、言い出しっぺの動機だったはずの定例業務は、いまだに自動化しきれずに残っています。
残業、増えるやんけ。自分のバカ。
……という話を、今日は書きます。
ただ、先にひとつだけ言わせてください。
もしあなたが同じ状況にいるなら、それはあなたの頑張り方が悪いわけではありません。
中小企業には「効率化が得意な人ほど損をする構造」が、ちゃんとあります。私はそれを知らずに突っ込んだだけでした。
この記事で書くのは、この4つです。
言い出しっぺの私に、実際に起きたこと
なぜそうなるのか。会社側の3つの構造
社畜にならないための、4つの防衛ライン
この経験を経て考え始めた、これからのキャリアの話
言い出しっぺの末路(実録)
時系列で書くと、こうなります。
まず、定例業務を効率化したくて、業務改善を提案しました。ここまでは良かった。
返ってきたのは「じゃ、よろしくね」。
辞令はありません。手当もありません。でも次の日から、私はこの会社の「ITに詳しい人」になっていました。
そこからは早かったです。
誰かがAIの話題を見かけると、私のところに来ます。「これうちでも使える?」。新しいツールの話が出ると、私のところに来ます。
「ちょっと調べといて」。そして気づいたら、AIを使った新規プロジェクトの担当になっていました。
え、私、事務の効率化がしたかっただけなんだけど。
極めつけは予算の話です。
「お金はかけずにね。AIって、そんなに高くないんでしょ?」
ふぁ? 月3,000円のチャッピーだけで何をしろと?
実際の負担を書きます。
会社が出してくれるお金:月3,000円(ChatGPT課金分)
私が自腹で払っているお金:月30,000円以上(AIツール複数+書籍や教材の勉強代)
10倍以上です。会社のための勉強なのに、投資しているのは私。
それでも社内では頼られます。「助かるよ」「さすがだね」とは言われます。でも、うちは年に1度しか評価のタイミングがない、よくある中小企業です。ガンガン働いてガンガン稼ごう、という社風でもありません。
頼られる量だけが増えて、報酬は変わらない。
なんということでしょう!
効率厨は、やがて社畜へと変貌する。
私のことです。
なぜそうなるのか。中小企業の「3つの構造」
感情的になりましたが、ここからは冷静に、なぜこうなるのかを整理します。調べてみたら、これは私個人の不運ではなく、日本の中小企業に共通する構造でした。
①「詳しい人」に全部集まる構造
ノークリサーチの2025年の調査では、中堅・中小企業の24.5%が「ひとり情シス」。つまりIT担当が実質1人です。この割合は2年前より増えています。さらに「ひとり情シス」と「ゼロ情シス(担当者なし)」を合わせると約6割という調査もあります。
ゼロ情シスの会社で誰かが効率化を言い出すと、何が起きるか。その人が「ひとり情シス」になります。 辞令なしで。専門部署がないので、仕事の受け皿が「一番詳しい人」しかないんです。
②業務改善は評価されにくい構造
業務改善の成果は「何も起きないこと」です。トラブルが起きない。残業が発生しない。ミスが出ない。
……見えないんですよ、これ。
売上を上げた人は数字で語れます。でも「削減した3時間」は、放っておくと誰の目にも見えません。年に一度の評価面談まで覚えていてもらえる可能性は、限りなく低い。
しかも会社側も、悪気があるわけではないんです。2025年版の中小企業白書でも、中小企業のDXの課題は「費用の負担が大きい」「推進する人材が足りない」が上位。
東京商工会議所の調査では「旗振り役が務まるような人材がいない」が33.8%でトップでした。
つまり、旗を振れる人は希少なんです。希少なのに、社内にその希少さへ値段をつける仕組みがない。だから「頼られるだけの人」が生まれます。
③「AIは安い」という誤解の構造
月3,000円でDXができるなら、日本中の会社がとっくにやっています。
ツール代は氷山の一角です。本体は、使い方を学ぶ時間、業務に合わせて設計する手間、失敗してやり直す試行錯誤。
ここに一番コストがかかるのに、見積もりには一円も乗りません。
そして専門部署がない会社では、その見えないコストを払うのは担当者の自腹と定時後の時間です。
社畜になったと気づいた夜
自分が社畜になったとはっきり気づいたのは、会社のPCを家に持ち帰った夜です。
定時後、自宅の机で業務改善の続きをやっていました。それが終わったら、今度は自腹で買った教材でAIの勉強です。
会社が出しているのは月3,000円。私は月30,000円と、平日の夜を差し出している。
どこからどう見ても社畜です。
でも、その夜いちばん動揺したのは、そこではありません。
それが、全然嫌じゃなかったことです。
働くこと自体は、嫌いじゃない。効率化は楽しい。手作業が消える瞬間は、はっきり気持ちいい。月3時間かかっていた勤怠締めが10分で終わったときは、ガッツポーズしました(そのときの話はこの記事に書きました)。
嫌々やらされているなら、話は簡単なんです。やめればいい。
でも「好きでやっている」が一番危ない。好きだから、報われなくても続けてしまう。続けてしまうから、会社はコストゼロでそれを使い続けられる。「好き」を搾取される形が、社畜の完成形なんだと、その夜気づきました。
ただ、しばらくして、もうひとつのことにも気づきました。
これ、裏返せば資産なんですよね。
