日本の子ども・若者の幸福度と自己肯定感~データで見る現状と課題~
近年、日本の子ども・若者を取り巻く問題はより複雑になり、多様化しています。今回は、幸福度や自己肯定感などに注目し、データから日本の子ども・若者の現状と課題について考えていきます。
日本の子どもは身体的には健康だが精神的幸福度が低い
日本の子どもの精神的幸福度は38か国中37位に
近年、子どもの幸福度(ウェルビーイング)への関心が世界的に高まっています。日本の子ども・若者の幸福度は他国と比較するとどうでしょうか。
ユニセフが発表した「レポ―トカード16」(2020年度)では、子どもの幸福度を、精神的幸福度、身体的健康、スキルの3つの側面から考え、それぞれ2つの指標を使って分析しています。精神的幸福度は生活満足度・自殺率を指標とし、身体的健康は子どもの死亡率・肥満率を指標としています。スキルについては、学力・社会的スキルの側面から分析しています。
同調査によると、日本の子どもの幸福度は38カ国(※)中20位でした。しかも、分野ごとの内訳をみると、身体的健康は1位でありながら、精神的幸福度は最下位に近い37位という結果であることが分かりました。ここから、日本の子どもの精神的幸福度が国際的に見ると高くはないということが分かります。
日本では、「生活に満足している」と答えた子どもの割合が他国に比べ低いのに加え、自殺率が平均よりも高く、その結果、精神的幸福度が低くなりました。
※経済協力開発機構(OECD)または欧州連合(EU)に加盟する国々を対象

日本の中でも子どもの精神的幸福度には差がある?
同調査の中で、子どもの貧困を長年研究してきた阿部 彩 氏(東京都立大学 人文社会学部教授 兼 子ども・若者貧困研究センター長)は、日本の中でも家庭の経済状況には大きな格差があり、家庭の経済状況が子どもの精神的幸福度に大きな影響を与えていると指摘しています。
「子供の生活実態調査」(2016年、東京都)によると、「毎日の生活が楽しい」「孤独を感じることはない」などの精神的幸福度を測る質問に対して、経済的に困窮している子どもの方が否定的な回答をした割合が多く、家庭の経済状況によって精神的幸福度には差があることが分かりました。
子どもとその保護者が幸福になる土台づくりを
阿部氏は、子どもの幸福度に大きな影響を与える要素として、「レポートカード16」内での「政策」と「社会状況」の2点に着目しています。
日本の「政策」において、「母親・父親に認められる育児休業の週数合計」で日本は上位ですが、実際に取得されている育児休暇は多いとはいえず、男性の育児休業取得率も依然として低く、男女格差がまだまだ大きい現状があります。
日本の「社会状況」では、失業率や殺人による死亡率が低い一方で、低賃金の問題が深刻であり、自殺率がとても高い現状があります。そして、「困った時に頼れる人がいる」と答えた大人の割合は他国と比べて低い結果となりました。
ここから、日本の保護者は、仕事と育児を両立しながら生活を支えていくことに難しさを感じており、困った時に頼れる人が少なく孤立しやすい状況にあることが分かります。そして、それは子どもの生活の質や幸福度にも大きな影響を与えています。
子ども・保護者ともに困った時に頼ることができ、生活に満足できるようなサービスの整備など、国にはその土台をつくっていくことが求められています。
日本の子ども・若者の自己肯定感の低さ
自己肯定感とは?
近年、話題に上がることの多い自己肯定感。そもそも自己肯定感が高いとはどのような状態なのでしょうか。
自己肯定感が高い人は、自分を「かけがえのない存在」として自身で認めることができている状態にあります。自分の長所・短所を受け入れ、他者とかかわり、そのかかわりを通して自身を価値のある存在だと受け入れられている状態です。(自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓ひらく子供を育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上(第十次提言)(2017年、文部科学省))
さらに、自分自身に加えて他者を尊重できることも自己肯定感が高い状態とされています。
日本の子ども・若者は他国と比べて自己肯定感が低い
日本の子ども・若者の自己肯定感は他国と比較するとどうでしょうか。
我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査(令和5年度、こども家庭庁) によると、「今の自分が好きだ」という問いに対して、「そう思う」と答えた日本の子ども・若者の割合は17.5%で、アメリカ・ドイツ・フランス・スウェーデンと比べて最も低い結果となりました。他にも「自分自身に満足している」「自分には長所があると感じている」という問いに対して、「そう思う」と答えた割合も他国と比べて最も低い結果となり、ここから日本の子ども・若者は他国に比べて自己肯定感が高くないことが分かります。
同調査によると、全体的に自己肯定感には「長所」「主張性」「挑戦心」が関連していて、これらが高いほど自己肯定感が高い傾向にあるといいます。また、日本においては、「他者にとって自分が役に立つ存在かどうか」も、子ども・若者の自己肯定感に大きく関連していることが特徴的でした。
さらに、子どもの自己肯定感に影響を与える要素として「誰」から「どんなサポート」を受けたか、また受けなかったかという点があることが分かっています。(子どもの自己肯定感に及ぼす影響要因に関する実証研究 : 京都子ども調査をもとに(2018年、同志社大学))子ども・若者の自己肯定感向上には、周りにいる大人のかかわり方が重要であると言えるでしょう。