事務職なのに、業務の自動化を「好きで」やれる。勉強を苦痛と思わない。実際に手が動く。——社内SE・情シスの平均年収は、転職サービスの調査で約614万円。全職種の平均年収478万円より、130万円以上高い水準です。
私が「事務のついで」に無償でやっているこの仕事、市場ではその値段がついています。
問題はスキルじゃない。スキルに値段がつく場所に、自分がいないことでした。
社畜にならないための、4つの防衛ライン
その夜から、過去の自分に言いたいことを4つに整理して、実際にやっています。
①削減時間を記録する。証拠を残す
改善するたびに「何時間→何分になったか」を一行メモするだけです。数字にした瞬間、愚痴は実績に変わります。
評価面談で「今年は合計◯時間削減しました。時給換算で◯円です」と言えるかどうかは、この一行メモの積み重ねで決まります。
②タダで引き受けない。値札をつける
新しい仕事を振られたら、断らなくていいので、セットで条件を出します。「やります。ついては、ツール代の予算をください」「やります。ついては、この定例業務を先に自動化させてください」。
言い出しっぺが損をするのは、無条件で引き受けるからです。引き受け方に値札をつけるだけで、構造は少し変わります。
③「私しかできない」を作らない
頼られると嬉しくて、つい全部自分で抱えます。それが一番の罠です。属人化した仕事は、あなたを会社に縛る鎖になります。
手順はAIにマニュアル化させて、誰でも触れる状態にしておく。抱え込まないことが、自分を守ります。
④スキルを社外でも価値に変える
「夜」の章で書いたとおり、このスキルには市場で値段がついています。社内の評価制度は一社員には変えられません。
でも、スキルを持ち出せる場所は自分で作れます。
私が実際に何をしているかは、最後の章で書きます。
これからのキャリアの話
最後に、正直なことを書きます。
転職は、視野に入れています。
このnoteも、実はその活動の一環です。社内では値段がつかないスキルに、社外では値段がつくのか。
それを確かめる場所として書き始めました。会社の評価制度は一社員には変えられないけれど、自分がどの市場に立つかは選べるからです。
ただし、今すぐ辞めるつもりはありません。
次の評価までは、この会社で全力でやると決めています。
一行メモで積み上げた削減時間の記録を持って、評価の場に出る。会社がそれにどう値段をつけるのか、この目で確かめる。
報われたら、それはそれで嬉しい。この会社で続ける理由になります。
報われなかったら——そのときは、積極的に動きます。
幸い、その記録はそのまま職務経歴書に書ける内容なので。
効率厨は、やがて社畜へと変貌する。
でも、社畜のまま終わるかどうかは、会社ではなく自分が決められます。私は次の一歩の準備を、もう始めています。この記事も、そのひとつです。
まとめ
専門部署のない会社で効率化を言い出すと、「ITに詳しい人」枠に全部集まってくる。中堅・中小の約6割がひとり情シス・ゼロ情シスという、構造の問題
業務改善の成果は「何も起きないこと」。記録しないと、評価には乗らない
会社負担 月3,000円、自己負担 月30,000円。見えないコストは言い出しっぺに乗る
対策は4つ。記録する・値札をつける・抱え込まない・社外でも価値になる形にする
「好き」を搾取されるのが社畜の完成形。でも「好き」は、場所を変えれば資産になる
効率厨が社畜のまま終わるかどうかは、会社ではなく自分が決める
このnoteについて
月3時間かかっていた勤怠締めを、10分にする。——そういうAI活用を、実際にやった手順ごと公開しています。
専門部署がないのに、気づいたら「ITに詳しい人」にされている
事務職だけど、AIをちゃんと仕事に使えるようになりたい
効率化は好き。でも、ちゃんと報われたい
そんな中小企業の事務職仲間に向けて書いています。資料作成、日報、マニュアル作り——ぜんぶ現場で本当にやった話です。
フォローしてもらえると、社畜がすこし報われます🔥
自己紹介はこちら。
出典
ノークリサーチ「中堅・中小企業における『ひとり情シス』の実態調査」(2025年5月調査)|紹介記事:IT Leaders
https://it.impress.co.jp/articles/-/28482デル・テクノロジーズ調べ(2022年、回答2,337社)|紹介記事:TechTargetジャパン
https://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/2204/22/news14.html中小企業庁「2025年版 中小企業白書」第5節 デジタル化・DX
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/chusho/b1_1_5.html東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」(2023年7月公表)|紹介記事:J-Net21
https://j-net21.smrj.go.jp/news/hgc8pd000000veyt.htmlGeekly Media「社内SE(情シス)の年収」(2025年6月〜2026年5月の転職実績データ)
https://www.geekly.co.jp/column/cat-position/income-of-inhouse-se/