日本の若者は将来への希望が薄い
18歳意識調査「第62回 –国や社会に対する意識(6カ国調査)–」報告書(日本財団)によると、 アメリカ・イギリス・中国・韓国・インドといった6か国の若者と比べて、日本の若者は将来への希望を持てていない人の割合が多いことが分かりました。
「将来の夢を持っている」と答えた日本の若者の割合は60.1%と、アメリカ(84.7%)、中国(88.2%)などに比べ低くなっています。
また、「日本の若者はなぜ希望を持てないのか:日本と主要6ヵ国の国際比較」(鈴木賢志 著、2015年11月、草思社)によると、若者の経済状況と将来への希望には関連性があるとされています。
同調査によると、自身の経済状況に対して不安を抱えている若者の方が、経済的状況が安定している若者に比べて将来への希望を持てていない傾向があることが分かりました。
日本では、自身の経済状況に対して不安を抱えている若者の割合は、7か国(アメリカ、イギリス、スウェーデン、フランス、ドイツ、韓国、日本)中2番目に高い結果となり、他国と比べて経済的な不安を抱えている若者の割合が多いことが分かります。
さらに、「将来、自国が経済的に発展していくと思うか」に対する認識も、将来への希望に影響している可能性が示されており、「国の経済状況がよくない」という認識が、将来に希望を持つ若者を少なくしている可能性があります。

「自分の行動では社会は変わらない」と感じている日本の若者
18歳意識調査「第62回 –国や社会に対する意識(6カ国調査)–」報告書(日本財団)によると、「国や社会に役立つことをしたいと思う」「自分は責任がある社会の一員だと思う」などと答えた日本の若者の割合は、6か国中最下位となりました。
また、日本では、「自分は大人だと思う」「自分の行動で、国や社会を変えられると思う」と回答した若者の割合がアメリカ(65.5%)や中国(83.7%)に比べて45.8%と5割を切っているのが特徴的でした。
ここから、日本の若者は「自分の行動では社会は変わらない」と無力感を抱いていることがうかがえます。これは、日本の若者が幸福度や自己肯定感が高くないことにも関係性があるのではないでしょうか。
さらに、同調査での「自分の国の将来についてどう思いますか」という質問に対し、「どうなるか分からない」と答えた日本の若者の割合は31.5%と、他国に比べて多いことが分かりました。政治や選挙、社会問題についても、「関心がある(56.5%)」「自分の考えを持っている(53.5%)」「積極的に情報を集めている(47.2%)」の割合が他国と比べて最も低い結果となりました。
ここから、日本の若者は政治や社会について積極的に情報を集めて理解したり、実際に関わったりする機会が少ないことが分かります。

課題解決につながるヒント~子どものウェルビーイング向上に向けて~
以上のように、日本の子ども・若者は幸福度や自己肯定感が他国と比べると低く、将来への希望の薄さや「自分の行動では社会は変わらない」という無力感を抱いていることが分かりました。それでは、こうした課題を解決につなげるにはどうすればいいのでしょうか?
そのヒントとして子どもたちの「ウェルビーイング」を高めていくことがあります。特に「自分がどう感じているか」に指標をおく主観的ウェルビーイングが昨今では注目されています。以下の記事では、子どものウェルビーイングを高めていくために、まずは大人が「子どもの声に耳を傾けること」が重要だと指摘しています。
▼子どもの育ちに必要な放課後の時間とは?〜ウェルビーイングってなんだろう〜
また、以下の記事では、居場所の数が多いほどウェルビーイングが高まる傾向にあることや、ウェルビーイングにつながる居場所とはどのような場所なのかについてヒントを提示しています。ウェルビーイングにつながる居場所の特徴として、①「ありのまま」の自分でいられること、②自分で選んで決められる「自己決定」、③「人への貢献」、④「伴走者」の存在という4つキーワードが重要となってきます。
▼子どものウェルビーイングにつながる居場所とは?
ウェルビーイングにつながる居場所の特徴の一つとして、「自分で選んで決められること」があげられました。子どもたちがやりたいと思ったことを実現することで、子どもたちは「自分でやり遂げることができた!」と感じ、自己肯定感の向上につながることがあります。こうした環境を整えていくためには、大人のサポートが重要となります。以下の記事は、あるアフタースクールで子どもたちの「やりたい」という声に大人が寄り添い、子どもたちが考えた企画が実現するよう大人がサポートした事例です。
▼子どもの声に寄り添いカタチにするスタッフにインタビュー!~子どもが企画運営する「こどもキカク」とは?~
このように、子どもたちの声を聴き、「やりたい」を実現できる環境を、周りの大人が対話を通してつくっていくことが、子どもたちのウェルビーイング向上につながるのではないでしょうか。このような仕組み・環境について、社会全体で考えていきたいです。
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文:コミュニケーションデザインチーム/伊藤
